写真)九州電力(株)八丁原(はっちょうばる)地熱発電所(大分県玖珠郡九重町)
出典)大分県
- まとめ
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- 日本の地熱発電のポテンシャルは高いにもかかわらず、自然公園法などの制約もあり、導入拡大が進まない。
- そうした中、地熱で高温状態の地層にCO₂を圧入し、熱媒体として循環させ発電する「CO₂地熱発電」が注目されている。
- 2050年カーボンニュートラルを達成するために、さらなる技術開発が求められる。
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーの導入拡大に官民一丸となって取り組む中、太陽光発電や風力発電ばかりが取り上げられ、地中から取り出した蒸気でタービンを回し発電する「地熱発電」が話題に上ることは少ない。
一方、日本は「火山大国」。日本の活火山(注1)の数は108もあり、世界の活火山数の約7%を占めている。昼夜を問わず安定して発電ができる純国産再生可能エネルギーである地熱発電の歴史は古く、第1号は1966年に運転を開始した岩手県の松川地熱発電所だ。その後、2度のオイルショックなどもあり、1990年代は増設ラッシュとなる。1995年には総設備容量が54万kWになり、世界第5位の地熱発電大国となった。
しかしその後、石油価格が安定したことや、開発初期費用がかさむこと、また石炭火力よりも割高なことなどから、長い低迷期に入った。ところが2011年、東日本大震災が起きたことから、再生可能エネルギーの導入拡大を図るため固定価格買取制度が始まり、再び地熱発電に陽が当たるようになった。
現在、全国の地熱発電所の発電設備容量はピーク時とほぼ変わらず約59.3万kWにとどまっている。
地熱発電の導入がなかなか進まないのは、生産井の掘削成功率が低く、コストがかかることや、開発のリードタイムが10年以上と長いことに加え、地熱発電所の立地地区が国立公園や温泉などの地域と重なり、国や自治体、地元関係者とさまざまな調整が必要だからだ。
こうした中、政府は今年10月に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」において、2030年のエネルギーミックスで、再生可能エネルギーの比率を36~38%に引き上げた。(そのうち地熱発電は1%)
この目標を達成するために環境省は「地熱開発加速化プラン」を策定、地熱開発プロジェクトを加速化させるために、自然公園法や温泉法の運用の見直しなどを率先しておこない、開発のリードタイムを8年程度に短縮することや60超の地熱施設数を倍増させる計画だ。
こうしたさまざまな政策を推し進めることで、政府は2030年度までに現時点の導入量を最大約2.5倍の148万kWにまで引き上げることを目指す。
従来型の地熱発電
さてここで、地熱発電の仕組みを見てみよう。
地熱発電の仕組みは以下のようにシンプルだ。
1) マグマによって熱せられた地熱貯留層(火力発電所のボイラーにあたる)に井戸(生産井)を掘り、高温・高圧の熱水や蒸気を取り出す。
2) 気水分離器で蒸気と熱水に分離する。
3) 蒸気でタービンを回して発電する。
4) 熱水は還元井を通って再び地中深くに戻される。
というもの。(地熱発電のしくみ | JOGMEC地熱資源情報)による)
地熱発電には、地熱で高温となった熱水や蒸気により直接タービンを回転させる「フラッシュ発電」と、地熱貯留層から生産井を通して取り出した熱水や蒸気を間接的に用いる「バイナリー発電」がある。直接、間接の違いはあるが、熱水や蒸気を用いてタービンを回すという点では同じだ。
しかし、どんなに高温な地熱貯留層が存在しても、熱水量が不十分だとタービンを回す原動力が不足することから、生産井を新たに掘削するコストがかかったり、地熱発電所の設置場所が限られたりする問題があった。その問題に1つの解決策が生まれようとしている。
「CO₂地熱発電」とは?
「CO₂地熱発電」がそれだ。大手ゼネコンの大成建設株式会社と地熱技術開発株式会社が共同で開発している、発想の転換ともいえる技術だ。独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構による地熱発電技術研究開発事業に応募し、採択された。実施期間は2021年度から2025年度の5年間だ。
具体的には、「地熱で高温状態となった地層中にCO₂を圧入し、熱媒体として循環させて発電する」ものだ。「熱水資源に頼らない革新的な地熱発電」である。
また、圧入されたCO₂の一部は、地熱貯留層中に炭酸塩鉱物(注2)などとして固定されるため、カーボンニュートラルへの貢献も期待されている。
このように「CO₂地熱発電」は、世界第3位(2,347万kW)(経済産業省資源エネルギー庁「地熱資源開発の現状について」による)の地熱資源を有する日本において、これまで利用できなかった熱水量不足の地熱貯留層が活用できるという点で期待が大きい。
いずれにしてもこの技術開発は始まったばかりであり、実用化にはまだ時間がかかるだろう。我が国の地熱発電のポテンシャルは高い。太陽光発電や風力発電とは違い、天候に左右されない地熱発電は安定した発電量が得られる点で優れている。
おりしも11月13日、国連の気候変動対策の会議「COP26」が、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力を追求するとした成果文書を採択して閉幕した。
そうした流れの中、日本は2050年カーボンニュートラルを目指しているが、再生可能エネルギーだけで達成は困難だ。火力発電、原子力発電など含め、官民挙げての更なる技術開発が求められるだろう。
- 活火山
「活火山」とは、およそ過去1万年以内に噴火した火山や現在も活発な活動のある火山をいう。 - 炭酸塩鉱物(carbonate mineral)
炭酸イオン(carbonate、CO32−)を含む化合物である炭酸塩からなる鉱物。火成岩・堆積岩・変成岩などに含まれる。現在、CO2を炭酸塩やコンクリート製品などに固定化し、有効利用する技術開発がおこなわれている。
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