
出典) pixabay: paseidon
- まとめ
-
- 若者を対象に、「日本の重要課題」について意識調査を実施。
- TOPは「社会保障・公共事業」、2位は「経済・金融」。
- 若者の政治的関心の向上、よりオープンでわかりやすい情報開示が必要である。
時はまさに新年度。本来なら多くの新入社員が初々しいスーツ姿で街を闊歩する姿が見られるはずだった。しかし、年明けから世界各国に広がった新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの企業が入社式を取り止めるか、オンラインでの実施に切り替えたため、彼らの姿を見かけることはあまりない。
そうした中、今後未来を担っていく大学生が、何を日本の最重要課題と認識しているのか聞いてみることは、これからの日本の針路を考えるうえで重要であろう。エネフロ編集部は現役大学生(2年~4年・大学院生含む)を対象に緊急アンケートをオンラインで行った。
アンケートの目的
現在の日本が抱える課題について、大学生の意見や価値観を聞く。
アンケート概要
対象者 : 令和2年3月時点で大学 2年〜大学院生(一部例外あり)
実施期間 : 2020年3月19日〜31日
回答者数 : 52名
(2年生15名、3年生25名、4年生8名、大学院生1名、その他4名)
男女比率 : 1:1 (男性26名、女性26名)
アンケート内容:
以下のカテゴリーから現在の日本の重要課題1位〜3位を選択してもらった。1位、2位、3位をそれぞれ、3、2、1ポイントとしてカテゴリーをランク付けした。
(1) 経済・金融(景気対策・経済成長、財政健全化など)
(2) 外交・防衛・安全保障(領土問題・拉致問題・自衛隊、憲法改正など)
(3) 社会保障・公共事業(所得格差・教育格差・少子高齢化、社会保障費など)
(4) 産業・科学技術(技術革新・情報化社会など)
(5) 警察・司法(冤罪・人質司法など)
(6) 環境・エネルギー(再エネ導入、火力発電所の継続、原子力発電所再稼働、など)
(7) 自然災害・感染症(防災・被災者支援、感染症対策など)
(8) その他
アンケート結果
結果は以下のグラフの通りである。

図) エネフロ編集部作成
今の日本にとって重要課題は?
順位 | 項目 | 割合 | ポイント |
---|---|---|---|
1 | 社会保障・公共事業 (所得格差・教育格差・少子高齢化、社会保障費など) |
32.1% | 100 |
2 | 経済・金融 (景気対策・経済成長、財政健全化など) |
30.4% | 95 |
3 | 自然災害・感染症 (防災・被災者支援、感染症対策など) |
15.7% | 49 |
4 | 外交・防衛・安全保障 (領土問題・拉致問題・自衛隊、憲法改正など) |
12.2% | 38 |
5 | 産業・科学技術 (技術革新・情報化社会など) |
6.4% | 20 |
6 | 環境・エネルギー (再エネ導入、火力発電所継続、原子力発電所再稼働など) |
2.6% | 8 |
7 | 警察・司法 (冤罪・人質司法など) |
0.6% | 2 |
8 | その他 | 0.0% | 0 |
重要課題として一番ポイントが高かったのは、「社会保障・公共事業」(32.1%)、2番目は、「経済・金融」(30.4%)となった。
意外なことに、現在世界を襲っている新型コロナウイルス感染症対策を含む、「自然災害・感染症」は15.7%に留まった。
これは感染者が急増している欧米各国と比べ日本の感染者数がまだ多くないことや、都市のロックダウンのような強制的な措置が取られてないことも少なからず関係したのかもしれない。(アンケート実施期間は緊急事態宣言が出される前の2020年3月19日〜31日)
とはいえ、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、新入社員の入社式がオンラインで実施されたり、内定取り消し問題が顕在化したりしている中でのアンケート調査であることを考えると、学生たちは現実的に日本の社会保障制度や経済の先行きに不安を感じているものと推察される。
また、北朝鮮が3月に4回、飛翔体を発射するなど、安全保障上の懸念が依然あるにもかかわらず、「外交・防衛・安全保障」は4番目の12.2%に留まった。
脱プラスチック問題など、環境への関心の高まりがここ数年高まってきたと感じていたが、「環境・エネルギー」問題が6番目の2.6%だったのも意外な結果だった。

出典) Photo by Hide1228
日本の現状に対する意見
では、大学生は日本経済の現状をどのように見ているのだろうか。アベノミクスが開始されてから既に7年が経過した。確かに、大幅な金融緩和により、株価は回復し、戦後最長の景気回復期にあったのは間違いない。不動産価格も上昇し、資産効果を実感できた層もあったであろう。
しかし、突然の新型コロナウイルス感染症の拡大で、株価が急落、中国におけるサプライチェーンの途絶により一時的に日本企業の生産がストップしている現状を、学生たちは深刻にとらえている兆しがうかがえる。
また、自由意見として聞いたところ、以下のようなものがみられた。大学生が今の日本の状況に強い危機感を抱いていることがうかがえる。
・ 消費税10%に引き上げた分は、全て年金に回るとの説明を受けた。しかし、今後も老年人口は増加するものと見込まれているし、今の段階で10%であったら将来が空恐ろしいものに感じ、無力感を覚える。(4年生・女性)
・ 大学までの教育費を下げることが最重要。それなら大企業の法人税と消費税を上げても良い。(4年生・男性)
・ お金の使い道をはっきりさせて欲しい。無駄があるとおもいます(2年生・女性)
・ 今は新型コロナウイルスが経済や人々の生活に与える影響への対策などが重要になってくる。新型コロナウイルス以前から技術後進国になりつつある日本が、この先どのようにして経済力を高くするかが重要になると思う。(4年生・男性)
政治・政策への意見
様々な不安要素がある中で、同世代の政治に対する意識の低さについて指摘する意見もみられた。
・ 若者の政治に対する意識が低すぎる。(3年生・男性)
・ 国民全員が政治意識を高く持つ必要があると思う。SNSの普及により簡単に批判ができるようになっている分、そこで鬱憤を吐き出して終わり、という人が多いのではないか。ただ批判するのではなく、投票に行く、政治に直接関わる機会を積極的に作るなど、行動で示せる世の中になればと思います。(2年生・女性)
20代の投票率の低さが話題に上ることが多いが、ごく一部の意見としても、大学生の中から同世代の政治に対する意識の低さに対しての批判が出ていることは興味深い。
有権者が政治に関心を持つべきだとの意見はもっともだが、政治側からの情報発信を求める声もあった。
・ 「よりアクセスしやすい形での情報開示が必要だと思う。(4年生・男性)」
地方再生などの政策について具体的な提言もあった。
・ 地方再生と言いますが、人口縮小を考えれば、現在の規模で人里を維持することが不可能なのは明らかです。戦略的な撤退縮小と、コンパクトシティ化などの都市再編を考えるときだと思います。(大学院生・女性)
今回は調査期間が短く多くのサンプルを集めることができなかったのは残念だったが、想像以上に、日本経済の先行き、特に年金を含む社会保障制度の先行きに不安を持っていると感じた。一方で、環境・エネルギーや安全保障など、国として重要なテーマに関心が薄い傾向も少し感じる。更に突っ込んだ聞き方をしてもいいかもしれない。今後も様々な調査を行っていきたい。
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