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エネルギーと私たちの暮らし

Vol.05 原子力発電は必要ですか?世代を超えて聞いてみた

(写真)東京・渋谷

まとめ
  • 東京で「原子力発電は必要だと思うか?」とアンケート調査を行った。
  • 結果、「必要だと思う」「どちらかというと必要だと思う」と「どちらかというと必要だと思わない」「必要だと思わない」が拮抗した。
  • エネルギーについて自分の意見を述べた人が多かった。

東日本大震災から早6年半が過ぎた。震災直後、都内でも多くのエスカレーターが止まったり、ネオンサインが消されたり、計画停電が実施されたり・・・それらも遠い記憶となりつつある。節電が声高に叫ばれていたあの頃を覚えていないティーンも増えているはずだ。

現在日本の電力はそのほとんどが化石燃料を使った火力発電でまかなわれている。動いている原発は5基のみだ。人々はこの現状をどう思っているのだろうか?取材班は10月末、若者の街、東京・渋谷とサラリーマンや年齢層の高い人が多い、東京の新橋・銀座・有楽町地区でアンケート調査を行った。

「原子力発電は必要だと思いますか?」131人に聞く

アンケート実施要領

実施要領は以下の通り。

① 実施日
2017年10月21日、26日(2日間)

② 実施場所 東京都内
幅広い世代の意見を聞くため、2班に分かれて若者が多い地域と年齢層の高い人が多い地域で取材した。(JR東日本渋谷駅、JR東日本新橋駅、有楽町駅前、東京メトロ銀座駅周辺)

③ 質問 「原子力発電は必要だと思いますか?」

  • A. 必要だと思う
  • B. どちらかというと必要だと思う
  • C. どちらかというと必要だと思わない
  • D. 必要だと思わない

の4択とした。インタビューを受けた人の意思をはっきり聞くため、敢えて「わからない」は選択肢に入れなかった。

④ 聞いた人の数
合計 男性 女性
渋谷 72人 41人 31人
銀座 50人 36人 14人
新橋 9人 4人 5人
合計 131人 81人 50人
⑤ 世代別男女比
年代 人数 男性 女性
10代 25人 13人 12人
20代 32人 23人 9人
30代 21人 10人 11人
40代 10人 8人 2人
50代 14人 11人 3人
60代 15人 9人 6人
70代~ 14人 7人 7人
全体 131人 81人 50人

アンケート結果

まず全体の分析を見てみよう。

全体
(A)必要だと思う
+
(B)どちらかというと必要だと思う
(C)どちらかというと必要だと思わない
+
(D)必要だと思わない
69人 62人
53% 47%

とほぼ拮抗した。

賛成、反対の割合

では、世代別にみてみよう。

「必要だと思う」「どちらかというと必要だと思う」より「どちらかというと必要だと思わない」「必要だと思わない」という人が多かったのは、10代と60代以上で、それ以外の世代では「必要だと思う」「どちらかというと必要だと思う」人が「どちらかというと必要だと思わない」「必要だと思わない」人を上回った。働き盛り世代の40代で86%、50代で70%が「必要だと思う」「どちらかというと必要だと思う」だった。

10代
20代
30代
40代
50代
60代
70代〜

「必要だと思う」、「必要だと思わない」、それぞれ主な意見としては

【必要だと思う】と答えた人

「日本は今まで原発に頼ってきた。いまさら原発がないとなると、これまでの生活が維持できるとは思わない。」(20代男性 神奈川)

©エネフロ取材班

「今電子工学を学んでいるが、やはり原子力発電が無いと発電量はまかないきれない。(使用済み核燃料の)処理は国がきちんと考えていかなくてはならない。」(20代男性 長崎)

©エネフロ取材班

「原発で働いている人は無くなると生活に困る。私たちもないと困る。全くなくていいということにはできない。」(70代女性 東京)

©エネフロ取材班

【どちらかというと必要だと思う】と答えた人

「今の日本は原子力発電が無くなった時、代替があるのか疑問だから。」(30代女性 東京)

©エネフロ取材班

「地震の後の光景を考えるとない方がいいと思うが、今の日本は原子力なしではやっていけると思わない。原子力に変わるエネルギーがないのであれば必要ないという意見にはならない。」(30代女性 東京)

©エネフロ取材班

【どちらかというと必要だと思わない】と答えた人

「日本は地震大国なので福島のように被害が拡大すると心配だから。」(10代男性 北海道)

©エネフロ取材班

「後の処理を次の世代が担うのでそのことも考えていかなくてはならない。今後少しずつ違う方向にシフトしていけたら理想だ。」(50代女性 東京)

©エネフロ取材班

「核のゴミの問題(の対策)が確立していない。」(30代男性 千葉)
「平和利用という形で始まっているが人間の進歩が追い付いていないと福島の事故を見て思った。」(40代男性 広島)

©エネフロ取材班

【必要だと思わない】と答えた人

「原発は今ほとんど止まっているが、震災直後程電力不足が騒がれていないので、足りているのかなと思っている。」(20代男性 神奈川)

「人間が100%コントロールできないのであればやるべきではないと思う。原発があることでその地域の恩恵があるのはわかるが安全が100%担保されていないのであればやるべきではない。」(30代男性 広島)

「怖い。コントロールが出来ていないと思う。」(60代男性 青森)

「なんとなく怖いイメージが強い。何かあったら取り返しがつかない。(震災後)雨の日が心配だったりした。子供もいるので。」(40代女性 神奈川)

他の媒体の調査

原子力発電については他の媒体(新聞、テレビ)も様々な調査を行っている。質問も今回のものとは異なるので単純比較はできない。また、調査の時期や対象となる地域などによっても結果は様々だが、今回の調査の結果を考える材料になるかもしれない。

① 全国紙の調査

【毎日新聞】2017年3月13日記事(ウェブ版)要約

3月11日、12日に実施した全国世論調査結果。原発の再稼働に「反対」との回答は55%、「賛成」は26%。昨年3月の調査では「反対」53%、「賛成」30%。節電に「大いに取り組んでいる」は17%、「少し取り組んでいる」は49%。2012年7月調査では「大いに」「少し」で計8割を超えていた。

(調査方法)
3月11、12日の2日間、コンピューターで無作為に数字を組み合わせて作った電話番号に、調査員が電話をかけるRDS法で調査した。福島第一原発事故で帰還困難区域などに指定されている市町村の電話番号は除いた。18歳以上のいる1597世帯から、1012人の回答を得た。回答率は63%。

なお、こちらの調査は、「賛成」、「反対」の2択で聞いており、エネフロが今回行った、「必要だと思う」、「どちらかというと必要だと思う」、「どちらかといいうと必要だと思わない」、「必要だと思わない」の4択調査と比較はできない。

調査を終えて

今回街に取材に出たスタッフの多くが強く感じたことがある。それは、「エネルギーについて自分の考えを持っている人が多い。」ということだった。

若い世代から働き盛り世代まで、なぜ自分がその答えを選んだのか、理由を次々と明確に話してくれたことは正直意外だったが、多くの人がこの問題を冷静に考えているのだな、との印象を強くした。特に「必要だと思う」もしくは「どちらかといえば必要だと思う」とした人たちからは、短期的には原子力発電なしで日本の電力需要はまかなえないのではないか、との声が多かった。

一方、60代以上の男性に「必要だと思わない」と答えた人が多かったが、具体的な理由が聞けなかったのは残念だった。子供や孫の代を心配する声は様々な世代の人から聞いたが、もっともだと思う。だからこそ、現状安全対策はどうなっているのか、再稼働のプロセスは今後どのように進むのか、関心をもって私たちひとりひとりが考えることが必要だろう。

エネフロではこうした調査を今後も行なうと共に様々な情報を提供していき、読者のみなさんとエネルギーの問題について一緒に考えていきたいと思っている。

安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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