写真) 「空飛ぶクルマ」のイメージ
出典)経済産業省
- まとめ
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- 三菱地所などが2024年度にも都内で「空飛ぶクルマ」の運行実証へ。
また、25年には大阪・関西万博で運航が予定されている。 - 既存のインフラに依存せず、整備費用が低いことなどから「空の移動革命」と呼ばれる。
- 市場は急拡大すると思われるが、法整備を進め、社会受容性を高めることがカギとなる。
- 三菱地所などが2024年度にも都内で「空飛ぶクルマ」の運行実証へ。
「空飛ぶクルマ」の実用化がいよいよ目前に迫ってきた。エネフロではすでに、3年前(参考記事:空飛ぶタクシー」実現近づく)と2年前(参考記事:「空飛ぶクルマ」発進目前!)で紹介している。
最新の開発状況と今後の課題について見ていきたい。
本格化する「空飛ぶクルマ事業」
三菱地所株式会社、日本航空株式会社、兼松株式会社の3社は、東京都の「都内における空飛ぶクルマを活用したサービスの社会実装を目指すプロジェクト」公募にて、採択されたことを2022年8月4日に発表した。
このプロジェクトは、2024年度に向け、英Skyports社の協力により、空飛ぶクルマ用離着陸場の設置を検討し、当該ポートでの空飛ぶクルマの運航実証および地上オペレーション(離着陸管理・シミュレーション、チェックイン・保安検査、周辺安全管理・監視)の検証をおこなう予定だ。
ポートの候補地としては三菱地所が保有・運営する施設を中心に検討されており、2023年度にはポート間移動などの実証実験がおこなわれる。
2024年度の運航実証は、都内の公共空間で初の空飛ぶクルマ有人飛行となるため、大きな関心が集まっている。
また大阪府も、「空飛ぶクルマ」事業に力を入れている。大阪・関西万博がそのタイミングになる。
大阪府は2025年の大阪・関西万博での空飛ぶクルマの商用運航実現を目指して2020年11月に「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」を設立し、国が取りまとめた「空の移動革命に向けたロードマップ」の工程を踏まえて「大阪版ロードマップ」も作成している。
技術面だけでなく、社会受容性など地域の反応も踏まえたものとなっており、最終目標として空飛ぶクルマが日常的に使われるモビリティになることを目指している。
これらの取り組みは2018年に開催された「空の移動革命に向けた官民協議会」がベースで、2030年の本格普及に向けて経済産業省・国土交通省が制定したロードマップもその指標となっている。まさに国全体で取り組んでいる事業だ。
SkyDrive社は今年7月、官民学共同で、空飛ぶクルマの商用運航の実現に向け、大阪ベイエリアにおいて離発着ポートや飛行航路の実現性検証を開始すると発表した。2023年から24年度にかけて、デモフライトをおこない、2025年の飛行実現につなげる計画だ。
出典)株式会社SkyDrive
空飛ぶクルマとは?
経済産業省が出した『「空の移動革命」に向けた官民協議会』によると、「空飛ぶクルマ」に明確な定義はないが、「電動」「自動」「垂直離陸型」がひとつのイメージだとしている。そのうえで、メリットとして、ヘリコプターや飛行機と比べると:
・部品が少ない⇒整備費用が安い
・動力が電気⇒騒音が小さい
・滑走路が不要⇒地上や低層ビルの屋上などに離発着できる
・自動飛行との親和性が高い⇒操縦士がいらない⇒運航費用が安い
・垂直離着陸⇒点から点へ移動するので既存のインフラに依存しない
・駆動時に温暖化ガスを排出しない
などを挙げている。
機体・運航・インフラにかかるコストが大幅に削減できることや、ヒト、モノの移動がより早くなることから、「空の移動革命」とも呼ばれている。
都市部では渋滞の解消、過疎地では移動手段や観光需要の創出、災害時には既存インフラの復旧を待たない迅速な人命救助・物資支援など、あらゆる場面の活用が期待されている。
期待されている市場規模 世界・日本
「空飛ぶクルマ」の開発は現在世界中でおこなわれており、その規模も大手からベンチャーに至るまでさまざまだ。利活用の幅も広いため、その市場規模も急拡大すると期待されている。
株式会社 矢野経済研究所は空飛ぶクルマの市場規模は、2050年に世界で120兆円を超えると予測している。
出典)株式会社矢野経済研究所「空飛ぶクルマ世界市場に関する調査(2022年)」
(2022年5月19日発表)にもとづきエネフロ編集部作成
注1. 本調査における空飛ぶクルマ市場とは、「電動」「自動(自律)運転」「垂直離着陸が可能」な機能を持つモビリティを対象として、メーカー販売金額ベースで算出した。但し、2030年頃までは「自動(自律)運転」機能を持たない、操縦士が必要なモビリティも含まれる。
注2. すべて予測値
PwCコンサルティング合同会社のリポートによると、日本国内における市場規模も、2030年から2040年にかけて急拡大していくと予測されており、日本経済における影響力は小さくないと思われる。
出典)PwC Japanグループ「“空飛ぶクルマ”の産業形成に向けて」
日本の各メーカーの開発状況
「空飛ぶクルマ」産業には、大企業だけでなくスタートアップ(新興企業)も多く参画している。盛り上がりを見せている日本のメーカーと、その開発状況について紹介する。
(1)スタートアップ
提供)株式会社SkyDrive
「モビリティを通じて次世代に夢を提供する」をミッションに、自動車・航空業界、スタートアップ関係の若手メンバーが中心となって2012年に立ち上げた有志団体CARTIVATORと、そのメンバーを中心に立ち上げた株式会社SkyDriveは2019年6月に愛知県豊田市と協定を結び、同年12月に国内初となる「空飛ぶクルマ」の有人飛行試験を開始し、2020年8月には公開有人飛行試験をおこなった。
SkyDrive社は2021年10月に、「空飛ぶクルマ」の型式証明の申請を国土交通省に申請し受理された。「空飛ぶクルマ」としての受理は日本初であり、またその後も国土交通省と型式証明審査の適用基準を「耐空性審査要領第Ⅱ部(第61改正)」(注1)ベースで構築することについて合意している。
型式証明を申請しているのは2人乗りの「SkyDrive式SD-05型機」で、2025年に事業開始を目指している。
(2)自動車メーカー
一方、自動車メーカーの株式会社SUBARUは官民協議会に参加して、国土交通省・経済産業省・文部科学省といった政府機関とともに「安全性」に着目した開発をおこなっている。同社の源流は、あの零戦のエンジンを製作していた中島飛行機である。
そのSUBARU航空宇宙カンパニーは、ヘリコプターの垂直離陸技術や無人航空機の自動飛行技術、自動車の電動化技術などを融合させて「空飛ぶクルマ」事業に取り組んでいる。同時に、社会的インフラや法的な整備といった課題を実現するために重要となる提携を取りまとめることを最終的な事業領域としている。
出典)経済産業省 空の移動革命に向けた官民協議会『空の移動革命に向けた取り組みについて』
(4)システム構築
『NEC』
NECこと日本電気株式会社は2019年8月に「空飛ぶクルマ」の試作機を開発、NEC我孫子事業場に新設した実験場での浮上実験に成功した。ただしNECは、「空の移動革命に向けた官民協議会」に参画はするものの、機体開発はおこなわなず、移動環境に必要となる交通整理や機体間・地上との通信を支える管理基盤の構築や、サイバーセキュリティ対策などを主な事業領域としていく。
NECは主に、管制技術・無線通信技術やインフラ分野でのサイバーセキュリティ対策に関する知見などを活用し、空飛ぶクルマの移動環境の実現に向けた検討を進めていくとしている。
今後の課題
さて、「空飛ぶクルマ」の実用化には、ハード面もさることながら、ソフト面の整備が重要になってくる。すなわち、あらたな法整備や安全性の検証、通信技術の開発などだ。
現在国が定める「空の移動革命に向けたロードマップ(改訂版)」では「利活用」「環境整備」「技術開発」に分けて官民の取り組み目標が示されている。
「利活用」の観点からは、前述の通り、大阪・関西万博を皮切りに商用運航の開始が想定されており、都市・地方や離島における移動の他に救急面での利用が期待されている。またそれに伴いビジネスの範囲も、航空関連産業から他の産業へと商用化が拡大していくと見ている。
その実現に必要なのが、「環境整備」と「技術開発」だ。
特に今後重要になってくるのは「環境整備」だ。それには、法整備や社会受容性、試験環境の整備などが含まれる。
従来の空のモビリティとは違うため、新たな審査基準が必要になるだろう。迅速かつ安定した法整備が求められる。
そして、「社会受容性」は最大の課題だ。人を乗せて空を飛ぶわけだから、人々が不安に思うのは当然だ。実証を通して安全性をアピールするとともに、大阪・関西万博を通して認知度を高めることが必要だ。「空飛ぶクルマ」のメリットを社会に周知し、日常生活レベルにまで自由な空の移動を実現させることが求められる。
まだまだ課題はたくさんあるが、官民学が協力し、企業同士、得意分野を活かした連携を進め、これらの課題を速やかに解決すれば、「空の移動革命」の実現も一段と加速するに違いない。
- 「耐空性審査要領第Ⅱ部(第61改正)」
耐空性審査要領第II部とは、乗客数が19名以下かつ最大離陸重量8,618kg(19,000ポンド)以下の固定翼機の耐空性要件を定めたもので、最新の第61改正は取り扱う機体の形状や搭載するシステムに自由度を持たせることが出来る最新の審査要領です。この審査要領には、航空機及び装備品の安全性を確保するための強度、構造及び性能についての基準が定められています。
(株式会社SkyDriveプレスリリースより)
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