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ためになるカモ!?

Vol.53 稲作と養蜂がコラボ「耕蜂連携」とは?

写真)レンゲの花から蜜を採るミツバチ

写真)レンゲの花から蜜を採るミツバチ
提供)志太榛原農林事務所(静岡県)

まとめ
  • 水田でレンゲを育て、緑肥として利用するだけでなくミツバチの蜜源も確保する「耕蜂連携」が静岡県で進められている。
  • 稲作農家と養蜂業者を県がマッチングさせた結果、対象の圃場は昨年度までに合計18.8haに拡大。
  • この取り組みに興味を持つ農家が増えつつある。

レンゲ畑を見たことあるだろうか?畑や田んぼ一面が赤紫色のレンゲで埋め尽くされている風景は、1960年代までいたるところで見ることができたが、今では珍しくなってしまった。

レンゲ農法

写真)レンゲ畑
写真)レンゲ畑

かつて、田畑の休耕時に栽培していたレンゲは、稲など農作物の肥料として役立っていた。

レンゲはマメ科で、根に白いこぶ(根粒)がくっついている。その中にいる根粒菌と呼ばれるバクテリアが大気中の窒素を蓄えている。窒素は作物の成長に欠かせない栄養素なので、レンゲを田畑にすき込んで肥料としていたわけだ。このように肥料として利用する植物を「緑肥(りょくひ)」と呼ぶ。

しかし、化学肥料の普及とともに、このいわゆる「レンゲ農法」は急速に廃れててしまった。

レンゲ畑の減少に影響を受けたのがミツバチだ。

ミツバチにとってレンゲ畑は大事な蜜源だったが、それがなくなることで、レンゲの蜂蜜が採れなくなった。そして安価な海外産蜂蜜に押され、国産の蜂蜜をつくる養蜂業者の数も年々減っている。

一方、世界的な穀物需要の増加やエネルギー価格の上昇に加え、ロシアによるウクライナ侵略の影響により、化学肥料の価格が急騰した。去年から下落傾向にあるものの、円安の影響もあり高止まりしていることから、農家も化学肥料の削減に取り組まねばならない状況になっている。

こうしたなか、昔ながらの農法が改めて注目されている。稲作農家と養蜂業者がタッグを組み、水田でレンゲを育て、ミツバチの蜜源を確保するだけでなく、レンゲを緑肥として利用することで、化学肥料の使用量も減らす。お互いがWin-Winになるこの取り組みは「耕蜂連携」と呼ばれ、静岡県では行政が後押ししている。

静岡の「耕蜂連携」

「耕蜂連携」を進めているのは静岡県の藤枝市にある志太榛原(しだはいばら)農林事務所だ。

具体的にどのように連携するのか。

静岡県 志太榛原農林事務所 生産振興課の井鍋大祐主査に話を聞いた。

まず、

1. 稲作農家が、コメの収穫前後の10月頃にレンゲの播種(はしゅ)注1をおこなう。
2. 養蜂業者はミツバチの巣箱を田んぼ周辺に設置する。翌年の3月から5月、レンゲが花を咲かせ始めたころ、ミツバチが蜜を集める。
3. 養蜂業者がタイミングを見て蜂蜜を採取し、その後、稲作農家がレンゲを田にすき込み、緑肥とする。

という流れだ。

写真)ドローンでレンゲの播種をおこなっている様子
写真)ドローンでレンゲの播種をおこなっている様子

静岡県内の耕蜂連携は、2022年7月に始まったが、同年9月に志太榛原農林事務所が「耕蜂連携マッチング会」を開催した。稲作農家が翌年の4月末までレンゲを開花させておくことや、ミツバチの巣箱置場を提供する代わりに、養蜂業者からレンゲの種を安く提供してもらうことを連携条件とした。

写真)マッチング会の様子
写真)マッチング会の様子
写真)レンゲ畑とミツバチの巣箱
写真)レンゲ畑とミツバチの巣箱

マッチングの1例目として、牧之原市の耕種農家である有限会社山本耕業が、吉田町の収穫直前の水田にレンゲを播種し、同じく牧之原市の河村養蜂場が巣箱を設置し、去年3月下旬から5月上旬にかけてミツバチが集めた「レンゲ蜂蜜」を山本耕業の直売所「こめ香」で販売した。山本耕業は、とれたお米を「レンゲ米」というブランドで販売し、評判は上々だったという。

写真)レンゲ米とレンゲ蜂蜜
写真)レンゲ米とレンゲ蜂蜜
写真)左から、巣枠から蜜を絞る作業、遠心分離機にかける作業、分離した蜂蜜の採取作業
写真)左から、巣枠から蜜を絞る作業、遠心分離機にかける作業、分離した蜂蜜の採取作業

これまでの連携は、初年度の2022年度が藤枝市、焼津市、島田市、吉田町で6件、合計8.9haで実施され、2023年度は浜松市を加えて、合計18.8haにまで拡大した。県が主導してこうした連携を進めるのは珍しいという。志太榛原農林事務所は、耕蜂連携を、今後稲作農家だけでなく、果樹園などに広げていくことも可能だと考えている。

写真)レンゲ圃場で育った水稲
写真)レンゲ圃場で育った水稲

課題

1. レンゲの生育が均一でない圃場(ほじょう)(注2)は栄養状態も均一にならず、お米の生育や品質にばらつきが生じる。

2. 蜂蜜を商業ベースにのせるためには、ある程度まとまったレンゲ畑の面積を確保しなければならない。

を挙げた。

課題1の原因は、レンゲの種を田んぼに撒くときに、どうしてもばらつきがでることだ。その対策として、衛星画像を分析して得られたレンゲの生育状況マップに基づき、施肥を効率的におこなう「可変施肥田植機」を今年度から試験的に使用している。それにより稲の生育も均一になるのだという。

また課題2については、ミツバチは直径2キロメートルくらいの範囲で採蜜するので、その範囲に最低1haくらいの圃場を確保することを目標にしているとのことだった。

写真)志太榛原農林事務所 生産振興課 井鍋大祐主査
写真)志太榛原農林事務所 生産振興課 井鍋大祐主査

反響は想像以上だという。

「いろいろな研修会で耕蜂連携を紹介すると、農家さんが興味を持たれて話を聞きに来ることが増えました。熊本県でも、耕蜂連携の名で取り組みが開始されています」と井鍋氏は話す。

レンゲを育て、蜂を育て、お米をつくる。こうした循環型農業が全国に広がっていくことを期待したい。

  1. 播種
    種をまくこと
  2. 圃場
    農産物を栽培する場所

写真提供:志太榛原農林事務所(静岡県)

安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
・日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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