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出典) Pixabay sebaonflames
- まとめ
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- 2020年は、家庭用蓄電池に注目が集まる。
- 電力システム改革総仕上げとして発送電分離が行われる。
- 温室効果ガス削減努力を進め、海外にアピールする年になる。
2019年の漢字は「令」。そう、年号が変わった年だった。しかし、2018年同様、災害が多い年でもあった。台風や集中豪雨で関東や東北で停電や水害が起きた。2020年はすこしでも災害が少ない年であって欲しいと願う。
さて、昨年最初の編集長展望「2019年、エネフロが伝えたい事」で私は「2019年問題」を指摘、詳細は2月の「2019年問題 何が変わる?」に記した。FIT(全額買い取り)制度の買い取り期間が一部の電源で順次満了する為、需要家は自ら最適な選択をしなければならない、いわゆる「卒FIT問題」が発生する。対象となる人には、①現在の売電先に売る ②新電力に売電する ③電気を自家消費する、の3つの選択肢がある。
③の自家消費を選択した人は、蓄電池の購入を検討したかもしれない。2019年は非常用電源としてEV(電気自動車)も含め、蓄電池が注目された年でもあった。
資源エネルギー庁の「定置用蓄電池価格低減スキーム」(2017年3月)によると、家庭用蓄電池の2020年の目標価格は6万円/kWhとしている。
そうした中、米電気自動車専業メーカーTesla(テスラ)の日本法人テスラモーターズジャパンは昨年10月、家庭用蓄電池「Powerwall(パワーウォール)」を2020年春頃日本で販売すると発表し話題になった。蓄電容量は13.5kWh、最高出力は7kW(ピーク)/ 5kW(連続運転)で、平均的な4人世帯が約1日に消費する電気を蓄電できるとしている。
価格は99万円(税別)とかなり安く設定されたことから、国内蓄電池メーカーは対応を迫られることになりそうだ。家庭用蓄電池は、災害などの緊急停電時に力を発揮するだけでなく、地球温暖化対策にもなることから、価格競争が加速する2020年、消費者の注目が集まるのは間違いなさそうだ。
出典) テスラジャパン
電力システム改革総仕上げ
2020年次の大きなテーマは「電力システム改革」総仕上げだ。大手電力事業者は、2020年4月までに送配電部門を法的に分離することが求められている。(参考記事:電力システム改革総仕上げ「発送電分離」)
「法的分離」とは、送配電部門全体を別会社化する方法で、各事業部門の行為、会計、従業員などを明確に区分するものだ。
メリットは、分離することで、送配電網を所有していない新規参入者が公平に送配電網を利用し、発電や小売り事業を活性化できることだ。一方、デメリットは、大手電力事業者に一元化されていた事業が分離される事によって、様々なコストが発生し、電気料金の値上げにつながるのでは、との懸念があることだ。
いずれにしても、電気の安定供給が損なわれないように、自由化された電力市場が公正かつ合理的に運用される制度作りがこれからも求められる。
気候変動にかかわるテクノロジー
そして今年3つ目のテーマは、気候変動対策だ。昨年12月にスペインで行われたCOP25( 国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議)は、二酸化炭素など温室効果ガス(GHG)の排出削減量の上積みが参加各国に求められるとともに、「石炭火力発電バッシング」に重点が置かれた感がある。
そうした中、二酸化炭素を多く排出する石炭火力発電を推進し、発展途上国での建設に多額の公的融資を続けている日本が、環境NGOグループ主催の「化石賞」を受賞したとのニュースが大きく報じられた。しかし、筆者は石炭火力発電を諸悪の根源とする考えには違和感を感じる。
下の表を見ていただきたい。石炭火力発電に頼っているのは中国やインドなどだ。
出典) 日本原子力文化財団
さらに、両国のCO2排出量と日本国内石炭火力発電所の排出量を比較すると、その差は歴然としている。
出典) 経済産業省「火力発電の高効率化」
だからといって、ほとんどの原子力発電所を停止したまま、火力発電で電力需要の8割を賄っている今の日本が免罪されるとは思っていない。しかるべき主張はしなければいけない。実際、日本はCOP25でも主張したが、2018年度まで5年連続でCO2排出量を減らしている。2018年度の温室効果ガスの総排出量(速報値)は12億4,400万トン(二酸化炭素(CO2)換算)で、前年度比3.6%減(2013年度比11.8%減、2005年度比10.0%減)であり、実績は上げている。
また、日本の石炭火力発電の発電効率は世界トップレベルであり、その技術を旧来型の石炭火力発電所を使っている新興国に輸出することは、世界の温室効果ガスを減らすために貢献する。こうした点を日本はもっと世界にアピールしてもよいのではないか。
エネフロはかつて、Jパワー(電源開発)と中国電力が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として広島県大崎上島町で行っている大崎クールジェンプロジェクトを取材した。(参考記事:「石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業」大崎クールジェン 環境に優しくエネルギー安全保障上も注目)
石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)と二酸化炭素(CO2)の分離・回収技術を組み合わせた革新的な“低炭素”石炭火力発電だ。現在、第2段階CO2分離・回収型IGCC実証試験に進んでいる。
出典) 環境省「大崎クールジェン株式会社」
最終形のIGFCとは、ガスタービン、蒸気タービン、燃料電池による高効率なトリプル複合発電を行うもので、商用段階の発電効率は55%以上(送電端)を目指す世界最先端の技術だ。世界各国から年間何百人も見学者が来るほど注目されている。こうした技術を、運営管理技術を含めた「パッケージ型インフラ輸出」の形で海外の温室効果ガス削減に貢献することは、日本の責任だと筆者は考える。
日本は2030年までに温室効果ガスを13年度比26%減らすという目標を掲げている。火力発電に頼らざるを得ない現状において、その目標達成は困難だが、日本が出来ることを着実に進め、それを海外にきちんとアピールすることが求められる年になるだろう。
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