写真)青ヶ島 東京都
出典)Keren Su/GettyImages
- まとめ
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- 海底熱水鉱床から金を採取する技術が開発された。
- 下水の汚泥やリサイクル家電などからも金は回収可能。
- 日本は貴金属などで資源国になりうるポテンシャルを持っている。
金の相場が上昇している。2023年は記録的な上昇となり、ニューヨーク金先物は12月4日に一時1トロイオンス2,152.3ドルと史上初めて2,100ドルを突破した。(1トロイオンスは、約31.1グラム)
俗に「有事の金」といわれるが、ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ紛争による世界経済の先行き不安などが金価格上昇の主な要因と考えられている。また、日米の金利差拡大による円安進行で、円建ての国内金価格も押し上げられている。
出典)田中貴金属
その金。日本はかつて「黄金の国ジパング」と呼ばれたほど金を多く産出していた。有名なのは新潟県の佐渡金山(1601年〜1989年)や、北海道の鴻之舞金山(1915年〜1973年)などが有名だ。どちらも廃坑になった後、しばらく金山は見つからなかったが、現在は、鹿児島県の菱刈鉱山(1985年〜)などが金の採掘をおこなっている。
出典)住友金属鉱山
世界の金の確認埋蔵量は約52,000トン程度(参考:World Gold Council)とされている。すでに採掘した金を再利用しなければ、いずれ金は枯渇する可能性がある。しかし、金はなにも地上だけにあるわけではない。実は海からも金が採れるというのだ。
海底熱水鉱床とは
実は海底には、金やレアメタルを含む熱水が噴き出している「海底熱水鉱床」と呼ばれる場所がある。海底から噴出する熱水に含まれている金属成分が海水で冷却され、沈殿してできたものだ。
東京大学生産技術研究所の研究グループが、2015年に伊豆諸島青ヶ島沖の海底熱水鉱床を発見し、2016年には鉱石中に高濃度の金が含まれていることを報告した。
出典)青ヶ島村役場
その後、国立研究開発法人海洋研究開発機構の野崎達生主任研究員および株式会社IHIの福島康之主任研究員らの研究グループは、原始的な藻の一種である「ラン藻」をシート状に加工した吸着材を開発し、それを用いて熱水中に含まれる金を高効率で回収する実証実験を2021年から進めていた。
2023年6月にそのシートを海底から引き上げたところ、1トンあたり20グラム相当の「金」が吸着していた。金鉱石から採取される金の量と比べてもかなりの高水準であり、この回収方法は世界でも例がないという。
海底から金が採取できると聞くと夢が広がるが、実際は海底熱水鉱床まで船を出し、数百メートルもの海底深くまで機械を使って金を吸着したシートを回収するのは費用がかかりすぎて現実的ではない。今後は陸にある温泉などから同様の方法で金が採取できないか、検討する計画だ。
出典)JAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)
下水の中にも貴金属
一方、より身近な下水の中にも貴金属が含まれている。洗剤などの日用品 や食物に含まれる微量の鉱物資源が下水として排水され、下水汚泥に濃縮されて含有している可能性は高い。実際に海外の文献では、スイス全土の下水処理場 64 箇所に、1 年間で金43キログラム、銀3トン が流入しているとの推計が報告されている。(参考:日本下水道事業団「希少金属回収技術等、下水道資源利活用 (2017 年度~2021年度)報告書」)日本でも横浜市など採算性が見込めそうな自治体の中には、金を含む下水汚泥の売却をしているところもある。
都市鉱山
そして貴金属の回収といえば、有名なのが「都市鉱山」だ。使用済み家電や携帯電話、パソコンなどから金属材料を回収し、再利用することをいう。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のメダルを全国各地から集めたリサイクル金属で作る国民参画型プロジェクト「みんなのメダルプロジェクト」は記憶に新しい。2017年4月から2019年3月までの2年間で、金・銀・銅あわせて約5,000個のメダルに必要な金属量を100%回収した。
国立研究開発法人物質・材料研究機構によると、こうした都市鉱山として我が国に蓄積されている金属資源(地上資源)の量は、鉄12億トン、銅3,800万トン、銀6万トン、金6,800トン、リチウム15万トンなどとなっている。世界全体の埋蔵量に対する比率でみると、鉄1.62%、銅8.06%、銀22.42%、金16.36%、リチウム3.83%となる。金や銀などは、海外の大鉱山に匹敵する大きなポテンシャルを有している。
出典)環境省
循環型社会(経済)という概念がある。限りある地上資源を有効にリサイクルしていこうという考え方だ。以前、「テクノロジーで「ごみ問題」解決!」(2021.05.04)や「『コーヒーかす』できのこを育てる オランダの循環型経済」(2023.08.01)などでも紹介したが、ごみを資源として回収し、無駄なく使うという考え方は海外ではかなり定着している。多くの資源をごみとして燃やしたり、埋めたりしている日本は、もっと参考にすべきであろう。
今回は「金」をテーマにいろいろな取り組みをみてきたが、これを機に、私たちの身の回りの品にはどんな貴金属が隠れているのか、考えてみるのも楽しそうだ。
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