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編集長展望

Vol.25 若手社員に聞いた「ウィズコロナ時代の働き方とエネルギーについての意識」(エネルギー編)

画像) pixabay

まとめ
  • エネルギー自給率やエネルギー政策に関する認知度向上が課題。
  • 火力発電の割合を減らし再生可能エネルギーを増やすべきとする意見が多数派。
  • レジ袋有料化に賛成な人は9割近く。環境問題への関心は高い。

エネフロ編集部は「ウィズコロナ時代の働き方とエネルギーについての意識」を知るため、若手社員(新入社員~入社5年目)を対象に、オンライン上でアンケートを行った。前編「働き方編」に続き、今回は、「エネルギー編」を掲載する。

7月1日から、プラスチックごみ削減を目的にレジ袋が有料化されたことは記憶に新しい。今の若い世代はエネルギー問題や環境問題についてどのような考えを持っているのだろうか。

【アンケートの目的】
若い世代が日本のエネルギーの現状に対してどれほど関心を持っているのか、またエネルギー問題や環境問題に対してどのような考えを持っているのか明らかにする。

【アンケート概要】
対象者:新入社員~入社5年目までの若手社員
実施期間:2020年7月23日〜9月16日
実施方法:Webアンケート
回答者数:51名

【アンケート内容】
日本のエネルギー事情、2030年度の電源構成の方針について知っているか聞いたあと、石炭火力、原子力、再生可能エネルギーに対する意見を回答してもらった。
また、レジ袋有料化に対する意見、プラスチックごみ削減のために日常生活で何か取り組みを行っているか回答してもらった。

【アンケート結果】
以下、アンケート回答より全体傾向の分かる質問・回答項目を抜粋してまとめる。全質問項目ついては末尾の質問項目一覧参照。

1. 日本のエネルギー政策について

日本は石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料に乏しく、エネルギー資源の大半を輸入に頼っている。経済産業省・資源エネルギー庁によれば、日本のエネルギー自給率は11.8%と先進国の中では最低レベルだ。

このことについて「知っている」と回答したのは37.3%で、62.7%は「知らない」と回答した。

Q9 エネルギー資源に乏しい日本のエネルギー自給率は約1割(11.8%※)にとどまっていることを知っていましたか?

日本は2030年度の電源構成(エネルギーミックス)として、LNG(液化天然ガス)火力27%程度、石炭火力26%程度、再生可能エネルギー22〜24%程度、 原子力20〜22%程度、石油火力3%程度を実現することを目指している。

この方針について知っているか聞いたところ、知っていると回答したのは全体の25.5%に留まった。

Q10 今日本は2030年度の電源構成として、LNG火力27%程度、石炭火力26%程度、再生可能エネルギー22〜24%程度、 原子力20〜22%程度、石油火力3%程度を目指していることを知っていましたか?

日本のエネルギー事情や国が掲げるエネルギー政策の方針について、社会全体に周知できていない現状が浮き彫りになった。

2. エネルギー源について

次に、それぞれのエネルギー源に注目して見てみよう。

石炭は、資源量が豊富で価格が低い一方、石油やLNGと比べ、CO2排出量が多いため環境負荷が大きい。そのため欧州を中心に「脱石炭」に向けた動きが進んでいるが、日本は福島第一原子力発電所の事故以来、原子力発電への依存度が減少し、電源構成の約30%を石炭に頼っている状況だ。そうしたことから、日本は脱石炭に消極的だと国際社会から見られている。

この現状を踏まえ今回、2030年に向け、石炭火力発電は国の目標より減らすべきかどうか聞いたところ、約3分の2が「できるだけ減らすべき」だと回答した。

Q11 今世界ではCO2排出量が相対的に多い石炭火力発電に対する見方が厳しくなっています。石炭火力発電は減らすべき?

また「できるだけ減らすべき」と回答した人には、減らした代わりのエネルギー源としてふさわしいものを選択してもらった。8割以上の人は再生可能エネルギーが代替としてふさわしい、と回答し、次に原子力、LNGが続いた。多くの人が環境に配慮した発電方法に転換すべきだと考えているようだ。

Q12 Q11で①と答えた方。石炭火力を減らした分、何で補いますか?

3. 石炭火力について

日本では、電力会社の企業努力によって高効率で環境に配慮した石炭火力発電も増えている。

こうした石炭火力に関する意見を聞いたところ、58.8%が「引き続き高効率化は進めるが、段階的に石炭火力は減らしていくべき」、35.3%が「引き続き高効率化を進め、一定の割合で石炭火力発電は維持すべき」と回答した。「石炭火力はすぐに減らしていくべき」と回答したのは全体の5.9%に留まっており、大多数の人は何らかの形で高性能の石炭火力発電を活用すべきとしている。

Q14 日本では高効率で環境に配慮した石炭火力発電も企業努力で増えています。そうした石炭火力についてはどう思いますか?
写真) 大崎上島から見る大崎クールジェンの石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)プラント
大崎上島から見る大崎クールジェンの石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)プラント

出典) 大崎クールジェン

4. 原子力発電について

次に原子力発電について意見を聞いた。原子力発電は発電時に、CO2を排出しないほか、安価で大量の電力を供給できる。しかし、現在営業運転している原子力発電所は9基に止まっている。(経済産業省資源エネルギー庁による)

原子力発電所の再稼働を進めるべきかという問いに対して「原子力規制委員会が新規制基準を満たしたと判断した順に再稼働すべき」、「上記に加え、地元が容認したら再稼働すべき」と回答したのは合わせて60.8%だった。

「再稼働すべきではない」と回答したのは39.2%だった。再稼働容認派が優勢ではあるが、再稼働に慎重な意見も多い。まだまだ議論が必要な問題になりそうだ。

Q15 日本では原子力発電所の再稼働が進んでいません。原子力発電所の再稼働は進めるべき?

5. 再生可能エネルギーについて

再生可能エネルギーは発電時にCO2を排出しないこと、またエネルギー源が半永久的になくならないことから、注目を集めている。しかし、発電コストが国際比較で高めであることや、発電量が天候に左右される点、系統連係問題(注1)など、課題も多い。

国は2030年までに再生可能エネルギーの比率を現在の16%から22~24%に増やすことを目指している。

この数字について聞いたところ「もっと増やすべき」が54.9%、「妥当だと思う」が43.1%だった。

Q16 2030年、再エネ比率22%~24%をどう思いますか?

「もっと増やすべき」と回答した人に、再生可能エネルギーの中でどのエネルギー源を増やすべきか聞いた。最も多かったのは「太陽光」で37.9%、次いで「バイオマス」13.8%、「水力」6.9%だった。

Q17 Q16で①と答えた人、どれを増やしますか?
写真) 太陽光発電所(イメージ)
太陽光発電所(イメージ)

出典) Michigan Environmental Council

日本では現在、再生可能エネルギーで発電された電力を電力会社が国の定めた価格で一定期間買い取ること義務付ける「固定価格買取制度」を導入している。この制度によって電力の買取りに要した費用は、毎月の電気料金に加えられる「再生可能エネルギー発電促進賦課金」(以下、再エネ賦課金)でまかなわれている。

この「再エネ賦課金」について知っているかどうか聞いたところ、21.6%が「知っていた」、78.4%が「知らなかった」と回答した。冒頭の質問と同様、エネルギー政策が社会に広く周知されていないことが明らかになった。

Q19 固定価格買取制度の下、全ての需要家は再エネ賦課金を負担しています。知っていましたか?

今後再生可能エネルギーによる発電量の増加が見込まれるが、それに伴い再エネ賦課金も増加すると考えられる。そこで、どの程度までだったら負担するか回答してもらった。

Q20 再エネ賦課金は再エネ導入量を増やしていくために今後も増えることが予想されます。どの程度までだったら負担しますか?

8割以上が「電気料金の10%程度」と回答した。電気料金の値上がりは生活に直結するだけに、負担は最小限に抑えたい人が多いようだ。

6. プラスチックごみ問題について

最後にプラスチックごみ問題について聞いた。プラスチックごみ問題に関心があるか回答してもらったところ、8割が「ある」と回答するなど、関心の高さが伺える。

Q21 プラスチックごみ問題に関心はありますか?
写真) プラスチックゴミ
写真) プラスチックゴミ

出典) United Nations Development Programme in Europe and CIS

レジ袋有料化に対して賛成か反対か聞いたところ、「賛成」と回答した人は88.2%、「反対」と回答した人は11.8%だった。関心の高さに比例してか、大半の人がレジ袋有料化について肯定的なようだ。

Q22 レジ袋有料化は賛成ですか、反対ですか?

レジ袋の有料化はいくらまで許容できるが聞いたところ、現在多くの店舗でレジ袋は3~5円で販売されていることからか、「10円以内」が62.7%と最も多かった。一方、「30円以内」と回答したのは17.6%、「50円以内」は3.9%、「100円以内」は3.9%、「100円以上でも構わない」は11.8%で、約4割の人はレジ袋が今より高額でも良いと考えているようだ。

Q23 レジ袋有料化、幾らまで許容できますか?

プラスチックごみ削減のために、日常生活で何か取り組みを行っているか聞いたところ、60.8%が「マイバックを持ち歩く」、17.6%が「ペットボトルを買わず水筒を持ち歩く」を選択した。「その他」と回答した人からは「マイストローを持ち歩く」「プラスチックを使用した製品の買い控え」などの記述があった。

「何もしてない」と回答した人は13.7%に留まっており、何らかの形でプラスチックごみの削減に貢献している人が多いようだ。

Q24 プラスチックごみ削減の為に普段使っているものを見直していますか?

7. まとめ

日本のエネルギー事情やエネルギー政策の認知度に関する質問は「知らない」と回答する人が半分以上を占めており、いかに社会に周知するかが課題となっていることが明らかになった。

一方で、化石燃料に依存した電源構成から脱却し再生可能エネルギーの割合を増やすべきという意見や、レジ袋有料化に賛成する意見が多数を占めたことから、環境に配慮した生活を送るべきだという人が増えていることが伺える。

  1. 系統連係問題
    太陽光や風力発電など再生可能エネルギー由来の電源が日本の電力系統に大量に入ってくることで、エリア全体の需給バランスの制約と送電容量に制約が生じる問題。

アンケート質問項目

Q9 エネルギー資源に乏しい日本のエネルギー自給率は約1割(11.8%※)にとどまっていることを知っていましたか?【出典】経済産業省「2018年度エネルギー需給実績を取りまとめました(確報)」
https://www.meti.go.jp/press/2020/04/20200414002/20200414002.html

①はい
②いいえ

Q10 今日本は2030年度の電源構成として、LNG火力27%程度、石炭火力26%程度、再生可能エネルギー22〜24%程度、 原子力20〜22%程度、石油火力3%程度を目指していることを知っていましたか?
①はい
②いいえ

Q11 今世界ではCO2排出量が相対的に多い石炭火力発電に対する見方が厳しくなっています。石炭火力発電は減らすべき?(参考:化石燃料の価格は石炭<LNG<石油)
①できるだけ減らすべき
②26%程度で妥当だと思う
③もっと増やすべき

Q12 Q11で①と答えた方。石炭火力を減らした分、何で補いますか?
①再エネ
②原子力
③LNG火力
④石油火力

Q13 Q11で③と答えた方。石炭火力を増やした分、何を減らしますか? ①再エネ
②原子力
③LNG火力
④石油火力

Q14 日本では高効率で環境に配慮した石炭火力発電も企業努力で増えています。そうした石炭火力についてはどう思いますか?
①引き続き高効率化を進め、一定の割合で石炭火力発電は維持すべき
②引き続き高効率化は進めるが、段階的に石炭火力は減らしていくべき
③石炭火力はすぐに減らしていくべき

Q15 日本では原子力発電所の再稼働が進んでいません。原子力発電所の再稼働は進めるべき?
①原子力規制委員会が新規制基準を満たしたと判断した順に再稼働すべき
②上記①に加え、地元が容認したら再稼働すべき
③再稼働すべきではない

Q16 2030年、再エネ比率22%~24%をどう思いますか?
①もっと増やすべき
②妥当だと思う
③もっと減らすべき

Q17 Q16で①と答えた人、どれを増やしますか?
①水力
②バイオマス
③地熱
④太陽光
⑤風力
⑥全部

Q18 Q16で③と答えた人。減らした分は何で補いますか?
①原子力
②LNG火力
③石油火力
④石炭火力

Q19 固定価格買取制度の下、全ての需要家は再エネ賦課金を負担しています。知っていましたか?
①知っていた
②知らなかった

Q20 再エネ賦課金は再エネ導入量を増やしていくために今後も増えることが予想されます。どの程度までだったら負担しますか?
①電気料金の10%程度
②同上 30%程度まで
③同上 50%程度まで
④同上 50%以上

Q21 プラスチックごみ問題に関心はありますか?
①はい
②いいえ

Q22 レジ袋有料化は賛成ですか、反対ですか?
①賛成
②反対

Q23 レジ袋有料化、幾らまで許容できますか?
①10円以内
②30円以内
③50円以内
④100円以内
⑤100円以上でも構わない

Q24 プラスチックごみ削減の為に普段使っているものを見直していますか?
①何もしていない
②マイバッグを持ち歩く
③ペットボトルを買わず水筒を持ち歩く
④その他

Q25 Q24で④その他を選んだ方は、取り組みを自由にお答えください

安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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