台風21号(ラン)衛星画像(2017年10月21日)
出典)VIIRS image captured by the National Oceanic and Atmospheric Administration’s Suomi NPP satellite
- まとめ
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- 台風による電柱倒壊や電線の切断などで停電が発生する。
- 電力会社は停電時間を最短にするための努力をしている。
- 停電時には電気ガス器具の使い方に注意する。
衆院選投開票日の10月22日から23日にかけて、非常に強い台風21号が日本大陸を襲い、各地で大荒れの天気となりました。
21日から日本の南を北上した台風21号は、23日3時頃、 超大型・強い勢力で静岡県御前崎(おまえざき)市付近に上陸。その後、広い暴風域を伴ったまま北東に進み、23日15時に北海道の東の海上で温帯低気圧となりました。
特に和歌山県新宮(しんぐう)市では48時間に888.5ミリを観測し観測史上1位の値を更新するなど、21日から23日にかけて近畿地方や東海地方を中心に500ミリを超える記録的な大雨となりました。また沖縄から北海道に至る広い範囲で風速20メートル以上、西日本や東日本、北海道では風速30メートルを超える猛烈な風となったのです。
この影響で、各地で停電が相次ぎました。経済産業省によると、台風21号による停電は東京電力の管内で14万7200軒、関西電力で12万3850軒など全国で37万軒にも上り、ガスの供給停止も兵庫県と滋賀県で203軒発生しました。その他、全国の中小企業104社で浸水のほか、屋根や壁が壊れるなどの被害が出るなど、猛威を振るいました。(注1)(10月25日発表)
私たちの暮らしに欠かせないライフラインのひとつ、電気。災害によるライフラインの寸断は生活に大きな影響を及ぼします。
水道やガスが止まっても、水を備蓄したりカセットコンロのボンベを買いおきしたりするなど、ある程度日頃の備えでなんとかなるかもしれません。しかし、停電すると明りが無くなる他、冷蔵庫が使用できなくなります。また、冷暖房が止まり、夏でも冬でも一気に生活環境が悪化します。
無論、テレビ、電話、コンピューターなど情報機器も使えなくなります。携帯電話の充電もできなくなり、情報が遮断されてしまうので、気象情報にアクセスできなくなるばかりか助けを呼ぶことも不可能です。したがって、停電を起こさない、また、万が一起きてもすぐに復旧させることが電力会社の使命といえます。
停電の原因
ではなぜ、停電が起きるのでしょうか。考えられる主な原因は、強風で吹き飛ばされたトタンなどや、土砂崩れによる電柱の倒壊などによる電線の損傷、切断です。
出典)関西電力Twitter @KANDEN_Official
出典)関西電力Twitter @KANDEN_Official
また、海に近い地域では、塩分を含んだ強い潮風が設備に吹きつけます。送電線と鉄塔は、電気が鉄塔に流れないよう、電気を通さない「碍子(がいし)」とよばれる陶磁器(または合成樹脂)製の器具で接続されていますが、その碍子に塩分が吹き付けられると、表面を伝って鉄塔に電気が流れてしまい、停電が発生します。(参考:東京電力)
Photo by おむこさん志望
各電力会社のHPには、停電時にとる行動や家の中での対処法が載っています。その中でも九州電力では、対処法が分かりやすい動画で紹介されています。停電になった時、慌てず行動をするためにも、普段から情報収集をしておくことが大切です。
出典)YouTube:九州電力
停電時の電力会社の復旧作業
それでは、台風時に電力会社は、どのような体制で復旧作業を行っているのでしょうか。台風が多く接近する九州電力の例を見てみましょう。
- 毎年、台風シーズン前に全社的な訓練を実施
- 台風のルートに応じて、全社的な復旧体制を構築
(台風のルートや規模に応じて、九州の他の地域から応援要員を事前に配置) - 台風襲来前に離島などに復旧要員等を派遣
- 台風通過後に速やかに設備を点検し、24時間体制で復旧作業を実施
出典)九州電力Facebook
このように、電力会社は台風が来る前から停電に備えて万全の準備をしていることがわかります。これは何も九州電力に限ったことではありません。あなたの住んでいる地域の一般送配電事業者(注2)なら行っていることです。過去の経験に基づく平時の備え、早い段階の準備が台風などの災害による停電被害を最小限にとどめることにつながっています。
出典)九州電力Facebook
停電時間短縮の取り組み
かつて日本でも停電が今よりもっと多かったと記憶しています。今では目にすることがほとんどありませんが、筆者が子供の頃(昭和30年代)は、停電に備え家に“百目ローソク”(注3)があったものです。
それはともかくその後、電力会社は停電時間をなるべく短くすべく技術開発を重ねてきました。そもそも、日本では設備や系統に余裕を持たせることにより、送電線1回線の事故が次の停電に繋がらないようにしています。2回線が同時に事故を起こした場合でも、「系統安定化システム」というシステムが停電を一部に抑えて大規模停電を防ぎます。
さらに、局所的な配電系統の事故では、停電の事故区間を自動的に検出して切り離し、その後故障区間以外を自動復旧する「配電自動化システム」により停電時間を短縮しています。こうした2重3重の備えが停電時間の大幅な短縮に寄与しているのです。
そしてもうひとつ、日本の安定した電力供給を支えているのが「電力系統監視・制御システム」(注4)です。需給運用と系統運用、それぞれを制御しています。日本の高品質な電力はこうしたテクノロジーに支えられています。
停電時の注意
最後に停電時に注意すべきことを箇条書きにしてみました。
- 暗闇の中では家の中でもむやみに動き回らない。
- ろうそくを使う場合は火災に気を付ける。
- 使用中だった電化製品(アイロン、ドライヤー、電気ヒーター、電気ドリル、ミキサーなど)はプラグを抜いておく。
- 冷蔵庫の中の生ものなどをチェックする。
また、停電時のガスの使用についても注意が必要です。以下を覚えておくと便利でしょう。
停電時に使えるガス器具(100V電源不要)
出典)東京ガス
停電時に使えないガス器具
出典)東京ガス
また、停電中は換気扇が作動しませんので、換気には十分注意してください。また、夜間停電時はガス機器が見えず、操作を誤るおそれがありますので操作に気を付けましょう。
ガス給湯器は停電により給湯の温度やおふろの温度が初期設定値に戻ってしまいます。停電後、最初に使用するときは、設定温度を確認してください。
寒冷地にお住まいの方は、冬場の長時間の停電で給湯器の凍結防止装置が動きません。凍結を防止するために給水元栓を閉め、給湯器の水抜きを行う必要があります。
尚、地震を伴う災害時にはガスメーター(マイコンメーター)(図3)が止まることがあります。(震度5以上)その場合は、注5)「ガスメーターの復帰方法」の手順に従ってください。
出典)中部ガス株式会社
停電で夜間は家の中が真っ暗になります。備えあれば憂いなし。特に台風シーズンは懐中電灯やランタン、災害用ラジオなどを枕元に用意しておくと安心です。なにより、天気予報や災害情報に普段から注意して、突然の停電にも冷静に対処できるようにしたいですね。
- 台風21号による停電(10月25日(水曜日)11:00時点)(出典)経済産業省
北海道電力 復旧済み(ピーク時 2,685件)
東北電力 復旧済み(ピーク時 8,696件)
東京電力 復旧済み(ピーク時 147,200件)
中部電力 340件(ピーク時 47,480件)
関西電力 3,710件(ピーク時 123,850件)
四国電力 100件(ピーク時 23,631件)
中国電力 復旧済み(ピーク時 10,300件)
九州電力 復旧済み(ピーク時 5,500件)
沖縄電力 被害なし - 一般送配電事業者
電気事業法第3条の規定により経済産業大臣の許可を得た事業者。電気事業法改正前の旧一般電気事業者である10電力会社の送電、配電部門にあたる。北海道電力、東北電力、東京電力パワーグリッド、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の10事業者を指す。(2016年4月現在) - 百目蝋燭(ローソク):1本で100匁(もんめ)(約375グラム)ほどもある大きな蝋燭。
百目ローソク(碇型和ろうそく 100匁)
出典)有限会社 中村ローソク - 電力系統監視・制御システム
需給運用と系統運用に分類され、
①需給運用は、変動する需要(負荷)に対し発電機のバランスを制御して安定した周波数を維持するもの。
②系統運用は、発電所で作った電力を需要地まで送る時、適正電圧を維持できるよう電力流通設備を制御するもの。 - ガスメーターの復帰方法(出典)経産省
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