写真) イメージ図
出典) pixabay photo by Hans
- まとめ
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- 次世代プラスチックとして「バイオプラスチック」が注目を集めている。
- しかし、現段階でバイオプラスチック製品は全体のプラスチック使用量の0.4%であり、問題点も多い。
- 普及に向けた対策を講じ、持続可能な炭素循環型社会の構築を目指す必要がある。
バイオプラスチックが注目されるわけ
今年の6月に開催されたG20大阪サミットで、海洋プラスチックごみ問題が焦点となったのは記憶に新しい。海洋プラスチックごみ問題とは、人間が大量に処分したプラスチックが海に流出し、深刻な海洋汚染や水質汚染を引き起こすことを指す。
(参考:対策急げ!プラスチックゴミ問題)
この海洋プラスチックごみによる新たな汚染を、2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を実現するために、日本政府は、「マリーン(MARINE)・イニシアティブ」を立ち上げた。世界全体の実効的な海洋プラスチックごみ対策を後押しすることを目指した意欲的なものだ。廃棄物管理、海洋ごみの回収及びイノベーションを推進するため、途上国の能力強化を支援していく。海洋プラスチックごみ問題は我々が思っている以上に国際的な関心事となっている。
又、多くの国が廃プラスチックの処理問題に直面している。中国の廃プラスチック禁輸措置に伴い浮上してきた問題だ。日本も例外ではなく、年間150万トンもの廃プラスチックを資源として中国などに輸出していたが、2017年12月末に中国が非工業由来の廃プラスチックの禁輸措置を実施したことに加え、タイやベトナムなどの周辺国も同様の措置を実施した。そのため、日本国内に廃プラスチックが溢れることになったのだ。
こうしたことから、プラスチックの国内リサイクル体制を整備する必要が出てきた。そこで政府は、エネルギー消費の少ない省CO₂型のリユース・リサイクル設備や「省CO₂型リサイクル等設備技術実証事業」を立ち上げ、低炭素化と資源循環の統合的実現を目指している。
出典) 環境省「プラスチックを取り巻く国内外の状況 Plastics Smart」
しかし、従来型プラスチックのリサイクルを進めているだけでは不十分だ。より環境に優しい次世代プラスチックはないのか、ということで、注目を集めているのが「バイオプラスチック」なのだ。
バイオプラスチックとは何か
「バイオプラスチック」は、微生物によって二酸化炭素と水に生分解される性質をもつ「生分解性プラスチック」と、バイオマスを原料に製造される「バイオマスプラスチック」の2つからなる。環境に優しい次世代のプラスチックとして注目を集めている。
植物は光合成で大気中から二酸化炭素を吸収する。植物由来のプラスチックを焼却した時に二酸化炭素が発生しても、温室効果ガス排出に寄与することはないという考え方がある。「カーボンニュートラル」と呼ばれるものだ。植物由来なので非産油国であっても生産でき、結果として化石資源への依存度を低減することにつながる。
出典) 三菱総合研究所
プラスチック使用の現状
さて、そのバイオプラスチックだが、日本でも実用化が徐々に進み始めた。
日本バイオプラスチック協会は、バイオマスプラスチック製品の識別認証マーク(製品中のバイオマスプラスチックの含有量が25%以上)を表示する制度を作り、普及を推進している。
出典) 日本バイオプラスチック協会HP
このマークは生鮮品の包装やソフトドリンクのラベルの一部に使用されている。しかし、現段階でバイオプラスチック製品は全体のプラスチック使用量の0.4%以下という状況だ。
出典) 味の素
導入に際して期待されている効果
バイオプラスチックの導入で期待できる効果は:
- ● プラスチックの循環利用率の向上
- ● 海洋プラスチックごみの低減
- ● 枯渇性資源・化学資源への依存度の低減
- ● 石油由来CO2の排出削減による地球温暖化の防止
などだ。
日本バイオプラスチック協会によると、国内に出荷されたプラスチック製品中のバイオプラスチック量は約4万トンであり、8.2万トンのCO2削減に貢献している(2016年度実績)。一方政府は、2030 年度のバイオプラスチック含有製品の使用量目標を197万トンとしており、今後急速に拡大していかなければならない。
出典) 環境省「バイオプラスチック概況」
バイオプラスチック普及の課題と対策
このようにバイオプラスチックの普及の道のりは遠い。日本のプラスチック全体の使用量は年間約1100万トンであるが、その内バイオプラスチックの占める使用量は約4万トンと全体のわずか0.4%に過ぎない。
その理由として、第一に従来のプラスチックに比べ製造コストが高いこと。第二に、一部のバイオプラスチックについては開発が発展途上であることが挙げられる。
コストを下げるためには、普及を拡大させる必要がある。そのためにバイオプラスチック製品の優先的な市場導入を進める制度の整備が必要だ。公共調達でバイオプラスチック製品の選択を義務化したり、民間でバイオプラスチック製品が優先される制度作りが求められる。
また、技術開発・用途開発・生産体制整備に向けた支援制度も必要だろう。
企業の取り組み
そんな中、日本国内では飲食業界や大手コンビニエンスストアなどで動きが出始めている。日清食品では、カップヌードルの容器を従来のポリスチレン容器から、バイオマスである紙で出来た「ECOカップ」に切り替える方針を発表した。(2021年中に切り替え完了予定)
出典) 日清食品ホールディングス
この他にも、大手コンビニエンスストアのセブンイレブンでは、おにぎりの包装をバイオマスプラスチック素材のものに転換した。
出典) セブン&アイHLDGS
さらに、プラスチック製ストローの大量消費に対する取り組みも進んでいる。世界的なコーヒーチェーンのスターバックスは、2020年までに、世界中の店舗で従来のプラスチック製ストローを廃止すると発表した。国内でもローソンやセブンイレブンが、店頭で淹れたアイスコーヒーを、ストローを使わずに直接口をつけて飲める蓋で提供する取り組みを始めた。
出典) セブンイレブン
持続可能な炭素循環型社会の構築に向けて
確かに、これだけプラスチックが日常生活に浸透してしまっている以上、すぐに全て使用を止める、というのは簡単ではない。しかし、環境問題の深刻さは日に日に増している。私達はバイオプラスチックに対する理解をより深めていく必要がある。
ちなみに筆者は今年からペットボトルの購入は止めて、水筒をいつも持ち歩くようにしているし、コンビニの割りばしはもらわず、事務所に備え付けの箸を使っている。また、スーパーのレジ袋の代わりにマイバッグを使うことも心掛けている。巷には持ち歩き用のマイ箸、マイストローも売っている。プラスチック問題に私たち消費者一人一人が向き合うことが、解決への近道ではないだろうか。
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- エネルギーと環境は切っても切れない関係。持続可能な環境を実現するために、私達は「どのようなエネルギー」を「どのように使っていくべき」なのか、多面的に考える。