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ためになるカモ!?

Vol.26 エネルギー変換効率100%!? 発電生物見参

写真)デンキウナギ 500~800Vもの電気を出す
出典)OpenCage

まとめ
  • 人を含む多くの生物は、エネルギー変換により体内で発電している。
  • 強電気魚は、変換効率が約100%。
  • 強電気魚の発電システムを応用し安全で高効率な発電技術の実現へ。

「電気を出す生き物」と聞いて皆さんは何を連想されますか?実は、大きなエネルギーを生み出す生物の研究が国内外で進んでいます。今回は生物界全体に関わるエネルギーについてご紹介します。

発電する魚

写真)左:デンキウナギ 右:デンキナマズ
写真)左:デンキウナギ 右:デンキナマズ

出典)OpenCage

デンキウナギ、デンキナマズ。「電気を発生させる生物」という言葉から多くの人が連想するのは、これらの生物でしょうか。これらの魚は強電気魚と呼ばれ、その名の通り、デンキウナギは600~800V(600Vでアルカリ乾電池約400個分)、デンキナマズは400~450Vという高電圧の電気を起こすことができます。この高電圧は「発電細胞」が電池の直列つなぎのように数千枚並び、ほぼ同時に放電することにより、可能になっています。

ちなみに、デンキクラゲは、デンキと名前についていますが電気を出しません。このクラゲに刺されると触手から出す毒で感電したような刺激を感じることからその名がつけられました。さらに言えば、デンキクラゲは、刺胞動物の仲間・ヒドロムシが複数集まった群体であり、クラゲではありません。

写真)デンキクラゲ(カツオノエボシ)
写真)デンキクラゲ(カツオノエボシ)

出典)Flickr Photo by Olaf Gradin

強電気魚の発電システムの応用

ここで一つ興味深い話を。近年、脱炭素化に向けた次世代発電技術の一つとして、バイオ燃料電池の開発・実用化が期待されています。酵素や微生物を触媒として、有機物を分解してエネルギーを取り出す発電方法です。燃料がほぼ無尽蔵で、安全性が高いことが強みとされていますが、発電効率の低さが課題となっています。

そこで、注目されたのが強電気魚です。強電気魚は、体内にある物質から電気エネルギーを取り出す際の交換効率が約100%。驚異の発電効率の高さなのです。

理化学研究所「シビレエイ」の研究

理化学研究所の研究者を中心とする共同研究グループは、強電魚の一種であるシビレエイを用いて、電気器官を調べる実験を行いました。物理的刺激・科学的刺激による発電、一定時間の発電の継続、発電の繰り返し、発電された電力の利用、蓄電が可能であることがわかりました。

写真)シビレエイ
写真)シビレエイ

出典)Wikimedia Photo by Matthias Kleine

画像)「電気器官および電気柱の構造」
画像)「電気器官および電気柱の構造」

(シビレエイには1対の電気器官が胸鰭の基部にあり、それらは腎臓型をしている。電気器官の中では、発電細胞がたくさん積み重なって電気柱を形成している。)

出典)「シビレエイ発電機 -強電気魚の電気器官を利用したATP系発電システムの開発-」理化学研究所

研究グループは、この実験を高効率発電機に向けた第一歩と位置づけ、さらに、電気器官を人工的に再現・制御することを目指しています。

ミシガン大学「デンキウナギ」の研究

理化学研究所によるシビレエイの実験の約1年半後、ミシガン大学の研究チームによるデンキウナギの研究が、科学誌ネイチャーに発表されました。

イオンを内包したゲルを複数重ね合わせることで、電気細胞が直列に配列されたデンキウナギの電気器官を再現。約2500個のゲルを用いて110Vの発電に成功しました。

チームはさらに研究を進め、体液からゲルを作って、生体に適合する電池を開発することを目指しています。もしそれが実現すれば、心臓のペースメーカーや、コンタクトレンズ型ディスプレイ端末の電源を、生体内に確保し半永久的に利用する仕組みに応用できるとして期待されています。

バイオ燃料電池を用いて「食べて動く」ロボットが実用化し、人間が体内に発電装置を埋め込んで「電気で動く」ようになる。そんな、ロボットと人間の境界が曖昧なSFのような未来も遠くないかもしれませんね。

参考:
「シビレエイ発電機 -強電気魚の電気器官を利用したATP系発電システムの開発-」理化学研究所
「美しくも危険な「電気クラゲ」にご用心」National Geoglaphic
「微生物を触媒にしたバイオ燃料電池- 生命が生み出す電気エネルギー -」東雅之
「新方式の3次元電極でバイオ燃料電池の性能を劇的に向上」東京工業大学
「Electric eel-inspired devices could power artificial human organs」Nature
「An electric-eel-inspired soft power source from stacked hydrogels」Nature