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Vol.35 「カーボンニュートラルはまだ山のふもと」経済産業省資源エネルギー庁小澤典明次長インタビュー <前編>

写真)経済産業省資源エネルギー庁小澤典明次長

写真)経済産業省資源エネルギー庁小澤典明次長
© エネフロ編集部

まとめ
  • 経済産業省資源エネルギー庁の小澤典明次長に話を聞いた。
  • 2050年カーボンニュートラル、日本は山登りに例えればまだ「ふもとにいる」状況。
  • 2030年エネルギーミックスの目標は高いが、到達できないものではない。

昨年はロシアのウクライナ侵攻を受け、エネルギー市場が大きく揺れ動いた。

そうした中、政府は昨年12月22日、第5回GX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議を開催し、今後10年を見据えたロードマップとして「GX実現に向けた基本方針(案)」を示した。

日本がこれから取り組まねばならない課題とは何か。経済産業省資源エネルギー庁の小澤典明次長に編集長安倍宏行が話を聞いた。

日本のカーボンニュートラルの位置

安倍日本は2050年カーボンニュートラルを目指していますが、今、大体どの辺にいるのでしょうか?

小澤2050年カーボンニュートラルは国際的にも非常に重要な課題です。最近の気候変動の状況を見ると、喫緊の課題だといえますが、日本は山登りに例えれば、まだ「ふもとにいる」状況だと思います。まだまだこれから挑戦的に取り組まなければいけないということです。

カーボンニュートラルとは、化石燃料の使用を極力抑制し、CO₂を最終的に実質ゼロにしていくということですが、日本のエネルギー供給の9割近くは化石燃料に依存している状況ですので、日本はまだそのふもとにいて、これからようやく高い山を上っていかねばならないという状況なのです。

そのためのさまざまな対応、取り組みは、これから進めていかねばなりません。例えば原子力発電ですが、運転期間を延長できるようにすることを今回の基本方針に盛り込みました。

さらに新しい安全性の高いメカニズムを入れ込んだ次世代の革新炉の建設は、廃止を決定した原子力発電所の建て替えを対象にしています。

安全を大前提に持続的に活用できるような仕組みを作って、エネルギー自給率に資するベースロード電源の割合をできる限り上げていくことに取り組んでいきます。

安倍今一番有望なのは、革新軽水炉ですか?

小澤そうですね。軽水炉は、これまでにも稼働している実績があります。ですから、革新的な技術を導入した軽水炉は比較的短期間に建設できるのです。また、それ以外にも高速炉高温ガス炉もあります。その先には核融合というものもあります。どの技術もしっかりと実証し、実用に向けて取り組んでいくことが重要だと思います。

安倍小型モジュール炉というのもありますね。

小澤小型炉というのは、軽水炉のケースも、高速炉のケースも、高温ガス炉のケースもありまして、その総称で小型炉と呼んでいます。比較的安全性を高めやすいので、不安や懸念を払拭できるという意味では大きな可能性があります。

例えば5万kWぐらいのものをいくつ並べるかによって、20万kWにも50万kWにもなりますし、設置する場所を分散させるなど、柔軟性を持つことができます。時代のニーズに合った形が、将来は出てくる可能性もあるのではないかと思います。

安倍新型の原子炉を建設する場合、電力会社の資金調達をどうするのか、という問題が出てくると思います。民間の背中を押す、保証をつけてあげるような仕組みも大事ですね。

小澤そうですね。特に、エネルギーの安定供給とカーボンニュートラルの両立を図っていく上で、脱炭素電源の事業環境の整備はすごく大事だと思います。

再生可能エネルギーもそうですし、原子力発電もそうですが、投資がしやすいような環境を作る必要があって、「長期脱炭素電源オークション」という仕組みを2023年度に入れる検討を進めています。この中では再生可能エネルギー、原子力発電、あるいはCCS()と火力発電など、脱炭素の電源について一定期間、例えば20年なら20年、投資した分の回収をしてもいいですよ、という制度を導入することを、今検討しています。一定の予見性が高まれば投資がしやすくなりますので、そういったことを制度として入れて、原子力以外にも脱炭素に資する電源を支援することが大事になってくると思います。

安倍火力発電におけるアンモニアや水素の混焼も入るのですね。

小澤アンモニア混焼とか水素混焼などで脱炭素を追求するということであれば、投資の対象にすることは十分可能だと思います。

安倍最先端の石炭火力発電などもありますが、そうした日本の最先端のCO₂削減技術はパッケージとして海外に輸出できますよね?

小澤アジアを中心にこれからも電力需要が伸びていくので、国際協力は非常に大事です。「アジア・ゼロエミッション共同体」(AZEC)という構想を進めており、日本から各国に脱炭素の電源について、最新技術を導入しながら、お互いに一緒に連携してやっていきましょうとアジアを中心に呼び掛けています。非常に関心が高いのはやはり、水素を使った発電ですね。

小澤元々日本がアンモニアの混焼を提唱した時、各国からは「本当にやるんですか?」という声もありました。しかし、最近は、アンモニアもCO₂を出さないという意味では効果が同じですので、アンモニアの混焼もぜひやってみましょうという声も出てきています。

水素も最初は各国から、「本当に水素やるんですか?」と言われたのですが、今やアジアも、欧州も、アメリカも、軒並みやろうとしています。

水素については、日本はやはり最初に取り組んできたので、技術のベースもあります。それを国際協力として、海外に貢献する形で日本の技術をうまく輸出をしていきたいですね。

ただ、太陽光発電では、最初は日本が技術的に非常に強かったのですが、今や太陽光パネルなどは中国製が多い状況です。先鞭をつけた水素やアンモニアがそうなってしまうことは避けなければなりません。それらの技術をしっかりグローバルスタンダードを取りながらやっていく。そして世界的なカーボンニュートラルの道筋をつけていく基盤になっていけばいいなと思っています。

安倍国際標準をとることが大事ですね。

小澤さまざまな認証も含めてしっかり確保していくのは大事だと思います。

加えて、経済安全保障の観点がすごく大事ですので、自国技術でしっかりと賄いながら海外にも協力をしていくという枠組みを、うまく作っていかないといけません。

安倍経済安全保障の概念は大事ですね。国と国との緊張を緩和する風に繋がればいいなと個人的には思います。

小澤自分たちを守る意味でそれぞれの国が、エネルギーあるいは食料に対応することはすごく大事ですが、それを乗り越えないといけない部分はもちろんあります。気候変動問題は国内だけではなく、国際的に連携しないといけません。技術も含めてしっかり協力できるところは、協力していく、その枠組もやっぱり大事だと思います。

写真)経済産業省資源エネルギー庁小澤典明次長
写真)経済産業省資源エネルギー庁小澤典明次長

© エネフロ編集部

2030年エネルギーミックス

安倍2030年のエネルギーミックスへの展望はいかがでしょうか?

小澤2030年のエネルギーミックスの実現はとてもチャレンジングではないかと思います。再生可能エネルギーが36%から38%、原子力が20%から22%。要するにこの2つを足すと大体6割ですが、現状はまだ27%ぐらいですので、その差はまだ倍以上あるわけです。その意味で、非常に高い目標なのです。

ただ、どうやってもたどり着かないという目標ではないと思っています。原子力発電についても、今審査が進んでいるもの10基が地元の理解を得て再稼働して、すでに規制当局から合格書をもらっている7基を加え、17基が動くような体制になれば、一定の仮定を置いて計算すると、10%を超えるレベルになります。審査も以前に比べると、スムーズに流れるようになってきていますので、20%から22%という原子力発電の目標には十分に到達できるのではないかと思っています。

再生可能エネルギーも今の倍ぐらいにしないといけないのですが、洋上風力は今、地域を選定して公募しています。建設に少し時間がかかるので、2028年、29年、30年ぐらいでようやく動き出すところが多いですが、目標に到達できると私は期待していますし、それがその先の2050年にも繋がりますので。

図)2030年度のエネルギーミックス
図)2030年度のエネルギーミックス

経済産業省資源エネルギー庁「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」令和3年10月

安倍北海道の松前町の風力発電所をこの間見てきましたが、本州への連系線への期待が大きかったですね。

小澤系統整備を今回のGXの方針にもしっかり入れさせていただきました。北海道から本州、九州から本州の系統を整備していく。後は、周波数の異なる東日本と西日本の電力融通の強化などに取り組みます。

(後編につづく)

  1. (注) CCS…「Carbon dioxide Capture and Storage」の略。発電所や化学工場などから排出されたガスからCO₂を分離して回収し、地中深くに圧入・貯留する技術。
安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
・日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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