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テクノロジーが拓く未来の暮らし

Vol.26 「フィジタルリアリティ」でコロナ禍をぶっ飛ばせ!

写真) TREAD₊

写真) Tread+
出典) PELOTON

まとめ
  • コロナ禍で「フィジタルリアリティ」という新技術に注目集まる。
  • VRによる世界一周旅行、オンライン運動レクチャーなど、体験内容はさまざま。
  • AIを用い、遠隔で心身のヘルスケアをサポートする事業も。

この一年、新型コロナウイルス感染症の拡大で私たちの生活が一変した。「密」を避けるため、人と人とが直接会ってコミュニケーションを取る機会が激減した。不要不急の外出を控えた結果、自宅で過ごす時間は増加している。

そうした中、余暇の楽しみを動画視聴などのオンラインサービスに見出している方も多いだろう。今や日常にデジタルは欠かせない。日本国内でモバイル端末の所有者のうちスマートフォン比率は88.9%に達した。(モバイル社会研究所調べ 2020年1月)

コロナによって世界規模で生活スタイルや消費行動に変革が起こっている現在。2021年1月に発表された「2021年の世界の消費者トレンドTOP10」(市場調査会社ユーロモニターインターナショナル調べ)の中でも注目を集めているのが「フィジタルリアリティ(Phydital Reality)」だ。

フィジタル(phydital)」とは、「フィジカル(physical):物理的な」と「デジタル(digital)」をかけあせた造語。現実世界とデジタルな世界の融合を意味する。

フィジタルリアリティ」とは、VR(Virtual Reality:バーチャルリアリティ=仮想現実)や、AR(Augmented Reality:オーグメンテッドリアリティ=拡張現実)といったテクノロジーを活用し、様々なサービスがバーチャル上で繋がることを指している。

ウィズ・コロナの時代はもちろん、その先においても、デジタル上で繋がる人の行動習慣は広がっていくとみられる。今回はますますニーズが高まる「フィジタルリアリティ」について紹介する。

エクササイズ

在宅での時間が増えると気になるのがお腹周り。と共に、注目を浴びたのが運動不足。今アメリカでは、Peloton社の「bike+」というエクササイズが人気だ。

写真) bike+のモデル
写真)bike+のモデル

出典) Peloton

Pelotonが販売するエクササイズ・バイクは、インターネットに繋げることで、トップレベルのインストラクターのクラスをリアルタイムまたは録画動画をストリーミングで受けることができる。月額$49(2021年4月現在)のサブスクリプション(定額制)だ。

インストラクターだけでなくDJがいるクラスもあり、エンターテインメント性の高さも人気の一つである。

一人で行うエクササイズは継続することが難しいが、”楽しく”体を動かせることが鍵になる。現在はプエルトリコ、英国、カナダ、ドイツでサービスが提供されている。日本でも、ジムに行くより、自宅でエクササイズしたいという人にはアピールするかもしれない。

オンライン旅行サービス

新型コロナウイルス感染症拡大が収束したらしたいことの第1位はなんといっても「旅行」ではないだろうか。

現地でしか味わえない空気、見たことのない風景、現地のグルメ・・・旅行を我慢している人は多い。その願いを少しでも叶えようと、旅行会社が最新IT技術を駆使し、新しい旅行スタイルを打ち出している。

以前の記事(2020年8月25日「コロナに負けるな!オンラインサービス続々!」)でも紹介したが、コロナ禍で修学旅行や卒業旅行の中止が相次ぐ中、JTBが提供を始めたのが「バーチャル修学旅行360(サンロクマル)」だ。

没入感あふれる「VR映像体験」や現地案内人との「オンラインリアルタイム双方向交流」をはじめ、「ものづくり体験」や「お土産購入」など作品や商品が実際に自宅に届くという、思い出を形に残せるきめ細やかさが受けている。

いつか現地に行ってみたいという学生たちの気持ちを醸成することで、感染症収束後の機会創出を狙っている。

また、株式会社エイチ・アイ・エスが提供するのは、90分でハワイ→ケニア→インド→トルコ→ラスベガス/ケアンズなど5都市を回ることができるバーチャル旅行プラン、「世界5都市同時中継!世界一周ライブツアー」。

90分で景観のみならず、さまざまな生活習慣や気候を感じることができると好評だ。オンライン会議システムのzoomを使ってバーチャルに旅をする。チャットでリアルタイムに現地とコミュニケーションが取れるので、テレビとはまた違った臨場感があるという。

訪れる都市によってさまざまなラインアップがあり、料金も1000円からと購入しやすい設定になっているのも特徴だ。

写真) 世界5都市同時中継!世界一周ライブツアーイメージ
写真)世界5都市同時中継!世界一周ライブツアーイメージ インド
写真)世界5都市同時中継!世界一周ライブツアーイメージ ケニア

上) インド
下) ケニア

出典) 「株式会社エイチ・アイ・エス

一方、アミューズメント施設は来場者減で苦境に陥っている。株式会社UWS ENTERTAINMENTは、神奈川県横浜市の大型商業施設「横浜ワールドポーターズ」に昨年オープンした期間限定水族館、アクアリウム宇宙旅行「UNDER WATER SPACE」に、最先端の「アバターロボット」を活用したバーチャルツアーサービスを開発した。

このロボットにはカメラが付いており、利用者は、自宅からパソコン上でロボットを遠隔操作し、自宅に居ながらにして水槽の魚を間近に見ることができる。水族館の担当者と会話もできるのも魅力だ。(サービス提供は現時点で未定)

写真) アバターロボットが水槽に近づいている様子
写真)アバターロボットが水槽に近づいている様子

出典) UWSプレスリリース

こうしたアバターロボットを、自分の分身とすることで、物理的な距離を越えたコミュニケーションが可能となる。エンターテインメントのみならず、教育やヘルスケア分野における活用も視野に入る。

メンタルヘルスケア

運動不足による体重増は健康にも悪影響を及ぼす。在宅ワークや時短営業要請の長期化などによる対面コミュニケーションの減少や、金銭面・健康面からの生活不安から生まれるストレスには注意が必要だ。しかし、メンタルクリニックへの通院は敷居が高いうえ、金銭的負担が大きく、ケア自体に踏み出さない人も多い。

株式会社ティファナ・ドットコムが提供する「メンタルヘルスさくらさん」は、もともと受付業務などを完全自動化するため開発されたAI搭載のバーチャルキャラクターだが、メンタルヘルス機能も持たせた。

ウェブカメラで本人を撮影し、画像をもとに心拍を計測したり、PCマイクで取得した音声から感情変化を推定したりする。また、ウエアラブル端末で発汗などを計測することも可能で、本人が気づかない心の不調の兆候を早期発見する。

画像) メンタルヘルスさくらさんのイメージ
画像)メンタルヘルスさくらさんのイメージ

出典) 株式会社ティファナ・ドットコム

フィジタルリアリティの活用はまだ始まったばかりだ。今後、あらゆる分野で検討されるだろう。新型ウイルスとの人類の戦いの中で、技術革新も加速する。日本企業のこの分野への参入を期待したい。

安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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IoT、AI・・・あらゆるものがインターネットにつながっている社会の到来。そして人工知能が新たな産業革命を引き起こす。そしてその波はエネルギーの世界にも。劇的に変わる私たちの暮らしを様々な角度から分析する。