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エネルギーと環境

Vol.09 “つながる つくる 暮らし楽しむまち・とよた” の実現  豊田市「SDGs未来都市」計画

写真)家事支援ロボット ugo(ユーゴ―)
©エネフロ編集部

まとめ
  • SDGs未来都市として選定された豊田市の取り組みを取材した。
  • 都市部と山間部を双方の課題解決を目指す取組を展開。
  • 市内製造業者とものづくりベンチャー企業とのマッチングによるプロジェクトも進行中。

今回訪れたのは愛知県豊田市。言わずと知れたトヨタ自動車の本社があるクルマのまちだ。愛知県のほぼ中央に位置し、愛知県全体の17.8%を占める広大な面積を擁する。世界をリードするものづくり中枢都市としての顔を持つ一方、市域のおよそ7割を占める豊かな森林や矢作川、季節の野菜や果物が実る田園が広がる緑のまちとしての顔も持つ。実はこの豊かな自然の存在が豊田市の環境への取り組みのカギとなる。

SDGs未来都市とは

豊田市は2018年6月、内閣府より「持続可能な開発目標(SDGs : エス ディ ジーズ)」達成に向けた取組を先導的に進めていく自治体「SDGs未来都市」として選定された。

SDGsとは2015年の「国連持続可能な開発サミット」において正式に採択された国際的な開発目標だ。貧困の撲滅や気候変動対策など、世界の国々が解決すべき課題に関する17の目標と169のターゲットから成る。豊田市は、環境モデル都市としての経験・知見を生かして地域課題の解決の加速化を図り、持続可能なまちづくりを目指している。

豊田市の取り組み

豊田市の具体的な取り組みについて、豊田市役所企画政策部未来都市推進課山本直彦課長に話を聞いた。

写真)豊田市役所 企画政策部 未来都市推進課課長 山本直彦氏
写真)豊田市役所 企画政策部 未来都市推進課課長 山本直彦氏

©エネフロ編集部

山本氏:日本政府は、環境や高齢化対応などの課題に対応しつつ、持続可能な経済社会システムを持った都市・地域づくりを目指す「環境未来都市」構想を進めてきました。豊田市は、「環境未来都市」構想の基盤を支える環境モデル都市に選定され(平成21年度)、環境分野での先進的な取組を進めてきました。そのため、SDGs未来都市へ移行することは自然の流れであったように思います。環境モデル都市としての取組実績の一つに、「Ha:mo(ハーモ)」があります。COMS(コムス)という超小型電気自動車のシェアリングサービスです。

写真)Ha:mo(ハーモ)
写真)Ha:mo(ハーモ)

©エネフロ編集部

写真)COMS(コムス)
写真)COMS(コムス)

出典)トヨタ車体

コムスは市内で既に100台超が走っており、登録者は約5,700人いるという。豊田市の中心市街地、私鉄沿線の駅などを中心にステーションが整備されたことにより、電車を降りてから目的地までの交通手段として普及している。

図)Ha:mo(ハーモ)超小型モビリティシェアリングネットワーク
図)Ha:mo(ハーモ)超小型モビリティシェアリングネットワーク

出典)TOYOTA

もう一つが燃料電池自動車「MIRAI」の導入だ。市役所も2台保有しており、水素ステーションは市内に2か所ある。

写真)MIRAI
写真)MIRAI

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写真)とよたエコフルタウン水素ステーション
写真)とよたエコフルタウン水素ステーション

©エネフロ編集部

また、市は燃料電池(FC)バスを全国に先がけて路線バスとして実証運行している。今後、さらに台数を増やしていくことを検討中であるという。

写真)燃料電池バス
写真)燃料電池バス

出典)TOYOTA

また豊田市は、スマートタウンの開発にも先駆的に取り組んできた。戸建てが21戸、集合住宅が2棟をひとつの街区とし、戸建住宅の電力負荷をまとめ、そこに電力供給し、電力を融通する電力融通や全ての戸建住宅に設置された太陽光発電とリチウムイオン蓄電池を有効活用することで、災害時の電力供給も可能だ。エネルギーの最適利用の仕組みを構築しエネルギーを見える化することで、街全体のネット・ゼロ・エネルギー・タウンを目指している。

写真)スマートタウン:セキュレア豊田柿本
写真)スマートタウン:セキュレア豊田柿本

出典)大和ハウスグループ

一方、市の省エネの取り組みも着々と進んでいる。市全体の使用電力のうち、再生可能エネルギーの導入率は現状24%だが、それを2030年に30%まで引き上げる計画だという。

写真)豊田市役所 企画政策部 未来都市推進課課長 山本直彦氏
写真)豊田市役所 企画政策部 未来都市推進課課長 山本直彦氏

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都市部と山間部の連携

次に、豊田市はその地域特性をどのように「SDGs未来都市」実現に生かしていこうとしているのか聞いた。

山本:豊田市の特徴は都市部と山村部を共に抱える日本の縮図であるというその土地柄です。本市には、こうした土地柄を背景とした地域課題解決に取り組む2つの組織があります。1つが「豊田市つながる社会実証推進協議会」で、企業や大学など63団体が加盟しています。ここで、先新技術を使って資源エネルギーの地産地消、超高齢社会への対応、交通安全の推進の3つの目標を掲げながら産学官の連携により地域課題の解決に取り組んでいます。もう1つが「おいでん・さんそんセンター」です。人・地域(活動主体)をつなぐことで都市と山村双方の課題解決を目指す取組みを展開しています。

具体的には、双方の交流を通じ、都市部では企業の社会貢献や人材育成など企業価値の向上、山村部では、農作業の指導による生きがいづくりや耕作放棄地の解消につながるなどの課題解決につながっています。この2つのプラットフォームを拠点に人・地域・技術を交流させ、イノベーションを創出していこうというのが豊田市の大きなSDGsの枠組みなんですね。

超高齢社会の対応の代表的な取組に「あすけあいプロジェクト」というものがある。「高齢者が年齢、地域、個人差なく活き活きと生活し活動できる、持続可能な高齢社会の実現」を目指し、名古屋大学などと共働で実施している。その一環の「里モビサークル」は、廃校となった小学校跡地を活用した地域住民の拠点施設「つくラッセル」で、中山間地域の高齢者が日常移動しやすいように都市部の企業の協力を得ながら、超小型モビリティ(コムス)を改造しています。

写真)つくラッセル施設
写真)つくラッセル施設

出典)つくラッセル

コムスはガソリンスタンドが少ない山間地域では、家庭用コンセントから充電できるため、利便性に優れている。モビリティの確保、生活改善という点でメリットがあるわけだ。一方、コムスを作っている自動車メーカーにしてみれば、車が認知されることにつながる。双方にとってWin-Winの関係であり、山間地域の持続可能性にもつながるという意味において画期的だ。

山本:豊田市では、平日、都市部の企業に勤め、休日は山間部で間伐や農業に親しむという人が多くいます。毎日の仕事に追われる中で、どうしてもゆとりを失いがちですが、休日に自然との関わりを持つことで、また活力が得られている。一方で、田舎の方は高齢化・過疎化が進み、地域の担い手が不足しがちな中で、都市部の人を歓迎して受け入れ、交流しています。

豊田市のSDGsの特徴として都市と山間の2つのプラットフォーム「豊田市つながる社会実証推進協議会」「おいでん・さんそんセンター」を軸に人と技術をうまく回転させることによって、経済・社会・環境という3側面において、持続可能性を求めていく豊田市の大きな方向性になっています。

ものづくり支援

豊田市はものづくりのまちの将来ビジョンとして、以下の3点を掲げている。

  1. 産業の中枢都市として自動車産業の生産拠点が集積し、産業活動が活発である。
  2. 企業のCSR 活動も含め、多くの市民がものづくり教育に参画し、ものづくり文化の継承に努めている。
  3. 産学官の63会員からなる「豊田市つながる社会実証推進協議会」が組織され、市内をフィールドとして研究開発や実証実験などが行われている。
写真)ものづくり創造拠点
写真)ものづくり創造拠点

©エネフロ編集部

そうした中、市内の製造業者とものづくりベンチャー企業とのマッチングによる現在進行中のプロジェクトを見る機会があった。「ものづくりベンチャーとのマッチング事業2019Demo Day(成果発表会)」だ。豊田市が目指す2030年の都市将来像は、“つながる つくる 暮らし楽しむまち・とよた” の実現、と表現されているが、その中で、「広域・分野横断的な連携でつくる持続可能なまち」という目標がある。具体的には、様々な地域課題、共通課題の解決に向けて、近隣自治体に限ることなく、必要に応じて遠隔地や海外、企業、大学、あらゆるステークホルダーと連携し、相乗効果や相互補完を図ることで、より効果的・効率的に課題解決を進めることを目指すというものだ。

今回のプロジェクトのうち、筆者が興味を持ったのは、地場の製造業とベンチャー企業の「遠隔操作による家事支援 住み込みロボットの開発」だった。

ベンチャーのMira Robotics株式会社は遠隔操作可能な家事支援ロボットの開発を進めており、市内の製造業である株式会社日栄機工の専用機の設計・製作で蓄積したノウハウを活用することで、家事支援ロボットの試作機を開発、デモンストレーションを行った。遠隔操作されたロボットは、洗濯物かごから取り出したバスタオルを器用に物干しラックに掛ける作業を披露した。

遠隔操作、というのもミソで、もともと共働き家庭などで、家事支援は便利だが留守宅に他人が入ることに抵抗があるケースを想定したものだ。人が外部から遠隔操作するならそうした懸念は払しょくされる。ロボットはAIを搭載しており、複雑な家事も機械学習するので、一旦覚えれば細かい指示はいらない。アプリで操作ができ、月額2万円程度でサービス提供を目指すという。

写真)家事支援ロボット ugo(ユーゴ―)
写真)家事支援ロボット ugo(ユーゴ―)

©エネフロ編集部

写真)家事支援ロボット ugo(ユーゴ―)
写真)家事支援ロボット ugo(ユーゴ―)

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写真)プレゼンテーションするMira Robotics株式会社 松井健代表取締役CEO
写真)プレゼンテーションするMira Robotics株式会社 松井健代表取締役CEO

©エネフロ編集部

こうした地場の産業とベンチャーとのプロジェクトを自治体が後押しする試みは全国レベルで行われることが望まれる。

各自治体が、その施策に SDGsの視点を取り入れ、施策間の有機的な “つながり”によって好循環が持続するまち作りを目指すことで、地域の課題解決が図られ、市民生活の質が向上する。

少子高齢化による地域格差の拡大をテクノロジーと私たちの知恵で、マイナスからプラスに転換する発想が今、求められている。豊田市の試みは多くのヒントを私たちに与えてくれていると感じた。

なお、現在「とよたエコフルタウン」を豊田市のSDGsの情報発信拠点とするため、パビリオンを改修中である。リニューアルオープンは4月末を予定している。リニューアル後は、SDGsの概要や豊田市の代表的な取組について、コンシェルジュがわかりやすく解説してくれる。暮らしやすい地域づくりに向けた取組の加速化を図る豊田市に是非、足を運んでほしい。

写真)とよたエコフルタウン
写真)とよたエコフルタウン

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