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テクノロジーが拓く未来の暮らし

Vol.12 社会が変わる!VR・AR最前線

写真) HoloLens2を活用して遠隔で共同作業をする様子
出典) Microsoft

まとめ
  • 2016年の「VR元年」以降、VR・AR市場が拡大。
  • ゲーム市場にとどまらず様々な分野で活用され、私たちの生活に大きな変化をもたらす。
  • 浜岡原子力発電所VRスコープを試してみた。

最近、VRやARなどの文字をよく見かけるようになった。「VR」とは「Virtual Reality」の略であり、日本語では「仮想現実」という。閉じられた世界でスクリーン上に仮想の世界を映し出し、あたかも自分がその世界にいるような体験ができる技術だ。

もう一つの「AR」「Augmented Reality」の略で、日本語に訳すと「拡張された世界」だ。ARは実在する風景にバーチャルの視覚情報を重ねることにより、目の前の世界を仮想的に拡張する技術である。

VRやARはゲームなどのエンタメ市場やレジャー関連などだけで活用されているもの、というイメージを抱かれたかもしれない。しかし今後、VRやARは私たちの生活に劇的な変化をもたらすと思われる。今回は、VRやARの最新事情を紹介しよう。

VRとARの例

VRの代表的な例は、Play Station VR(PS VR )。専用のメガネのようなヘッドセットを装着することで、360度ゲーム空間に自分が立っているような3D世界が実現される。

筆者も、友人宅でPS VRのゴルフゲームを体験したことがあるが、まるで本物のゴルフ場に来たような臨場感で、爽快なショットに魅せられた。

写真) Play Station VRでゲームをする様子
写真)Play Station VRでゲームをする様子

Play Station VR

これに対してARの代表的なゲームは「ポケモンGO」、といえば誰でもピンとくるだろう。自分がいる現実の風景の中に、ポケモンのキャラクターが出現。肉眼で見る景色とは異なる拡張世界をスマホの画面を通して体感できる。

つまり、VRとARは似ているようで大きく異なる。VRによって自分が現実にない仮想空間にいるかのような体験ができる一方で、ARでは目の前にいる現実空間にデジタルな情報や仮想世界が重ねられることで、新たな世界が目の前に広がるのだ。

VR市場はなぜ発展したのか

VRはここ数年間で特に発展した市場である。一方、その始まりは意外と古い。2009年には日本でARの先駆的存在の「セカイカメラ」が開発され、大きな話題を呼んだ。しかし、サービス開始が早すぎたのか、ユーザーに思ったほど浸透せず、VR・AR市場を確立するには至らなかった。2014年に全サービスを終了している。

こうした中、VR・AR市場が拡大し始めた最大の理由は、やはりスマートフォンが普及し、高速で大容量通信が可能になったことが大きい。2016年には「VR元年」と呼ばれる程、環境が整った。前述の「ポケモンGO」は2016年に発売され、その年だけで約1090億円も売り上げた。

表) VR・AR発展の歴史
1968年 アイバン・サザランド、世界初のHMD(Head Mounted Display:頭部装着ディスプレイ)を提案
1989年 ジャロン・ラニアーがベンチャー企業VPL Researchの製品紹介の中で「VR」という言葉を初めて使う
1990年 マサチューセッツ工科大学、サンタバーバラ会議を開催。「VR」の研究領域が定まる。
90年代VRブーム
2009年 頓智ドット(当時)、スマートフォン用ARアプリ「セカイカメラ」リリース
2012年 オキュラス、VR用HMD「Oculus Rift」のプロトタイプを発表
2014年 • Facebook、オキュラスを買収
• Google、クアルコムなどがAR技術ベンチャーのMagic Leapに5億4200万ドルを投資
• Google、簡易型HMD「 Google Cardboard」発売
• Google、眼鏡型ウェアラブル端末「Google Glass」発売
2015年 サムスン電子、オキュラスと共同開発したHMD「Gear VR」を発売
2016年「VR元年」 1月
ゴールドマン・サックス、2025年までにVR関連市場は800億ドルに達すると予想

3月
オキュラス、VRデバイスとしてHMD「Oculus Rift」発売
マイクロソフト、シースルータイプのMR用HMD「Microsoft HoloLens」を発売(日本では12月にプレオーダー開始)

4月
HTC、VR用HMD「HTC Vive」発売

7月
任天堂/ナイアンティック、「ポケモンGO」をリリース

10月
ソニー・インタラクティブエンタテインメント、「PlayStation VR」発売

出典) みずほ情報総研

技術の活用

しかし、今やVRやARは、あらゆる場面で活用され、社会に大きく貢献している。注目はマイクロソフトが開発した「HoloLens 2」だ。これは、「Mixed Reality(MR:複合現実)」という、VRとARを合わせた最先端の技術を使っている。

写真) HoloLens 2
写真)HoloLens 2

出典) Microsoft

MRとは、VRの世界に現実世界を再現するもので、CGによる3D映像等を重ねて表示し、CG と実物を合わせて確認し操作することができる技術である。

「HoloLens 2」は、マイクロソフトが開発したWindows10を搭載した世界初の自己完結型ホログラフィックコンピューターだ。 リアル空間の物理的な環境にホログラムを配置することができたり、デジタルコンテンツを操作したりすることができる。

写真) HoloLens 2のMied Reality(複合現実)
写真)HoloLens 2のMied Reality(複合現実)

出典) Microsoft

例えば、自分の両手、指を認識し、デジタルで表示されているオブジェクトを回したり、移動させたり、またタッチパネルのようにスクリーンを操作することができる。

写真) HoloLens 2を使用している様子
写真)HoloLens 2を使用している様子

出典) Microsoft

医療の世界では、手術中、リアルタイムのX線や超音波などの情報源を頼りに、患者の体内を視認することなどに応用されている。

また、建設現場では3Dの作業手順書や、現場の作業者とエキスパートの視点共有、建設プロセスの表示などが可能になる。

現場の安全性や正確性を高め、人的負荷を低減させて生産性を向上させるだけでなく、資材などのコストの削減も図るなど、あらゆる社会の変化をもたらすことが予想される。

写真) 医療現場でHoloLens 2を使用している様子。
写真)医療現場でHoloLens 2を使用している様子。

出典) Microsoft

写真) HoloLens 2を使用している様子。3Dの作業手順書の表示(写真上段)、現場の作業者とエキスパートの視点共有(写真左下)、建設プロセスの表示(写真右下)
写真)HoloLens 2を使用している様子。3Dの作業手順書の表示(写真上段)、現場の作業者とエキスパートの視点共有(写真左下)、建設プロセスの表示(写真右下)

出典) Microsoft

スマートフォンでVRを体験

VR装置を買ってまでは・・・、という方。最近ではスマートフォンを使って、誰でもVRが楽しめるアプリもある。例えば、浜岡原子力発電所VRのアプリは、浜岡原子力発電所の安全対策の一部を臨場感豊かに体験できる。アプリをダウンロードした後は、指示に従い、このVRスコープの中にスマートフォンを差し込むだけだ。

写真) 筆者VRスコープ装着写真
写真)筆者VRスコープ装着写真

© エネフロ編集部

VRスコープを通すと、以下の写真が立体的に動いて見える。頭を動かす動作でポインターをマークに合わせて内部に進んでいくと、普段は一般の人が立ち入れない強化扉の内側まで見ることができる。まるでその場にいる様な体験がスマートフォンでできてしまうとは驚きだ。その他にも、緊急時淡水貯槽、ガスタービン発電機、耐震設計、防波壁、可搬設備の見学が体験できる。

工場などの現場に行かずとも、バーチャルな体験ができるようになったのは画期的だ。企業の活動を正しく知ることは消費者にとっても有益だ。

写真) このような安全対策が実際に動いて見える
写真)このような安全対策が実際に動いて見える

出典) 中部電力

私たちの生活に変革をもたらすVR・AR。市場は急成長し、今やゲームの世界だけでなく様々な場面でその便利さや可能性を体感できるようになっている。絶叫エンターテイメントVR ZONE など、全国各地でVRを手軽に体験できる場所も増えてきた。皆さんも身近にあるVRを是非体験してみてはいかがだろうか。

安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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IoT、AI・・・あらゆるものがインターネットにつながっている社会の到来。そして人工知能が新たな産業革命を引き起こす。そしてその波はエネルギーの世界にも。劇的に変わる私たちの暮らしを様々な角度から分析する。