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出典) Pexels
- まとめ
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- 7月14日は「ひまわりの日」。ヒマワリは常に太陽を向いている。
- 可動パネルで多くの光を吸収する「追尾型太陽光パネル」開発。
- 農業と太陽光発電を両立させる「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」も普及し始めた。
今日は何の日?
今日7月14日は何の日かご存じだろうか。今日は「ひまわりの日」。日本初の静止気象衛星「ひまわり1号」が1977年の今日、アメリカのケネディ宇宙センターから打ち上げられたことにちなんで付けられた。
出典) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
気象衛星に付けられた「ひまわり」の名前は、言うまでもなく、植物のヒマワリにちなんでいる。常に太陽を向いているヒマワリのように、気象衛星も常に地球を向いていることから名づけられた。
常に太陽を向くヒマワリ
「ヒマワリ」の語源は諸説あるが、太陽の方向を追うように動くことに由来する、という説が有力だ。成長に必要な太陽光を少しでも多く獲得するため、ヒマワリが編み出した生存術だと言われている。
出典) pexels
では、どのような仕組みでヒマワリは常に太陽の方向を向いているだろうか。一般社団法人 日本植物生理学会によると、ヒマワリの茎に含まれる「オーキシン」という成長ホルモンが強く影響しているという。このホルモンは光が当たらないと濃度が上昇する特徴があり、太陽が当たらない側の茎の部分ではオーキシンの濃度が上がるために成長が促進される。そうすると、太陽が当たる側と当たらない側の茎の長さに差が生じ、自然と茎は太陽の方角を向くようになるのだ。
多くの人はヒマワリの花が太陽を追って動くと考えているようだが、実際に太陽を追って動くのは、最も成長が進むつぼみの時だけである。
つぼみが開くと、茎の成長は止まって次第に硬くなり、花は決まった方向を向くようになる。このように、生物が栄養を得るために太陽を追う性質は「屈光性」と言われ、植物や菌類を中心に観察できる。
ヒマワリの生存術を応用した発電
このヒマワリの性質は、近年太陽光発電にも取り入れられている。一般的な太陽光発電は太陽光パネルが固定されているため、時間帯によって発電量のばらつきが出ることが課題だった。
そこで、新たに開発されたのが「追尾型太陽光パネル」だ。日の出から日没まで太陽の位置に合わせて太陽光パネルを動かすことで、より多くの光を吸収し、より効率的に電力を生み出せる。
このように生物が持つ優れた機能や構造を製品に応用することは「バイオミミクリー(biomimicry)」と呼ばれ、近年様々な産業で導入されている。
オーストラリアで生まれたスマート太陽光パネル「Smartflower」を見てみよう。その名の通り、花をモチーフにした可愛らしいデザインで、12枚の花びら型の太陽光パネルが取り付けられている。
日の出から日没まで、常に太陽に対して90度の角度で傾くよう、太陽の動きに合わせて向きを変えることで、従来の太陽光パネルより発電効率を40%向上させた。(同社調べ)
「Smartflower」は小型の家庭用パネルと大型の産業用パネルの2種類が販売されているが、家庭用パネルは、少しの敷地で設置が可能なうえ、数時間の工事で済む手軽さを売りにしている。
出典) Facebook;@smartflowersolar
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)
日本にも、太陽光を追尾する太陽光発電システムがある。
太陽光発電システム施工・販売を手がける「フジプレアム株式会社」は毎日変化する太陽の経路を自動算出、自動追尾する「トラッキングシステム」を開発した。特に朝や夕方の発電効率が上がり、従来の太陽光パネルに比べ約1.4~1.5倍発電量を増加させた。(同社調べ)
さらに太陽光パネルに支柱を取り付け、設置面積の最小化を実現したことで、新しいスタイルの太陽光発電が可能になった。
その一つが、農地の上に太陽光パネルを設置し、農業と太陽光発電を両立させる「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」だ。
出典) 農林水産省
従来の農業収入に加えて、新たに売電収入が得られることから、農家の経営状況を改善し、農業の衰退を食い止めることができると、農林水産省でも取組みの支援が行われている。
しかし、太陽光パネルを設置することで、日当たりが悪化してしまうという課題もある。
千葉大学倉阪研究室とNPO法人地域持続研究所が、全国の農業委員会を対象に行った調査によれば、ソーラーシェアリングのための農地転用許可件数は4年間で6.2倍に増えている一方、栽培される作物がミョウガやシイタケなど、日陰でも生育するものに限定されている。太陽光パネルを設置すると、大型の農業機械が使えなくなってしまうこともあった。
この課題を解決すると注目されているのが、営農型の追尾型太陽光パネルだ。
営農型太陽光発電のコンサルティング・開発を手掛ける「ノータス株式会社」は、イタリアで開発された3次元追尾式太陽光発電装置を利用した、日本初の営農型太陽光発電専用架台「ノータス架台」の実証実験プラントを滋賀県竜王町に完成させた。
出典) ノータス株式会社
現在導入されている追尾型太陽光パネルは2軸で動くものが多く、日本で3次元型の追尾式太陽光が導入されるのは初めてだという。
この太陽光パネルは営農に特化し、大型の農耕機械も利用できる高さを確保している。さらに、太陽光パネルの影で農作物の発育に影響が出た場合は、太陽光パネルを駆動して角度を変えることで、影の面積を最小限にする。これにより、作物を限定することなく、ソーラーシェアリングが可能になるとしている。
脱炭素社会の実現に向けて
2020年1月、政府は脱炭素社会の実現に向けた「革新的環境イノベーション戦略」を策定した。そこでは、再生可能エネルギーを主力電源に転換させる方針を打ち出し、「設置場所の制約を克服する柔軟・軽量・高効率な太陽光発電の実現」を掲げている。ヒマワリから着想を得た追尾型太陽光パネルや、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)はその1つの解となるだろう。
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