写真)イメージ図
出典)flickr:massacritica-foto
- まとめ
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- 再エネ導入拡大のため固定価格買取制度が発足。再エネは急速に普及。
- 一方で、賦課金という形での国民負担も増えつつある。
- 今後は技術革新と規制緩和で再エネ発電コストを下げる努力が必要。
「再生可能エネルギー(再エネ)」という言葉を聞いたことがない人でも、太陽光発電や風力発電は知っていると思います。それ以外にも、波の力や地熱、バイオマスなど、地球の自然を利用してつくるエネルギーのことをいいます。
その再エネの普及ですが、じつは「固定価格買い取り制度(FIT フィット:Feed in Tariff)」という制度に支えられています。一体どのような制度なのでしょうか?
固定価格買取制度(FIT)とは
固定価格買取制度(FIT)とは、再エネによって発電された電気を、一定の期間・価格で電気事業者が買い取ることを国が義務付けた制度のことで、2012年7月から始まりました。東日本大震災による東京電力福島第一原発の事故を受け、日本の原子力発電所は一時期すべて停止しましたが、そうした中で再エネの普及を加速するために法制化されたのです。
日本のエネルギー自給率ですが、東日本大震災前の2010年には19.6%だったのですが、2012年には6.3%にまで落ち込みました。これは諸外国と比べ極めて低く、石炭、石油、LNGなどのエネルギー資源のほとんどを輸入に頼っているのが現状です。そうした中政府は、国産エネルギーである再エネの導入を増やしていく方向に舵を切ったのです。
出典)経済産業省「日本のエネルギーを知る20の質問」
IEA 「Energy Balance of OECD Countries 2017」を基に作成。
※表内の順位はOECD35カ国中の順位(IEA公表値に基づく)
再エネは、発電時にCO2を排出しないことに加え、エネルギー自給率の向上に貢献するなど、日本にとって重要なエネルギー源です。しかし我が国の総発電電力量に占める再エネの割合は15.3%にとどまっています。(2015年)その内水力発電が7.5%ですから、太陽光や風力などの再エネ比率は7.8%しかありません(図3)。この比率はアメリカやカナダ、フランスなどと同じ水準ですが、ドイツ、スペイン、イギリス、イタリアと比べると3分の1程度の水準です。
出典)経済産業省「日本のエネルギーを知る20の質問」
【日本以外】2015年推計値データ、IEA Energy Balance of OECD Countries (2016 edition)
【日本】総合エネルギー統計2016年度速報値
それでも日本が固定価格買取制度(FIT)を開始してから再エネの伸び率は目覚ましいものがあります。(図4)この制度が開始されてから、新たに運転を開始した設備は、2017年3月時点で約3539万kWと、制度開始前に比べ約1.7倍にもなっています。再エネ設備導入量は2.7倍に拡大しているのです。
再エネ普及のためのコスト
さて先ほど、固定価格買取制度とは、「再エネによって発電された電気を、一定の期間・価格で電気事業者が買い取ることを国が義務付けた制度」だといいました。では、その制度は誰が支えているのだろう、という疑問が湧きますよね?答えは、「私たち自身」です。
毎月届く、「電気使用量のお知らせ」をよーく見ると「再エネ発電賦課金」(東京電力エナジーパートナーの場合。電気事業者によって表記は異なる)と記載されているのをご存じでしょうか。つまり、再エネの導入拡大は、私たち一人一人の負担で支えられているのです。
再エネの電気の普及はエネルギー自給率の向上を意味します。その結果、化石燃料への依存度も下がりますし、燃料価格の乱高下に伴う電気料金の変動を抑える事も出来るのです。
© エネフロ編集部
一方で、その国民負担をどこまで増やしていいのかは議論の余地があります。2017年度の買取費用は約2兆7000億円、そのうち私たちが負担している賦課金は約2兆1000億円です。(図5)
地球温暖化防止の観点からも、また、エネルギー自給率向上のためにも、再エネの導入拡大は今後も進みます。そうした中で、先ほども述べた通り、国民負担を増やさないために、電気事業者や国は、技術革新や規制緩和などを推し進めることが必要です。そして、私たちが再エネのみならず、日本のエネルギー全体を支えているという意識を持つことが大事なのではないでしょうか。
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