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テクノロジーが拓く未来の暮らし

Vol.11 災害時に活躍、最新テクノロジー「東京モーターショー2019」

写真) TOYOTA e-Chargeair
出典) TOYOTA

まとめ
  • 東京モーターショー2019が東京有明にて開催された。
  • 災害が頻発した今年、動く蓄電池、遭難時救出用ドローン等に注目。
  • 普段から最新のテクノロジー情報をキャッチし、災害に備える必要有。

この数年で「災害大国日本」に住んでいる現実を改めて思い知らされた方も多いだろう。2018年は、大阪府北部地震、西日本豪雨(平成30年7月豪雨)、北海道胆振東部地震。2019年も立て続けに台風が上陸し、日本列島の各地で大規模な風水害が発生した。

実際に全国の1時間降水量50mm以上の年間発生回数は、年々増加している。1976~1985年の1時間降水量50mm以上の年間発生回数の平均が約226回に対し、2019年1月から10月までの発生回数は、既に372回だ。

図) 全国[アメダス]1時間降水量50㎜以上の年間発生回数の経年変化
図)全国[アメダス]1時間降水量50㎜以上の年間発生回数の経年変化

出典) 国土交通省 気象庁

しかし、備えあれば憂いなし。災害に対する備えは常に意識したい。先日編集部が足を運んだのは「第46回東京モーターショー2019」(2019年9月24日から11月4日まで東京ビッグサイトにて開催)。数々の展示の中で注目したのは60社に及ぶ企業・団体が最新テクノロジーを競う、「FUTURE EXPO」コーナー。

今回はその中で災害時に力を発揮すると思われるテクノロジーを紹介する。

日産、EVを活用した防災 

まず目に留まったのは、日産自動車の「日産リーフe+」。初代モデルと比較すると、約3倍となる570km(JC08モード)の航続距離を実現した。

写真) 日産リーフe+
写真)日産リーフe+

© エネフロ編集部

最大の特徴は、搭載されている大容量のEVバッテリー。このEVバッテリーは、ただ走ることに使うだけでなく、「動く蓄電池」として使用できる。災害によって、電力・ガス・水道・燃料などのライフラインが寸断された状況下で、EVは家庭や避難所への電源供給にも使うことができる緊急時の強い味方だ。

災害用非常用電源として

実際、9月11日の台風15号の際は、日産から千葉県の停電地域(市原・君津・木更津・香取・富津)のべ30か所の自治体や福祉施設などに、車両53台と可搬型給電器がセットで提供され、電力供給がなされた。

写真) 公民館でスマホ・携帯電話に給電(上段右左)、可搬型給電機と接続されたEV(下段右)、保育園で扇風機に給電(下段中央)、夜間の給水先での灯光器(下段左下)9月11日
写真)公民館でスマホ・携帯電話に給電(上段右左)、可搬型給電機と接続されたEV(下段右)、保育園で扇風機に給電(下段中央)、夜間の給水先での灯光器(下段左下)9月11日

出典) 日産

EVの被災地での電力供給のメリットは

・ 大出力に対応可能なこと
・ 大容量であること
・ 騒音対策になること

特にガソリンなどで動かす発電機と比較すると音や排気ガスを気にしなくて済むのはうれしい。

一般家庭の停電時用非常用電源として

災害時の「可搬型」と異なり、一般住宅用の停電時には、「定置型」のV2H(「Vehicle to Home」の略)が活躍する。

電気自動車のバッテリーに蓄えた電気は、家中ほとんどの家電に給電することができる。満充電の場合は、一般家庭の約2〜4日分の電力をまかなうことができる

写真) 日産リーフの蓄電池利用
写真)日産リーフの蓄電池利用

出典) 日産

図) 日産リーフの蓄電池利用
図)日産リーフの蓄電池利用

出典) 日産

日産は、EVを活用した災害対策について、昨年9月、東京都練馬区との「災害時における電気自動車を活用した電力供給に関する連携協定」を皮きりに、北海道でコンビニエンスストアを運営するセコマ、熊本県熊本市、三重県など、9つの自治体や企業と同様な協定を締結している。

三菱自動車も同様に、災害時協力協定を全国自治体と締結し、災害発生時に同社製のEVを被災地に速やかに提供できる体制づくりを目ざしている。

トヨタ、走る充電ステーション

次に目に留まったのは、トヨタ自動車のスタイリッシュなデザインの四輪車?とおぼしき展示。白いボディに電光掲示板のように、次々と文字が流れてくる。実はこちらはクルマではなく、走る充電ステーションなのだ。その名も「e-Chargeair」

写真) TOYOTA e-Chargeair
写真)TOYOTA e-Chargeair

© エネフロ編集部

空中給油機をイメージして作られたという。非接触充電を備えており、自動運転で走行しながら電池残量の少ないEVに充電してくれるというお助けカーだ。充電スポットが少ない、というEVユーザーの不満はこれで解消される。また、電光掲示板や、Wi-Fiスポット、空気清浄機能なども兼ね備えており、災害時に活躍しそうだ。

写真) TOYOTA e-Chargeair
写真)TOYOTA e-Chargeair写真)TOYOTA e-Chargeair

出典) TOYOTA

災害救出ドローン

10月14日台風19号で浸水被害を受けて、家屋に取り残された女性をヘリコプターで救助中に、人為的ミスで落下させた事故は記憶に新しい。そのような悲しい事故を減らすことができる技術も展示されていた。
それが、株式会社プロドローンが開発した、災害時に対話をしながら救助してくれるドローン「SUKUU(スクー)」だ。

写真) SUKUU
写真)SUKUU

© エネフロ編集部

飛行時間15分で、1名(最大100kgまで)を搭乗させることができる。本体は折りたたむことができるので車両積載も可能だ。オートパイロットではなく、特別な訓練を受けた専任パイロットが操縦するので、要救助者の状況が的確に把握できる。また、搭載したスピーカー、専用カメラ、マイク等を用いて声掛けを行うので、要救助者に安心感を与えることができるのは大きいと感じる。

昨年、筆者の友人の60代の女性が登山中に遭難した。3日間の捜索の後に無事に救出されたが、下山途中で骨折し、そのまま動けなくなっていたそうだ。その時に、この「SUKUU」があったら・・・。と思った。

写真) SUKUU製品写真
写真)SUKUU製品写真

出典) プロドローン社

テクノロジーは日々進化している。防災に向け、様々な選択肢が広がっている時代だ。災害が多い国に住む私たちだからこそ、普段から最新のテクノロジー情報をキャッチし、災害に備える想像力を養うことが重要だろう。

安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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IoT、AI・・・あらゆるものがインターネットにつながっている社会の到来。そして人工知能が新たな産業革命を引き起こす。そしてその波はエネルギーの世界にも。劇的に変わる私たちの暮らしを様々な角度から分析する。