画像) 四日市バイオマス発電所
出典) 中部電力
- まとめ
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- バイオマス発電に環境貢献や地域振興などから期待が集まる。
- 各地で大規模バイオマス発電所が増えている。
- 燃料資源の運搬体制を整える等の課題もある。
再エネの中のバイオマス
再生可能エネルギー(再エネ)といえば、まず太陽光発電や風力発電や水力発電を思い浮かべるだろう。しかし、再エネには他にも地熱発電やバイオマス発電などがある。
バイオマス(biomass)とは、動植物などから生まれた生物資源の総称だ。バイオマス発電は、この生物資源を「直接燃焼」したり「ガス化」したりして発電する。
バイオマスは、乾燥系、湿潤系、その他に分けられ、それぞれに木質系、農業・畜産・水産系、環境廃材系家畜系などがある。下の図を見ると分かるように、あらゆるバイオマス(生物資源)が燃料になる。
出典) 資源エネルギー庁
バイオマス発電の長所
バイオマス発電には様々なメリットがある。
1.安定的な供給が可能
バイオマス発電は比較的自然環境に影響されにくい。日照に左右される太陽光発電や、風況頼りの風力発電などに比べ、資源さえあれば安定的な発電が可能だ。
2.地域経済を活性化
地域のバイオマス資源を活用することで、地場産業の振興や、エネルギーの地産地消に繋がる。ゴミ処理場の近くに発電所を併設したりすれば、ゴミを地域のエネルギー源として再利用することが可能だ。雇用の創出も期待でき、地域経済が活性化する。
3.地球温暖化対策に貢献
バイオマスの燃焼で排出されるCO2は、もともと大気から森林に吸収されたCO2である。バイオマスが化石燃料の代替として使われれば、CO2の排出の削減につながり、温暖化対策に直接的に貢献することにつながる。こうした考え方をカーボン・ニュートラルという。
4.環境の改善に貢献
バイオマスは、家畜の排泄物や生ゴミなど、廃棄されていたものを燃料として活用できるため、地域の環境改善に貢献できる。
5.循環型社会の構築に貢献
また、農山漁村に存在するバイオマス資源を再利用し、その減少に寄与するので、いわゆる循環型社会を構築することにもつながる。
バイオマスの課題
注目されているバイオマス発電だが、電力事業者らにとっていくつか課題もある。
1.コストが高い
木質バイオマス発電は、木材を効率よく燃焼させるために乾燥させ、チップやペレットにする必要があるため、コストが高い。
また、バイオマスを調達する業者に取って、木質チップや家庭ゴミなどは幅広い地域に分散しているため、収集や運搬、管理などに高いコストがかかることが課題だ。調達可能な資源量の把握や運搬体制の整備、販路の確保などの体制を整える必要がある。
出典) Lignum Group
出典) D-kuru
2.エネルギー変換効率が低い
木質バイオマス発電はエネルギー変換効率が約30%と低い。ボイラーで生成した蒸気を分岐して発電と熱利用に用いる「熱電併給」なら、分岐した蒸気を木材乾燥などに活用することで、発電効率と熱効率を併せて60%くらいの効率とすることが可能だといわれている。(参考:林野庁)
3.木材資源の取り合いが起きる
固定価格買い取り制度は再エネの導入量を増やすために作られたので、買い取り価格は当然高く設定されている。そのため本来、発電以外の用途に使われる木材が、燃料に使われてしまう可能性が出てきた。
これらの課題の解決が望まれている。
バイオマス発電の現状
長年日本では、間伐などで伐り倒されたまま山に放置されている、いわゆる未利用間伐材が多く発生していたが、2012年から始まった固定価格買取制度が追い風となり、未利用木質バイオマス利用量は急成長している。平成23年(2011年)から平成28年(2016年)までの5年間で、実に7倍近くに増えている。
実際、バイオマス発電所は全国に拡がっている。最近では、設備規模が50,000kW級のものも少なくない。いくつか紹介する。
・紋別バイオマス発電所
所在地: 北海道紋別市
発電出力: 50,000kW
運転開始日: 2016年12月1日
出典) 紋別バイオマス発電株式会社
・サミット酒田バイオマス発電所
所在地: 山形県酒田市
発電出力: 50,000kW
運転開始日: 2018年8月23日
出典) サミット酒田パワー株式会社
・イーレックスニューエナジー佐伯発電所
所在地: 大分県佐伯市
発電出力: 50,000kW
運転開始日: 2016年11月18日
出典) イーレックス株式会社
四日市バイオマス発電所
そうした中2020年5月8日、中部電力株式会社は四日市バイオマス発電所の商業運転開始を発表した。こちらも国内最大級の発電出力49,000kWを誇る。想定年間発電量は約3.8億kWhで一般家庭約12万世帯分に相当する。CO2削減効果は年間約15万トンを見込んでいる。
これまで、碧南火力発電所(愛知県、株式会社JERA所有)などで、石炭と木質ペレットの混焼発電を行っている他、グループ会社の中部プラントサービスの多気バイオパワー(三重県)があるが、木質専焼のバイオマス発電所としては中部電力初だ。
出所) 株式会社中部プラントサービス
中部電力は低炭素社会の実現に向け、2030年度までに再生可能エネルギーの割合を中部地域の電力需要の約2割まで高める計画で、「2030年頃に200万kW以上の新規開発」を目標に掲げている。
出所) 中部電力アニュアルレポート
今後も水力、陸上風力、バイオマスに加え、洋上風力や地熱など、更に再エネ電源開発を進めるとしている。再エネの潮流をこれからも紹介していきたい。
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