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エネルギーと私たちの暮らし

Vol.07 「再エネ、必要ですか?」世代を超えて聞いてみた

写真)東京・渋谷
©エネフロ取材班

まとめ
  • 東京で「再生可能エネルギー」についてアンケート調査を行った。
  • 結果、「負担が増えても普及させるべき」と答えた人が70%を超えた。
  • 再エネについてさらに議論し、理解を深めていく必要がある。

「再生可能エネルギー」、略して「再エネ」という言葉を聞いたことがない人は少ないだろう。でもその「再エネ」の普及に対して人々はどう考えているのだろうか?取材班は2月上旬、若者の街、東京・渋谷と、サラリーマンや年齢層の高い人が多い、東京の新橋・銀座・有楽町地区と神奈川県横浜市などでアンケート調査を行った。

アンケート実施要領

① 実施日

2018年2月1日、2日、3日、4日(4日間)

② 実施場所 東京都内、神奈川県横浜市

幅広い世代の意見を聞くため、2班に分かれて若者が多い地域と年齢層の高い人が多い地域で取材した。(JR東日本 新宿駅、新橋駅、渋谷駅、横浜駅、東京メトロ 銀座駅周辺)

アンケート概要

1. 聞いた人の数
男性 女性 全体
新宿 32人 35人 67人
渋谷 11人 9人 20人
銀座 7人 10人 17人
新橋 10人 0人 10人
横浜 9人 7人 16人
合計 69人 61人 130人
2. 世代別男女比
男性 女性 全体
10代 12人 9人 21人
20代 14人 14人 28人
30代 12人 5人 17人
40代 15人 11人 26人
50代 6人 11人 17人
60代 6人 6人 12人
70代 4人 4人 8人
80代 0人 1人 1人

アンケート結果

問1 日本のエネルギー自給率は何パーセントだと思いますか?

  • A. 7%
  • B. 27%
  • C. 47%
  • D. 67%

全体の回答結果は以下のグラフの通り。
正解率は全体の45%、約半数近くの方が、正解のA(7%)と回答した。(注1

エネルギー自給率は低いと思うと答えた上で、A(7%)とB(17%)で迷った人が多かった。正解を発表すると、「そんなに低いのですね」、「そこまで低いとは思いませんでした」と、日本のエネルギー自給率の低さに驚きを隠せない様子の方もいた。男女比で顕著な差は見られなかった。

全体の割合
全体の割合

問2 日本の電源構成の内、再生可能エネルギーの比率は?(含水力)
(事前に電源構成とは、電気を作るために使用するエネルギー源や発電の仕組み(火力・原子力・再生エネなど)の組み合わせであることを説明した上で、再エネの比率を聞いた。)

  • A. 5%
  • B. 15%
  • C. 50%
  • D. 70%

全体の回答結果は以下のグラフの通り。
正解率は全体の28%で、30代~40代ビジネスマンの正解率が高い印象を受けた。まだまだ再エネの比率は低いと考えている方が大多数で、正解を発表すると「15%もあるんですね」「意外です、もっと低いと思っていました」と答える方が多かった。

全体の割合
全体の割合

質問3 再生可能エネルギーについてどちらの考えをお持ちですか?
(事前に再エネ賦課金の仕組みについて説明した上で、以下の中から自分の考えに合うものを選択してもらった。)(注2

  • A. 負担が増えても普及させるべき
  • B. 負担が増えるなら普及させるべきでない
  • C. どちらでもない

の3択とした。各回答を選んだ理由も極力ヒアリングした。

2. 世代別男女比
A. 負担が増えても
普及させるべき
B. 負担が増えるくらいなら
普及させるべきではない
C. どちらでもない 合計
10代 14人 3人 4人 21人
20代 23人 1人 4人 28人
30代 10人 0人 7人 17人
40代 16人 2人 8人 26人
50代 14人 1人 2人 17人
60代 7人 3人 2人 12人
70代 5人 1人 2人 8人
80代 1人 0人 0人 1人
合計 90人(69.2%) 11人(8.5%) 29人(22.3%) 130人

まず全体の分析を見てみよう。

Aの「負担が増えても普及させるべき」は全体の約7割、69%を占めた。B「負担が増えるくらいなら普及させるべきではない」は9%、C「どちらでもない」は22%だった。

全体の割合
全体の割合

世代別にみてみると、全ての世代でA「負担が増えても普及させるべき」を選んだ人が多かった。20代、50代が8割超え、30代、40代、60代が約6割であった。

B「負担が増えるくらいなら普及させるべきではない」を選んだ人を見てみると、10代が14.3%、60代が25%と多かった。それ以外は、20代が3.6%、40代が7.7%、50代が5.9%、70代以上が11.1%だった。30代はBを選んだ人はゼロだった。

【男女別比率】

男女別に見てみると、A「負担が増えても普及させるべき」と答えた人は、男性69%・女性24%であった。一方、B「負担が増えるくらいなら普及させるべきではない」を選んだ人は、男性9%に対し女性20%であった。

男性
男性
女性
女性

60代でB「負担が増えるくらいなら普及させるべきではない」を選んだ人の割合が比較的多かったが、全ての世代を通して、A「負担が増えても普及させるべき」が多かった。

以下、A、B、Cそれぞれの回答者の意見を紹介する。

A. 負担が増えても普及させるべき

「地球環境のことを考えると、自然に優しいと思うので再エネを普及させるべきだと思う」(20代女性 東京 会社員)

©エネフロ取材班

「地震の後原発事故があったので、自然エネルギーも必要だと思う。」(10代男性 東京 高校生)

「再エネは未来に向けて、地球に良いものにすべき。負担は仕方ない。(今の電気代の)30%くらいまでなら負担してもよい。子供の世代ではなく、自分たちが負担すべき。」(20代女性 埼玉 学生)

「将来の若い人、子供たちの負担は軽減した方がいい。原子力ゼロにするのは、すぐには非現実的だと思う。」(30代男性 東京 会社員)

「日本はエネルギー自給率が低いのに、エネルギーを当然のように使っている。今の電気代の20%くらいまでなら(再エネ賦課金の)負担が増えてもいいと思う。しかし、所得によって(負担感も)違うと思うので(再エネ賦課金は)一律同じにするべきではない。」(50代女性 東京 主婦)

「自給率がまだまだ低いので再エネは負担してでも普及させるべきだと思う。(賦課金を払うことは)国民の義務だと思う。」(20代男性 東京 会社員)

©エネフロ取材班

B. 負担が増えるなら普及させるべきでない

「負担が増えるばかりでは良くないと思う。今の現状で、国民の負担を増やさずできることを考えるべきだと思う。」(40代女性 東京)

「今、再エネの比率が15%でも問題なく生活出来ているので、負担が増えるならこれ以上普及させなくてもいいかもしれない。」(20代男性 東京 会社員)

©エネフロ取材班

「再エネだけでなく、他の方法も考えるべきだと思う。再エネ賦課金がこれからも増えていく一方だと、日本に住んでいられなくなる。」(50代女性 東京 教師)

「日本は電気が明るすぎる。デパートとか、もったいないと思う。Aには賛成できない。」(70代 神奈川県 会社員)

C. どちらでもない

「再エネを増やすというと聞こえは良いし、もちろんそれも大事だと思うので、「普及させるべきではない」とまでは言えない。しかし、これ以上負担が増えるのであれば、原発など他の安い方法で発電してもらいたい。Aと答えた人のどのくらいが本心なのか疑問に思う。」(40代女性 東京 主婦)

©エネフロ取材班

再エネが増えるのは良いと思うけど、支払った分がどうなったか、具体的に反映されているのかどうか正直見えないからどちらとも言えない。(30代女性 東京 会社員)

©エネフロ取材班

「家庭ごとに収入は異なるので、負担の度合いにもよる。収入に合わせて負担をさせるのが良いと思うので、AよりCを選んだ。」(10代男性 千葉 学生)

水力や風力は環境を考えると土地を使うのでどうなのかと思う。再エネは自然を壊す恐れがある。技術の問題もあるが、地熱ならいいのではと思う。(50代男性 東京 公務員)

(再エネ賦課金が)再エネの普及に結びついている、という事が現時点で分からない。きちんと反映されているのであれば負担してもいいと思うが、具体的に原発も含めて現状が分かるようにしてほしい。(60代女性 東京 パート)

調査を終えて

日本のエネルギー自給率の低さに驚いた人も多かった。一方で、再エネの普及がまだまだであるとの認識はかなり広まっていると感じた。

そうした中、再エネは負担が増えても普及させるべきだとの意見が特に男性に多かった。一方で、負担の額については一律にすべきでない、などの声もあった。今後再エネ導入が拡大していくとき、私たちの負担がどうなるのか、我々は良く知るべきだろう。

また、再エネといっても様々な種類があるわけで、人によってそれぞれの優位性やコストなどの理解度にかなり差がある印象を受けた。この点についても、理解を深める必要があろう。

再エネはCO2を排出しない、地球に優しいエネルギーであることは間違いない。一方で、再エネの内、太陽光や風力などは、24時間安定したベースロード電源としては不向きである。再エネそれぞれの特性を生かし、その導入を増やしていくことが必要だ。そして、再エネの発電コストの削減も同時に図らねばならないだろう。(注3

エネフロではこうした調査を今後も行ない、読者のみなさんとエネルギー問題について今後も一緒に考えていきたいと思っている。

  1. 日本のエネルギー(2017年度版)
    「主要国の一次エネルギー自給率比較」によると、2015年の日本のエネルギー自給率は7.4%主要国の一次エネルギー自給率比較 IEA 「Energy Balance of OECD Countries 2017」を基に作成。
    ※表内の順位はOECD35カ国中の順位(IEA公表値に基づく)
    関連記事:ためになるカモ!? Vol.12 固定価格買取制度と再エネのこれから
  2. 「発電電力量に占める再生可能エネルギー比率の比較」によると、日本の再エネ比率は15.3%(2016年度)
    発電電力量に占める再生可能エネルギー比率の比較
    ※再エネは水力を除く 【日本以外】2015年推計値データ、IEA Energy Balance of OECD Countries (2016 edition)
    【日本】総合エネルギー統計2016年度速報値
    関連記事:ためになるカモ!?Vol.12 固定価格買取制度と再エネのこれから
  3. 日欧の太陽光発電(非住宅)システム費用比較
    日本と欧州の非住宅向け太陽光発電システムの費用には2倍近くの差がある。
安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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