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編集長展望

Vol.37 今年の人気記事は「水素」「EV」「核融合」2023年大総括!エネフロ編集部座談会

写真)水素貯蔵タンクとトレーラーのイメージ

写真)水素貯蔵タンクとトレーラーのイメージ
出典)Scharfsinn86/GettyImages

まとめ
  • 今年よく読まれた記事は、「水素」、「EV」、「核融合」など関連。
  • Z世代の編集部インターンは、「売らない店」や「昆虫食」に興味。
  • 2024年は、生物多様性や、再生可能エネルギーを無駄なく使う取り組みなどを紹介したい。

早いもので今年も1年を振り返る時が来た。2023 年は新型コロナウイルス感染症の位置づけが5月に5類に移行され、2020年以降続いてきた「コロナ禍」がひとまず終わりを迎えた年でもある。

飲食店をはじめ、ありとあらゆる場所に設置されていたアクリル板は姿を消し、マスクの着用義務もなくなった。(花粉症の人はいまだマスクを手放せないようだが・・・)

そして国際情勢に目を向けると、ウクライナ紛争が2年目に突入し、膠着状態の中、10月にはパレスチナで武装組織ハマスが突如、イスラエルを攻撃、大規模な武力紛争が始まった。

多くの人々がこの3年間で、「あたりまえ」の生活は決してあたりまえではなく、いとも簡単に崩れさってしまうことを痛感したのではないだろうか。

そうした中で、エネルギーや環境に多くの人の意識が向かっていると感じる。その傾向はエネルギーフロントラインの記事のラインアップにも現れている。振り返ってみると、脱炭素に関連するトピックが明らかに多い。それらは全く新しいテクノロジーだったり、EV(電気自動車)のように既存の工業製品をアップデートするものだったりするが、根幹は地球温暖化防止=脱炭素につながっている。

今年も年末恒例、編集部主催の大座談会を実施した。今回は編集部のインターン学生が7人も参加した。

【座談会参加者】

安倍宏行(エネルギーフロントライン編集長)

エネフロ編集部:
マユミ
ケンタ
ヒデマル

インターン:
ミズキ(大学4年生)
サキ(大学3年生)
ミキ(大学3年生)
イロハ(大学3年生)
ユカ(大学2年生)
ルナ(大学2年生)
タマキ(大学2年生)

座談会に入る前に、まずは2023年、良く読まれた記事のランキングTOP10を見てみよう。(2023年1月~11月)

これを見ると、いくつかのキーワードが浮かび上がる。「水素」、「EV」、「核融合」などだ。特に「水素」は最近、新聞などで目にすることが増えた。実は日本は世界に先駆けて「水素立国」を目指し、2017年に「水素基本戦略(令和5年版)」を策定したが、当時、他国はあまり関心がないようだった。しかしEUの執行機関である欧州委員会は2020年7月に「水素戦略」を発表。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降は、ロシア産天然ガスへの依存から脱却を目指し、グリーン水素の域内生産を拡大しようとしている。アメリカも今年6月に、国家クリーン水素戦略を発表するなど、世界の水素への取り組みは様変わりしている。

また「EV」の話題は連日事欠かない。EV専業メーカーの米テスラを中国のBYDが猛追しているほか、日本の各メーカーも今後EVを続々投入する計画で、EVの存在感は日増しに高まっている。

写真)TOKYO MOBILITY SHOW BYD展示コーナー 多くの観客が訪れた。 東京都・江東区 2023年10月
写真)TOKYO MOBILITY SHOW BYD展示コーナー 多くの観客が訪れた。 東京都・江東区 2023年10月

出典)Tomohiro Ohsumi/Getty Images

「核融合」も、遠い未来の話ではなくなった。原子炉に変わるものとして期待される核融合炉の開発には、日本のベンチャー企業も関わっており、将来が楽しみな分野である。

編集サイドの感想

安倍編集長記事のレイアウトから掲載まで担当してくれている制作会社のヒデマルさんに聞いてみたいのですが、ヒデマルさんは今年異動で編集部に来たのですね?エネフロの記事制作を担当して、どんな感想を抱きましたか?

ヒデマル僕は4月からエネフロに携わるようになったのですが、個人的に読んで面白かったのは、「核融合に新たな技術 量子水素エネルギーとは?」「「コーヒーかす」できのこを育てる オランダの循環型経済」(4位)ですね。実家がガソリンスタンドを経営しているので、「EV走行中無線給電で世界記録 連続2,000km走破」(5位)は人ごとではない記事でした。あとは、「「ChatGPTが温暖化を加速させる」です。Chat GPTが電気を大量に消費することは意外でした。

写真)コーヒーかすを菌床にしてヒラタケを養殖している様子 オランダ 2023年7月
写真)コーヒーかすを菌床にしてヒラタケを養殖している様子 オランダ 2023年7月

© エネフロ編集部

ケンタ自分が埼玉県さいたま市出身ということもあり、たまたま「“幸福度ランキング”上位のさいたま市『スマートシティさいたまモデル』とは」という記事が目にとまり読みました。後は、「地熱発電に新技術「クローズドループ」とは?エバー・ジャパン取締役ジェームズ・ヘザリントン氏」(10位)や「「コーヒーかす」できのこを育てる オランダの循環型経済」(4位)は、タイトルだけで「何だろう?」と興味をかき立てられる記事だったと思います。

写真)浦和美園スマートホーム・コミュニティ。電線がないすっきりした街並み。 
2023年1月 埼玉県さいたま市
写真)浦和美園スマートホーム・コミュニティ。電線がないすっきりした街並み。 2023年1月 埼玉県さいたま市

© エネフロ編集部

マユミ今年の人気記事を見るとエネフロ読者は自動車関連に関心があるのだと分かりました。「ソニーホンダ新EV、全貌を現す」(2位)、「EV走行中無線給電で世界記録 連続2,000km走破」(5位)、「新東名に自動運転レーン誕生」(6位)、「EUがガソリン車容認 e-fuelとは」(7位)などがランキング上位に入っていますね。

安倍編集長車に乗らない人が増えてきているというものの、車に興味がある人は結構いるということですね。

写真)ソニー・ホンダモビリティ株式会社 が開発中のEV「AFFILA」のプロトタイプ Japan Mobility Show2023にて 2023年10月 東京都・江東区
写真)ソニー・ホンダモビリティ株式会社 が開発中のEV「AFFILA」のプロトタイプ Japan Mobility Show2023にて 2023年10月 東京都・江東区

© エネフロ編集部

マユミ個人的には、自然由来の高吸収ポリマーを開発したEFポリマー社(「農業に革命、干ばつ対策にも EFポリマーの実力」)や、牛の尿を消臭剤に変えた環境大善(「牛の尿が食糧問題解決の鍵になる」)、藻のちとせグループ(「バイオベンチャーのちとせグループ、世界最大規模の藻類生産設備をマレーシアに建設」)、石けん系消火剤開発のシャボン玉石けん(「世界初、環境にやさしい日本の「石けん系消火剤」の威力」)、外来植物からクラフトジンをつくるサンウエスパ(「バイオエタノールとクラフトジンで外来植物からアジアを救う」)など、小規模な組織でも地球環境の為の活動をしているところがいくつもあり、こうした取り組みをもっと多くの人に知ってほしいと思います。

安倍編集長エネフロの読者のみなさんは、環境に対する関心が高いですから、生物多様性の保全がなぜ大切なのかなど、基礎からわかる記事を制作したいと思います。

Z世代の感想

安倍編集長さて、ここからは編集部インターンの学生のみなさんに話を聞きたいと思います。皆さんはエネフロ関連のリサーチをしたり、時には取材に同行したりして、記事制作のお手伝いをしてくれていますが、今年印象に残った記事にはどんなものがありますか?

タマキ私が最も興味を持ったのは、「昆虫食は人類を救うのか?」です。どうしても昆虫食には「ゲテモノ」のイメージが先行していたのですが、この記事には給食などの身近な話題に昆虫食がからめて取り上げられていて、抵抗感が減りました。

イロハ昆虫食は大学の授業でも最近出てきます。こうした記事をきっかけに徐々に抵抗感を無くしていけば、社会への浸透度も上がるのではないかと思いました。

ユカ身近な話題つながりでいくと、「ChatGPTが温暖化を加速させる」がすごく印象的でした。あまり聞かない単語が並んでいて気になって読んでみたのですが衝撃的でした。AIと自然破壊はまったく別の問題だと思っていたら、実は繋がっていたのだなと。

サキ授業でChatGPTを使っている子、すごく多いですよね。ペットボトルとかビニール袋とかはまだ環境につながるのがわかるのですが、AIが環境に影響を与えると知ってすごくびっくりしました。

ルナAI関連の記事だと、私は「「売らない店」ブーム、その先は?」が印象的でした。

ミズキ・イロハ私も!

ルナ「売らない店?」と最初は驚きましたが、ターゲットを若い世代にフォーカスしていることや、データの活用の仕方にとても惹かれました。個人的に店員さんにセールストークをされることがあまり得意ではなくて(笑)。体験重視、というのがすごく面白いと思いました。

写真)「売らない店」b8ta Tokyo – Shibuya 2023年3月 東京都・渋谷区
写真)「売らない店」b8ta Tokyo – Shibuya 2023年3月 東京都・渋谷区

安倍編集長みなさんは今後、どんな話題を取り上げてもらいたいですか?

ユカ私が気になっているのはスマートシティ。「“幸福度ランキング”上位のさいたま市『スマートシティさいたまモデル』とは」、でも取り上げられていましたが、全国にこうした事例がなぜもっと増えないのかとか、どうして自治体によって幸福度に差が生じるのかなど、より詳しく調べたいなと思いました。

ミキ私が興味あるのはメタバースの活用です。特にオンライン教育におけるメタバースの活用に興味があります。「期待先行のメタバース市場、その課題とは」でも取り上げられていた、電力消費の課題についても調べたいです。

ミズキ私はサステナブルツーリズムに興味があります。元々旅が好きで、ようやく今年はあちこち行けるようになってすごく嬉しいですが、逆にオーバーツーリズムによる環境への影響が最近気になっていて。事例を取り上げながら取材したいです。

ルナ私は身近なエコ活動をもっと深掘りしたいですね。最近大学にウォーターサーバーが設置されたのが友人同士の間で話題になって、浸透度が上がったように感じました。特に若い世代の動きに注目していきたいです。

安倍編集長みなさんの関心の範囲も広いですね。参考にして、来年度も多くの人に興味を持ってもらえる記事を提供したいと思います。今日はありがとうございました。

2023年もエネルギーフロントラインをお読みいただき、編集部一同、心よりお礼申し上げます。2024年も、エネルギーを巡るさまざまなトピックを取り上げますので、どうかよろしくお願いいたします。

それではみなさま良いお年をお迎えください。

安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
・日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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