写真) 冷凍ケースに入っている食材(イメージ)
出典) 株式会社菱豊フリーズシステムズ
- まとめ
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- 電力事業者と関連協力企業や研究機関、大学などによる研究成果の紹介、「テクノフェア2020」が開催。
- 今回は「現場の課題解決」をテーマに、電力事業者と関連協力企業が共同開発した最新機器を紹介。
- 短時間で美味しく解凍できる自動解凍機や、超コンパクト化を実現したハイブリッド熱処理炉など。
電力事業者は、現代社会において欠かすことのできないエネルギーを安全に、そして安定的に社会に届けるために、日々研究と技術開発に取り組んでいる。今年も、電力事業者と関連協力企業や研究機関、大学などによる研究成果の紹介「テクノフェア2020」(主催:中部電力株式会社技術開発本部)が開催された。今年は新型コロナ感染症拡大もあり、ホームページ上でのWEB展示会がメインとなった。編集部が特に興味を持った展示コンテンツの一部を紹介する。
短時間で美味しく解凍、自動解凍機!
冷凍されている食材は長期保存でき、とても便利な反面、「解凍に時間がかかる」「解凍の際に風味が落ちてしまう」などの悩みがつきない。今回、そんな悩みを解消すべく開発された商品を紹介する。
冷凍食材は、急激に温めて解凍すると細胞からうまみ成分が抜け出してしまうため、品質が劣化し味が落ちる。そのため、従来は冷蔵庫で時間をかけて解凍する「冷蔵庫解凍」が一般的だった。しかし、飲食店や給食センター、スーパーなどでは、大量の食品を短時間で、なおかつ品質を落とすことなく解凍したい、というニーズが強かった。
出典) エネフロ 編集部
そこで、中部電力株式会社と株式会社菱豊フリーズシステムズは、冷凍食材を短時間でおいしく解凍できる自動解凍機 「Sassa(サッサ)」を共同開発した。
出典) 中部電力株式会社
自動解凍機「Sassa」の特徴
1 短時間解凍
何といってもSassaの特徴の1番目は「時短」だ。従来の冷凍庫解凍と比較して解凍時間が6分の1に短縮された。大量の食材を解凍しなくてはいけない給食センターやレストランにとっては福音だ。
2 解凍ムラを解消
Sassaの特徴の2つ目は「解凍ムラ」の解消だ。
従来の解凍機は、中央に配置した食材と端に配置した食材とで解凍速度に差があり、解凍にムラができていた。それを解消したのが、「ミスト気流循環」技術。これにより、解凍機のどの場所に食材を配置した場合でもムラのない解凍ができるようになった。
出典) 中部電力株式会社
3 簡単な操作・温度管理
3番目は「操作性の向上」だ。Sassaは、温度履歴の記録を自動でおこなったり、しっかりと解凍できているか確かめるために、食材の中心温度をモニターで監視する機能がある。このため、初心者でも簡単に操作・温度管理ができる。これらの機能はHACCP(Hazard Analysis Critical Contro Point)という、食品衛生法を基準とした食品の安全性を高めるための衛生管理に対応している。
4 入替作業の効率化
4番目が「作業の効率化」だ。業務用解凍機の中から大量の食品を出し入れするのは大人でもかなりの重労働だが、Sassaは食品の出し入れをキャスターごとおこなえるため、入れ替え作業の手間が大幅に減り、作業時間の短縮につながった。
出典) 中部電力株式会社
コンパクト化と省エネを実現!ハイブリッド熱処理炉
「熱処理」という言葉を初めて聞く人もいるかもしれない。「熱処理」とは、材料を加熱・冷却して、強度などの性質を向上させる技術で、身の回りの多くのものに施されている。例えば、ソファーやベッドに使用されているバネは弾性や強度をあげるために熱処理がおこなわれているし、他にも工具類や車の部品など、多くの金属製品が製造工程の中で熱処理されている。
熱処理は熱処理炉というガスなどを熱源とする大型の装置でおこなわれる。従来の熱処理炉は生産品種や量の変動に対応するのが困難だったことに加え、多くのエネルギーを使うものが多かった。そこで、多品種少量生産に柔軟に対応できること、省エネルギーであること、の2点を両立した熱処理炉の開発が求められていた。
今回、中部電力株式会社と株式会社エコムは、昨年10月に開発したコンパクトモジュール型ハイブリッド熱処理炉「EC Hybrid Ⅰ」の改良版となる省エネルギーとコンパクト化を実現した、超コンパクトモジュール型ハイブリッド熱処理炉「EC Hybrid Ⅱ」(以下、EC Hybrid Ⅱ)を共同で開発した。
EC Hybrid Ⅱの特徴
1 世界最小クラスのコンパクト化
一番の特徴は「コンパクト化」だ。熱交換器とガスバーナを一体化した「排熱回収バーナ」を新たに取り入れたことや制御盤と燃焼系の計器・バルブを同一面から監視、点検できるよう配置を最適化し、連結コンベアを無くしたことで、従来モデルと比較して、なんと7割のコンパクト化を実現した。コンパクト化によって工場の省スペースにも繋がる。
出典) 中部電力株式会社
出典) 中部電力株式会社
出典) 中部電力株式会社
2 6割の省エネルギー
2番目の特徴は「省エネ」だ。従来の熱処理炉は、ガスを熱源とした大型なものが一般的だった。しかしそうした炉では、低温処理の過程において、温度調整のために大量の排気と吸気が必要となり、多くのエネルギーロスが発生していたのだ。
EC Hybrid Ⅱはガスと電気の両方の熱源を備えている。高出力で急速に加熱できるガスバーナと、温度設定を高精度に行う電気ヒータを使い分けるハイブリッド化により、6割の省エネルギー(従来モデル比)を実現した。
出典) 中部電力株式会社
3 昇温時間の短縮
3番目の特徴は「昇温時間短縮」だ。昇温時間というのは、熱処理をおこなう際に、設定した温度に到達するまでの時間を表す。EC Hybrid Ⅱは、590℃までの高温熱風による循環加熱が可能で、昇温時間を4割短縮した(従来モデル比)。処理時間の短縮により、工場の生産量の向上にもつながるなどのメリットがある。
出典) 中部電力株式会社
4 デマンドレスポンスに対応
4番目の特徴は「デマンドレスポンス対応」だ。「デマンドレスポンス(Demand Response)」とは、電気の需要(消費)と供給(発電)のバランスをとるために、需要家側の電力を制御することをいう。「需要応答」と訳される。例えば、夏場猛暑の日に電力需給が逼迫しそうになったとき、要請を受けた需要家が電力消費を削減する手法(=下げDR)などを指す。
初号機となる「EC Hybrid Ⅰ」はガスから電気のみの切り替えしかできなかったが、改良版である「EC Hybrid Ⅱ」は熱処理の操業中でも、熱源となる電気・ガスの「相互切り替え」が可能になった。そのため、デマンドレスポンスに対応することが可能になったわけだ。
出典) 中部電力株式会社
このように電力事業者は、関連会社とともに環境に優しい技術の開発に取り組んでいる。次回も「テクノフェア2020」から最新技術を紹介したい。
なお、「テクノフェア2020 WEB展示会」は、12月18日まで開催中。
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