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エネルギーと私たちの暮らし

Vol.06 日本のエネルギー担うガスサプライチェーン
直江津LNG基地取材記

INPEX直江津LNG基地 LNGタンク(豆粒のように見えるのは筆者)
©ナカニシミカ

まとめ
  • ガスサプライチェーン中核を担うINPEX直江津LNG基地。豪州など海外ビッグプロジェクトからLNGの供給受ける。
  • 巨大な設備は効率よく運転され、究極の省人化が図られていた。
  • 環境負荷が低い天然ガスのニーズはますます高まり、豪州やアジアなどの巨大プロジェクトが進行中。

台所のガスコンロのスイッチを押すとあたりまえのように火が付きます。しかし、都市ガスにしてもプロパンガス(LPガス)にしても、そのガスがどこから供給されているのかなんて普段考えもしませんよね?

写真1:ガスコンロのバーナー
写真1:ガスコンロのバーナー

出典)PubulicDomeinPictures.net

ガスは一体どこから供給されているのだろう?そう思った編集部は、早速LNG(液化天然ガス:Liquid Natural Gas)基地の取材を敢行しました。場所は新潟県上越市。東京からは北陸新幹線で上越妙高駅まで2時間10分、そこから車でおよそ30分も走って日本最大の石油と天然ガスの開発会社、INPEX(インペックス:国際石油開発帝石株式会社)の「直江津LNG基地」に到着しました。

真っ先に視界に飛び込んできたのは、巨大なLNGタンク。雲一つない快晴、青い空とタンクの色のコントラストが綺麗です。

写真2:INPEX直江津LNG基地
写真2:INPEX直江津LNG基地

©ナカニシミカ

巨大LNG基地の施設

まず、広大な敷地にびっくり。広さ25ヘクタール(25万平方メートル)は東京ドーム5.3個分。容量18万キロリットルの巨大なLNGタンク2基を擁し、パイプラインを使って1都8県に天然ガスを供給する一大基地です。

図1:直江津LNG基地配置図
直江津LNG基地配置図

出典)国際石油開発帝石株式会社

まず見学したのは、LNG船からLNGを荷揚げしてLNGタンクへと送り込む荷役施設。隣接する「受け入れ桟橋」は、積載量21万立方メートル級の大型LNGタンカーが着桟可能です。

写真3:「さやえんどう」型LNGタンカー(イメージ図)
写真3:「さやえんどう」型LNGタンカー(イメージ図)

出典)国際石油開発帝石株式会社

受け入れ桟橋はLNGタンカーからLNGを荷卸しする場所です。LNGタンカーは全長約300メートルにも及ぶ巨大な船舶ですから、タグボートと呼ばれる特殊な曳舟(ひきふね)数そうの力を借りて慎重に桟橋へと運ばれます。

写真4:LNG船とタグボート
写真4:LNG船とタグボート

Photo by イソロク

LNGタンカーが桟橋に着くと、「LNGアンローディングアーム」という特殊な設備を使ってLNGを荷揚げし、タンクへと送ります。

写真5:LNGアンローディングアーム
写真5:LNGアンローディングアーム

©ナカニシミカ

アームの先端には「油圧式クイックカプラ」というユニークな形の装置がついています。船側のフランジとの接続・切り離しが安全かつ確実に行うことが出来ると共に、冬場の作業時間短縮にも貢献するとのことでした。

写真6:油圧式クイックカプラ
写真6:油圧式クイックカプラ

©ナカニシミカ

こうして荷揚げされたLNGはタンクへと送られます。そのLNGタンクは直径約83メートル、高さ約54メートル、容量は18万キロリットル(基地内に2基)で、1つのタンクにボーイング787が3機収納できるといいますから、その巨大さが分かります。タンクの下に立った筆者と比べてみればどれだけ大きいか一目瞭然ですね。

写真7:LNGタンク
写真7:LNGタンク

©ナカニシミカ

写真8:LNGタンク
写真8:LNGタンク

出典)国際石油開発帝石株式会社

液体からガスへ

LNGはそのままでは製品になりません。まず気化・熱量調整を行い、初めて製品ガスとしてパイプラインネットワークへと送り出されるのです。そもそもLNGとはもともと気体だったガスを-162℃に冷却し、液体にして海外から運んできたもの。 気体のままだとかさばるので冷やして体積を約600分の1にまで圧縮するのです。普通のサイズのプール(25m×12m×0.8m)の容積の気体が、家のお風呂(200リットル)2杯分になるイメージです。

その液体であるLNGを今度は基地内で気体に戻します。そのために使うのが海水の熱なのです。そう、LNGは超低温ですから海水の温度の方がはるかに高く、その熱を利用して気体に戻すわけです。それが気化器です。

写真9:オープンラック式気化器
写真9:オープンラック式気化器

©ナカニシミカ

図2:オープンラック式気化器概念図
図2:オープンラック式気化器概念図

出典)国際石油開発帝石株式会社

気化したLNGはLPG(液化石油ガス)(注1)を加えて熱量を調整して、国産天然ガスと共にパイプラインネットワークへと送られるのです。

写真10:熱量調整設備
写真10:熱量調整設備

©ナカニシミカ

パイプラインの中には大量のガスが流れているはずなのに、実際に耳を当ててみても音を聞くことが出来ませんでした。この広大な基地の中にも空き地があります。なぜか不思議に思っていたら、将来のタンクや設備の増設に備えてのことだそうです。

そしてこの設備全体のオペレーションはわずか20名足らずのスタッフが3交替で行っていることにも驚きました。つまり、通常全設備を動かしたり監視したりしている人間の数は4~5名しかいない、ということです。それ以外の間接スタッフを入れても全体で50名ほどしかいないという、高効率、省人化が達成されていました。

写真11:基地敷地内の空き地
写真11:基地敷地内の空き地

©ナカニシミカ

写真12:中央操作室
写真12:中央操作室

©ナカニシミカ

写真13:パイプライン
写真13:パイプライン

©ナカニシミカ

パイプラインネットワーク

さてこのパイプラインはどこまでつながっているのでしょうか?総延長は1500キロメートル、1都8県にガスを届けています。パイプラインは実際に私たちの目に触れることはほとんどありませんが、山や谷を越え、川を渡って様々な地域にまで伸びているのですね。

図3:INPEXパイプラインネットワーク
図3:INPEXパイプラインネットワーク

出典)国際石油開発帝石株式会社

こうしたパイプライン網は24時間監視され、万が一事故などがあったらすぐに遮断され、安全が確保されるようになっています。

写真14:パイプライン
写真14:パイプライン

出典)国際石油開発帝石株式会社

ガスサプライチェーン

直江津LNG基地は、豪州のイクシスとインドネシアのアバディ、2つの海外LNGプロジェクトからLNGを受け入れます。こうしたことから同基地は、海外LNGプロジェクトと国内天然ガスパイプラインネットワークをつなぐ、いわゆる「ガスサプライチェーン」の中核を担っているといえます。

図4:直江津LNG基地がLNG供給を受け入れる
海外プロジェクト
図4:直江津LNG基地がLNG供給を受け入れる海外プロジェクト

出典)国際石油開発帝石株式会社

イクシスLNGプロジェクトは、INPEXが操業主体(オペレーター、参加権益比率:62.245%)となり、TOTAL、CPC、東京ガス、大阪ガス、関西電力、JERA及び東邦ガスらと共に、西豪州沖合のイクシスガス・コンデンセート田から産出される天然ガスを、 北部準州のダーウィンの陸上ガス液化プラントにて液化し、年間890万トンのLNG及び年間165万トンのLPGとして生産・出荷する計画です。実に40年という長期にわたり稼働が見込まれる世界的に大規模なLNGプロジェクトです。

写真15:イクシスLNGプロジェクト 沖合生産・処理施設
(CPF: Central Processing Facility(名称:イクシス エクスプローラー))
写真15:イクシスLNGプロジェクト 沖合生産・処理施設(CPF: Central Processing Facility(名称:イクシス エクスプローラー)

出典)国際石油開発帝石株式会社

写真16:イクシスLNGプロジェクト 沖合生産・貯油出荷施設
(FPSO: Floating Production, Storage and Offloading(名称:イクシス ベンチャラー)
写真16:イクシスLNGプロジェクト 沖合生産・貯油出荷施設(FPSO: Floating Production, Storage and Offloading(名称:イクシス ベンチャラー)

出典)国際石油開発帝石株式会社

写真17:イクシスLNGプロジェクト 陸上ガス液化プラント
写真17:イクシスLNGプロジェクト 陸上ガス液化プラント

出典)国際石油開発帝石株式会社

今後、2018年3月期中にコンデンセート・液化天然ガス(LNG)・液化石油ガス(LPG)の生産を順次開始し、出荷していく予定になっています。鉱区を取得したのが1998年ですからすでに19年が経っており、こうした海外プロジェクトは数10年のスパンで見ていかねばならない、とつくづく感じます。

エネルギーミックスの中のLNG

普段何気なく使っているガスがこのような海外のビッグプロジェクトに支えられていることが今回良く分かりました。と同時に資源がない日本という国のエネルギー政策のかじ取りの難しさをいまさらながら感じないわけにはいきません。

天然ガスは、石油や石炭と比べ環境負荷が小さいといわれています。それは天然ガスが、有害な一酸化炭素などの不純物をほとんど含まず、燃焼したときに発生する窒素酸化物(NOx)、二酸化炭素(CO2)の量が少なく、硫黄酸化物(Sox)は発生しないからです。

また、生産地は世界各地に分布していて、埋蔵量も豊富です。このため、長期的な安定供給が見込まれます。単にガスとしてだけではなく、火力発電の燃料としても使われています。地球温暖化防止の観点からもLNGの重要性は今後も上がり続け、海外における資源開発は今後もますます加速するのは間違いなさそうです。

  1. LNG:Liquefied Natural Gasは、メタンとエタンを液化したものを液化天然ガス。液化すると体積は気体の1/600になる。
    LPG:Liquefied Petroleum Gasは、プロパンとブタンを液化したもの。液化すると体積は気体の1/250になります。
安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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