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編集長展望

Vol.09 2019年問題 何が変わる?

写真)太陽光発電 イメージ
出典)Pixabay

まとめ
  • 2019年、FIT制度の買取期間が一部の電源で順次満了する。
  • 買取期間満了後の選択肢は①現在の売電先に売る②新電力に売電③自家消費。
  • 自分で最適な選択をすることが大切。

再生可能エネルギー(再エネ)の普及に、固定価格買取制度(FIT制度)が一役買ってきたことは皆さんもご存知だろう。しかし2019年の今年、FIT制度の買取期間が一部の電源で順次満了する。

今からさかのぼること10年。2009年11月1日に「余剰電力買取制度」が導入され、それが2012年7月1日から「FIT制度」に移行した。その中で、10kW未満の住宅用太陽光発電の買取期間(10年間)が今年11月から10年間の買取期間を順次満了していくことになるわけだ。売電先をどこにすべきなのかなど、情報が錯綜する事で、対象の家庭に混乱が予想されることから「2019年問題」と呼ばれている。
2019年度(2020年3月末まで)にFIT制度が終わる案件(=卒FIT案件)は、2019年に53万件発生し、その後も毎年急カーブで増えていく見込みだ。

写真)FITを卒業する住宅用太陽光発電の推移
写真)FITを卒業する住宅用太陽光発電の推移

出典)資源エネルギー庁

今年11月から、これまで高値で買取を行っていた送配電事業者は買取の義務がなくなるので、住宅を含む太陽光発電システムのオーナーは、余剰電力の買い手をどうするかという問題に直面する。該当する人は買取期間の満了までにどうするか、考えなくてはならない。

買取期間満了時期については、現在、電力を買取っている電力会社等から個別に買取期間満了の6~4ヶ月前には通知が来るはずだ。また、買取メニューは、2019年4月~6月ごろ発表される予定となっている。

図)個別通知・買取メニュー発表に関する主なスケジュール
図)個別通知・買取メニュー発表に関する主なスケジュール

(注)個別通知の時期は2019年11月に買取期間満了を迎える方を想定したものです。

出典)資源エネルギー庁

買取期間満了後の選択肢

買取期間満了後の太陽光発電の選択肢は以下の3つだ。

  • ① 現在の売電先に売る
  • ② 新電力に売電する
  • ③ 電気を自家消費する

①「現在の売電先に売る」

上にあるように、大手電力事業者は買取メニューを順次公表する予定だ。例えば中部電力では、2018年8月に開始した顧客参加型取引サービス「これからデンキ」において、FIT制度買取期間満了の顧客を対象とした新たな買取プランを導入する。サービスは以下の3種類で、買取価格含め詳細は2019年4月を目途に公表する予定だ。

  1. 引き続き中部電力に売電する
  2. 企業に売電する
  3. 家族・知人に電気をシェアする

さまざまな選択肢があるので、該当する人は現在売電している電力事業者のサイトを見て、どのサービスを受けるのが良いのか検討してみるとよいだろう。

②「新電力に売る」

新電力とは、電力自由化で参入した新しい電力小売事業会社のことで、既に様々な会社が、卒FITの対象となった一般家庭の余剰電力を買いとるサービスを発表している。例えば、中部電力と資本提携しているLooopや、積水ハウスSMART TECHグリッドシェアジャパンシェアでんき丸紅ソーラートレーディングNTTスマイルエナジーなどがある。

こうした中、静岡県のTOKAIホールディングスのように、一般家庭の卒FIT電力の買取だけでなく、民間企業の発電した再エネ電力を買い取り、公立学校や自治体の庁舎、地域の法人・個人に、ブロックチェーン技術により由来が担保された再エネ電力を提供するモデルを確立するとしている。電気だけでなく、ガスやCATVなどの生活インフラの整備運営を担う、地域密着型事業体としての生き残りを目指す動きも出ている。

今後さらに多くの企業の新サービスが乱立するものと思われる。自分にとってどのサービスが合っているのか、見極める必要があろう。

③「自家消費」

余剰電力の買取価格は、電力会社から購入する電気より安くなることが予想される。したがって、固定価格買取制度が終わったら、太陽光発電の電気は売るよりも自家消費する方が得ということだ。

日中の余剰電力を蓄電池や大容量バッテリーを搭載している電気自動車(EV)に蓄電して夜使えば経済的だ。蓄電池はまだまだ高額だが、地方自治体によっては補助金を受けられる。政府は家庭用蓄電池の価格を2015年の約22万円/kWhから、2020年の約9万円/kWhへと、約6割下げる目標を掲げている。価格以外にも、寿命が10年程度と短いことや、サイズが大きいことなども、普及の上で改善の余地がある。

写真)家庭用蓄電池
写真)家庭用蓄電池

出典)Panasonic ウェブカタログ

また、EVは走行距離が400㎞以上のモデルが出始めた。充電器の数も順調に増えており、購入の際の心理的障壁はだいぶ低くなってきた。そして、災害や停電時の非常用電源としても使えることもメリットだ。

卒FIT対象の人も、これから太陽光発電システムを導入しようと考えている人も、EVを蓄電池としてシステムに組み込むことを考えてみても良い時代になった。発電した電気をどう使うのか、初期投資と投資回収の期間をよく検討することが重要だ。

悪質業者に注意

こうした中、「固定価格買取制度買取期間満了後は『0円買取』となるので、当社の〇〇がお得ですよ。」というセールストークで、自社のサービスや商品を買わせようとする業者が出てくる可能性が指摘されている。

そもそも買取期間が満了した後の余剰電力が、必ず「0円買取=無償引き取り」になるわけではない。どの小売電気事業者とも買取契約を締結していない場合のみ、余剰電力について一時的・例外的な「受け皿」として一般送配電事業者が無償で引受けることになっている。

例えば、「0円買取になるので当社の蓄電池を買わないと損をする」とか、「現在買取を行っている会社は買取満了なので、当社と契約しないと損をする」などと言った営業をかけてくるケースが想定されている。そうした業者の言い分を鵜呑みにせず、自分で調べてみることが大切だ。迷ったときは経済産業省資源エネルギー庁の相談窓口に電話して聞いてみるとよい。

卒FIT関連の新サービスは今後続々と発表される。エネフロでは順次紹介していく予定だ。

安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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