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エネルギーと私たちの暮らし

Vol.14 2018年大総括!エネフロ編集部座談会

©エネフロ編集部

まとめ
  • 2018年の取材を振り返る為に編集部で座談会を実施。
  • 街頭インタビューや身近な話題が興味深かったとスタッフ。
  • 来年は親子で話し合うことができるようなテーマも。

2017年4月に創刊した「エネルギーフロントライン」、略して「エネフロ」。創刊2年目に入り、記事は多岐にわたるが、一見とっつきにくいエネルギー関連の情報を分かりやすい形で読者にお届けする、という編集方針は変わらない。多くの皆さんにご愛読して頂いていることに心から感謝したい。

さて、今回は「2018年のエネフロを振り返る」をテーマに、私、編集長の安倍はじめ、編集スタッフ、そしてコンテンツ制作会社スタッフに集まってもらって座談会を開催した。1読者としての忌憚ない意見を聞かせてもらった。

【座談会参加者】

  • 安倍宏行  (エネルギーフロントライン編集長)
  • カエ    (制作会社・ディレクター)
  • ナオコ   (エネフロ編集部)
  • エリコ   (エネフロ編集部)

2018年一番印象に残っている記事は?

安倍:さて今日はエネルギーフロントラインの編集並びに制作に関わっている皆さんに、今年1年の感想を聞きたいと思って集まってもらいました。まず今年印象に残った記事を順番にお聞きしたいと思います。まずカエさんから。カエさんは記事のデザインや掲載までの作業を担当してくれている方です。

カエ:印象に残った記事は、「世代を超えて聞いてみた」シリーズですね。今年2月の「再エネ、必要ですか?」は、2017年11月の「原子力発電は必要ですか?」に続いてシリーズ2回目だったのですが興味深かったです。

安倍:編集部スタッフ総出で都内の繁華街にインタビューに出て街頭インタビューしたんですよね。気をつけたのはインタビューする場所。渋谷あたりだと圧倒的に若者が多くて年代が偏るので40歳以上の人を求めて新橋や有楽町にも行きました。

エネルギーと私たちの暮らし Vol.05 原子力発電は必要ですか?世代を超えて聞いてみた

©エネフロ編集部

再エネについては、日本のエネルギー自給率の低さに驚いた人も多かったですね。また、再エネの普及に対する国民負担については、意見が分かれていたのが印象的でした。

カエ:あとは、社内で「確かに~!」と皆で話し合ったのは、去年の11月の記事「停電に備えよ!台風と電力会社」ですね。停電中の電力会社の復旧作業の話です。停電した時、私たちは待っていたら自然と復旧するだろう、くらいにしか思ってませんでしたが、どうやって復旧させているのか、今まで気にしてこなかったので、記事を読んで納得しました。停電中にこういうことが行われているのか、と社内で結構話題になりました。

そして「発電効率63.08%で「世界最高効率達成」!中部電力西名古屋火力発電所」の記事には結構驚きました。こう言ってはなんですが、火力発電所はどこもみな同じだと思っていたので、発電所によって効率がいいとかあるんだなぁと思いましたね。

写真)西名古屋火力発電所
エネルギーと環境 Vol.05 発電効率63.08%で「世界最高効率達成」!中部電力西名古屋火力発電所

©エネフロ編集部

安倍:社内でエネフロのコンテンツ制作に関わってない人でも記事を読んでるのですか?

カエ:読んでますね。自社で更新しているものを社内で回してチェックしてます。エネフロの記事は結構人気高いですよ。今回は編集長が出てるね、とかチャットでコメントが来たりします(笑)。

©エネフロ編集部

安倍:他にはどんな意見がありましたか?

カエ:これは難しかったという声が上った記事が2つありました。1つは「「石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業」大崎クールジェン 環境に優しくエネルギー安全保障上も注目」、もう1つは「原子力発電比率低下でGDP減少」という記事です。あの2つは何人かから難しい、という声がありました。

写真)大崎クールジェン
エネルギーと環境 Vol.05 発電効率63.08%で「世界最高効率達成」!中部電力西名古屋火力発電所

©エネフロ編集部

安倍:確かに一般の読者にはなじみがない話題でしたね。でもどちらも私としてはとても興味深い取材だったんですよ。まず、「大崎クールジェン」ですが、私は数年前から注目していていつか行ってこの目で見てみたい、と思ってたんですね。石炭火力と聞くと、「CO2たくさん出すんじゃないの?」とか、「今はLNG火力の方が主力なんじゃないの?」とか思っている人、多いと思うのですが、大崎クールジェンの発電効率は非常に高いんですね。石炭火力が主流の国はまだかなりありますが、そうした国が注目している技術なのです。そうした技術を海外に輸出することもできますよね。また、石炭というのは石油やLNGより廉価なだけでなく、産出地がばらけていますから、資源がない日本としては石炭火力はエネルギー安全保障上からも必要なのです。

それから、「原子力発電比率低下の影響」ですが、これは確かにタイトルだけ見るとちょっと敬遠したくなるかもしれませんが、実はとても重要な事なのです。世界各国も、もちろん我が国も再エネの大量導入を進めています。そうした中で、日本は2030年の電源構成を、再生可能エネルギー(水力発電を含む)を22~24%、原子力発電を20~22%としていますよね?約10年後どうなっているかはわかりませんが、もし原子力発電の比率が20%を割ったらどうなるか、ということで経済への影響を試算したものなのです。その結果は記事にある通り、GDPが減る。家計にも影響が出る、ということなんです。確かに書いていてちょっと難しいかな、とは思いましたけど (笑)。でも、大切な事でしょう?

さて、我が編集部スタッフのエリコさん、リサーチをしたり取材に行ったり、時には原稿の校正を手伝ってくれたり色々やってくれていますが、どの記事が面白かったですか?

エリコ:実際に編集長と一緒に取材に行った時の記事が印象に残っています。今年の夏に行った、「“水素ホテル”登場「世界初使用済プラスチック由来の水素活用」は、ホテル内の廃プラスチックから作った水素がホテルで使われている電力の30%をまかなっているのですが、ホテル自体も海外にあるようなモダンなデザインで、とても印象に残っています。あとは実際に廃プラスチックから水素を製造してホテルに供給している化学工場にも行き、貴重なものを見学できました。こちらの記事は読者の皆さんにもよく読まれていて、人気のある記事でしたよね。

2020年には羽田空港とホテル側が橋で直結する予定なので、訪日外国人のみなさんに、このホテルに泊まってもらって日本が環境対策に真剣に取り組んでいるということを発信できるといいな、と思い、とても印象に残った記事でした。

写真)水素ホテル
エネルギーと環境 Vol.05 発電効率63.08%で「世界最高効率達成」!中部電力西名古屋火力発電所

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あとは「原子力防災へのたゆまぬ努力 美浜原子力緊急事態支援センター」の記事ですね。私たちの生活に何かあった時、ロボットの活躍があるわけじゃないですか。日々、見えないところでトレーニングをされている方々がいるということが強く心に残りました。

あとは実際に街に出てインタビューをして、一般の人達の生の声を拾うことで、みなさんのエネルギーに対する認知度などを現場で聞けたのはとても印象に残っています。

安倍:ナオコさんは…?

ナオコ:私も、ちょうど1年前、真冬の再エネの街角インタビューはとても印象に残っています。新宿と新橋と渋谷、いたるところであらゆる世代の方に伺ったのですが、生の声を聞くというのは、新聞を読んだりテレビで見ていたりする報道とはだいぶ違いがあるなと感じました。しっかりした意見を持った人の方が多かったと思います。

©エネフロ編集部

写真)街頭インタビュー
写真)街頭インタビュー

©エネフロ編集部

ナオコ:あと、年配の方で、電気というのはあらゆる人に平等に必要なものなので、生活保護を受けている方などもいるし、むやみやたらに値上がりしていくのは日本のために良くないんじゃないかという意見の方もいて印象に残っています。なかなかそういう声を聞く機会がないので、周りの同世代にも聞いてみましたが、やはりエネルギーに関する会話をしない、簡単に知ることができるサイトがない、という人が圧倒的に多いので、こういうサイトがあるよと教えてあげました(笑)。

他には、エリコさんと「エアコンクリーニングの盲点教えます!」という記事を一緒にやったのが印象に残っていますね。

安倍:室外機を実際にクリーニングしてみたんだよね。

ナオコ:あの後エアコンの室外機が目につくようになってしまって、街のあらゆる所の室外機をチェックしています(笑)。

安倍:表に出て街角インタビューするというのもエネフロの一つの特徴ということですね。来年もまたやってみたいです。

さて、私の番ですが、2018年、いろんな所に取材に行きましたが、やはり感慨深かったのは、東京電力福島第一原子力発電所(以下、福島第一)の取材ですね(「廃炉への道 新たなステージへ 福島第一原子力発電所」)。福島第一の取材はこれで2回目でしたが、水素爆発した3号機の使用済み燃料プールの所まで行けるようになっていたり、防護服を着なくても歩けるグリーンゾーンというところが広がっていたり、廃炉に向けて少しずつですが着実に作業が進んでいることに率直に感銘を受けました。記事タイトルの「新たなステージへ」というのは私の実感を込めたものです。もちろんまだまだ時間はかかりますが、着実に工程を進めていくことが大事なわけで、そうした事実を読者に知ってもらいたい、という気持ちで取材しています。

写真)3号機建屋内燃料プール
「安全」を考える Vol.02 廃炉への道 新たなステージへ 福島第一原子力発電所

©エネフロ編集部

というのも、福島に対する関心が、時が経つにつれ薄くなっているのを肌で感じるからなんですね。エネルギーについて読者の皆さんにお伝えするというサイトの趣旨として、いかに皆さんの関心が薄れていようとも、原子力発電所を含め、時々刻々と変わっていく電力事業者を取り巻く環境の変化を伝えていく責任があるのではないかと思っているのです。これからも現場主義で実際に取材を重ねていきたいですね。

あとはこの秋、電力事業者と関連協力企業や研究機関、大学などによる技術発表会(主催:中部電力株式会社技術開発本部)「テクノフェア2018」や、電力中央研究所が行っている、普通の人にはあまりなじみがないけれども、実は私たちの生活に大きくかかわる研究を集中的に取材しました。

それらの記事が、「台風の影響、こんな所にも 塩が停電を引き起こす?」や「火力最適運転支援システムとバーチャルパワープラント」、「ドローンで森を測る 送電線保守最前線」などです。

さまざまな技術開発を行っている人たちの話を聞くと、もちろん第一義は電気の安定供給なのですが、地球の環境、自然との共生など大きな目標を持って取り組んでいらっしゃるのに、毎回感動を覚えますね。こういう地道な普段なかなか一般の人が知ることがないような研究や技術開発によって、われわれの生活は成り立っているのだな、とつくづく思いました。そういうストーリーをエネフロの読者にこれからも提供していきたいと思います。あ、難しい、と言われないように書かないといけませんね(笑)。

軽めの「ためになるカモ!?」というのもやっていますが、普段我々が常識だと思っているが実はそうではないもの、エアコンの話もそうですが、クールビズの話だとか、紫外線の対策だとか、いろいろ言われているけど本当のところはこうだよ、というちょっとしたミニ知識というか、そういうものを提供したいと思っていて、読者の皆さんも普段の会話の中で話題にしていただけたら嬉しいですね。

今後、編集部として取り上げたい記事

安倍:後、読者の皆さんから、こんなことを知りたい、というのがあってもいいなぁと思いました。Twitterとかでご意見募集などしてみてもいいかもしれませんね。今日参加している皆さんはどうですか?

カエ:「水素」や「再生可能エネルギー」の新聞記事をよく見るので、個人的には「水素」をもう少し素人向けに分かりやすく教えてもらいたいです。

エリコ:うちに小学2年生の息子がいますが、いつも夏休みの時に悩まされるのが自由研究なんです。エネフロの読者というのは40代、50代の男性が多く、お子さんがいらっしゃる方もいると思います。子供と一緒に取り組める電気工作とか、自由研究でヒントになるようなコンテンツがあったらいいですね。静岡の動物園の話などは、子供にとっても、再生可能エネルギーからどのように電気が作られているのか分かるいい例だったと思います。小、中学生くらいが参考にして研究に取り組めるようなコンテンツがあったらいいなぁと、勝手な意見ですが。

ナオコ:静岡のエネルギーパークのことをリサーチしていた時に、エネ庁が全国48都道府県のエネルギーパークについてすごく良い資料をホームページにあげていて、各都道府県の自然の話とか歴史の話とか、子供と一緒に回れるエネルギーに関する遠足コースの紹介がありました。素晴らしいと思って。自分が親だったらこういうのを子供と一緒に回ってみたいなと思いました。

あと、街頭インタビューをした時に、お子様がいらっしゃるお母様から、「子供と一緒に読めるようなエネルギーのコンテンツをあまり読んだことがない気がするので、そういうものがあれば読んでみたい。」と言うご意見がありました。お子様と一緒に学んだり、関われる記事があってもいいのかなと思いました。

安倍:いろんなヒントが出てきましたね。来年度はより読者の皆さんにとって読みやすいものを作って、より多くの人にエネフロの存在を知って頂きたいと思っています。写真にも登場してくれている当サイトのキャラクター「エネフロッグくん」にもますます活躍してもらいましょう。原点に立ち返ってまた新しい気持ちで2019年もいきたいと思っています。

2019年もエネフロをよろしくお願いします!

©エネフロ編集部

安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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