写真)茨城県那珂市に建設された、世界最大級のトカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」全景
出典)国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
- まとめ
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- 海外で核融合の技術開発が進んでいる。
- 日本も「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を策定、2030年代の実証を目指す。
- そのためには、国際協調と人材育成が不可欠。
世界の核融合開発
最近よく聞く、「核融合」。将来の有望なエネルギー源として注目されている。エネフロでも、「『核融合炉』実用化に向け新技術続々(2022.05.17)」や、「核融合、実用化に向け競争激化 マイクロソフトに2028年電力供給も(2023.06.27)」などの記事で、核融合技術の最新情報を伝えてきた。
最近では海外での開発が加速している。
イギリスにある核融合実験炉「欧州合同トーラス(JET:Joint European Torus)」(以下、JET)は今年2月、約0.2mgの燃料から約69MJ(メガジュール)のエネルギーを発生させたと発表した。2022年に同施設が記録した59MJを上回る世界新記録となった。
JETは、核融合反応を起こすために超高温プラズマをリング型の磁場で閉じ込めるトカマク型(注1)の実験炉。日本も参画する、南フランス・マルセイユ近郊に建設中の世界7極(注2)共同核融合プロジェクト「ITER(イーター:International Thermonuclear Experimental Reactor)」の核融合実験炉も同じ方式だ。
一方、強力なレーザーで瞬間的に核融合反応を起こす、レーザー方式(注1)もある。2022年12月には、米ローレンス・リバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)が、レーザー型核融合実験装置で、2.05MJの投入に対し、約1.5倍となる3.15MJを取り出したと発表した。
当たり前ではあるが、投入したエネルギーに対し、生み出されるエネルギーの方が大きくならなければ意味がないわけで、同研究所の成果は世界初の「純増」であることが高く評価された。
中国も核融合の技術開発に力を入れている。2050年代の発電実証に向け、多くの予算を投じ、政府主導で計画を進めている。2023年12月、国営企業25社によるコンソーシアムを設立。核融合の要素技術を獲得するための大規模試験施設群「CRAFT」を2025年に完成させる予定だ。さらに、トカマク型核融合実験炉の建設を2023年に開始しており、2027年に運転開始を見込むなど、技術開発を急ピッチで進めている。 (参考:内閣府「フュージョンエネルギーの早期実現に向けて」)
加速する日本の動き
こうしたなか日本は、核融合エネルギーの早期実現のために、ITER計画と並行して日本と欧州が共同で実施するプロジェクト、JT-60SA計画を進めている。JT-60SAはITERと同じトカマク型の実験装置で、2023年10月には、初めてトカマクプラズマの生成に成功した。
さらに今年6月4日には、科学技術に関する政策方針を示した「統合イノベーション戦略2024」が閣議決定された。
同戦略では、「先端科学技術の戦略的な推進」、「知の基盤(研究力)と人材育成の強化」、「イノベーション・エコシステムの形成」の3つの基軸で引き続き政策を推進していく、としている。
「先端科学技術の戦略的な推進」では、フュージョンエネルギー(核融合エネルギーのこと)を次世代のクリーンエネルギーとして位置づけ、日本の技術・人材の海外流出を防ぎ、我が国のエネルギーを含めた安全保障政策に資するため、「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略(2023年4月14日 統合イノベーション戦略推進会議決定)」に基づく取り組みを加速するという。
そのうえで、世界に先駆けた2030年代の発電実証の達成に向けて工程表を作成するなど、フュージョンエネルギーの早期実現を目指す、としている。
2024年3月に設立された「一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会(J-Fusion)」などの産業界と連携し、国際標準化を戦略的に主導することや、大学間連携・国際連携による体系的な人材育成システムの構築なども盛り込まれた。
核融合の国際的な技術開発は着実に進んではいるものの、まだ実証炉すら稼働していない。日本としては、国内の研究開発を進めると同時に、国際協調を着実に進めることが重要になってくる。そのための人材育成は不可欠だろう。「地上の太陽」が実現するのはいつになるのか。期待をこめてその動きを追っていきたい。
- 核融合反応を起こす方法(主な3つの方式)
出典)文部科学省「核融合研究」
- 7極
日本、欧州、米国、ロシア、中国、韓国、インド
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