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安全を考える

Vol.18 3.11から10年 最新防災テクノロジー

写真) バーチャル災害体験イメージ

写真) バーチャル災害体験イメージ
出典) FUJITSU JOURNAL

まとめ
  • 自然災害大国日本、官民一体となった「防災」×「テクノロジー」の開発進む。
  • 「バーチャル災害体験」や「防災チャットボット」、災害ロボットなど様々。
  • 最新防災テクノロジーに普段から興味を持ち、自らアクションを起こすことが重要だ。

まもなく東日本大震災から10年の節目を迎える。2月にも東日本大震災の余震と考えられる震度6強の地震があったばかり。今回は、最新防災技術を紹介し、改めて災害への備えについて考えたい。

防災におけるテクノロジーの価値

日本は自然災害大国である。世界全体の自然災害による被害額のうち14.3%が日本だ。発生件数では「台風」の57.1%に次いで「地震」が17.9%を占める一方で、被害額では「地震」が82.8%と圧倒的に占める割合が大きい。発生頻度は比較的低いが「地震」に対する備えをあなどってはいけないことがわかる。

図) 我が国における自然災害の発生件数及び被害額の災害別割合
図)我が国における自然災害の発生件数及び被害額の災害別割合

出典) 中小企業庁 2019年版「中小企業白書」

「防災」と聞くと、災害の怖さの認知、防災グッズの常備、災害発生時に取るべき行動の学習などが思い浮かぶが、近年、特に注目を集めているのが「防災テック」の活用である。

「防災テック」とは、「防災」と「テクノロジー」の造語である。AI(Artificial Intelligence : 人工知能)やIoT(Internet of Things : さまざまな「モノ」がインターネットに接続され、情報交換して相互に制御する仕組み)などのテクノロジーの活用によって、災害予測と被害状況の確認を速やかにおこない、被災者の安全確保をはじめとし、被害を小さくすることを目指すものだ。

国の動き

政府も、災害が頻発化・激甚化する近年の現状を鑑み、最新テクノロジーを積極的に活用すべきだとしている。

内閣府は2020年6月5日に、「防災×テクノロジー」タスクフォースのとりまとめを公表、大規模災害発生時の迅速かつ的確な対応には、人的資源だけではなく、テクノロジーの活用が有効だとした。

すでに一部の自治体や民間企業では、「防災テック」の実証実験・実用化や開発などの取り組みが進んでいる。

具体的には、「防災×テクノロジー 官民連携プラットフォーム」の設置、被災者生活再建支援データベースの構築やLINE株式会社などと連携した防災チャットボットの開発、衛星データの即時共有システムと被災状況解析・予測技術の開発や準天頂衛星システムを利用した安否情報の確認や緊急情報の発信、シェアリングエコノミーによる災害時の共助促進などがある。

表) 「防災×テクノロジー」タスクフォースとりまとめ
表)「防災×テクノロジー」タスクフォースとりまとめ

出典) 内閣府 「防災×テクノロジー」タスクフォースのとりまとめについて

民間企業の取り組み

政府が「防災テック」の積極活用を掲げる中、一部の民間企業ではすでに実証実験が進んでいる。災害前と災害発生時の活用法をそれぞれ紹介する。

① 5G×VR×8Kによる「バーチャル災害体験」

2018年の中国地方における大雨(平成30年7月豪雨)の際、広島市で避難勧告を出したにもかかわらず、避難率が非常に低かった。以前「【防災2020】相次ぐ自然災害にどう備える?」の記事でも紹介したが、避難勧告のレベルが住民に浸透していなかったことや、自分は大丈夫だろう、と考えて避難しない、いわゆる「正常性バイアス」などが指摘されてきた。

住民の防災意識をどうしたら高めることができるのか、という課題に対する解として、NTTドコモ中国支社と富士通は、「バーチャル災害体験」を開発した。

8K(現行ハイビジョンの16倍の画素数)360度カメラで撮影されたライブ映像に豪雨災害のコンピューターグラフィックス(Computer Graphics : CG)を重ね合わせ、リアルな映像をVR(Virtual Reality:仮想現実)ゴーグルを通して、災害時の街の様子をリアルに体感してもらうものだ。

5G(5th Generation : 第5世代移動通信システム)の活用によって、高品質画像を大量に速く送ることができ、臨場感あふれる映像の提供が可能となった。リアルなだけでなく、避難レベルごとに取るべき行動をゴーグル上に表示することもでき、住民の防災意識の向上がはかれるという。

写真) 体験イメージ
写真)体験イメージ

出典) FUJITSU JOURNAL

この実証実験は豪雨災害を想定したものだが、その他の自然災害にも広く活用できそうだ。すでに、他の自然災害のVRによるシミュレーションを提供している事例(株式会社ムラヤマ株式会社理経田中電機株式会社など)がある。

例えば地震の場合、「バーチャル災害体験」の活用によって、さまざまなシーン(家・学校・オフィスにいるとき、外にいるとき、交通機関を利用しているとき)や時間帯(夜間発生の地震は、昼間と比べて視界が悪く避難までの時間を要する)を体感できる。従来の避難訓練や地震実験車よりも、「どのようなことに注意し、どう対応すべきか」がより具体的にイメージでき、防災意識の向上につながると思われる。

防災訓練用VR~地震編~

映像提供:株式会社理経

② 官民連携で進めるSNS×AIによる「防災チャットボット」

近年、災害時におけるSNSの活用が注目を浴びている。災害直後には電話が通じにくくなったり、電池切れなどの問題が起こる。そこで、SNSとAIをかけあわせた「防災チャットボット」を利用した情報収集が検討されている。

LINE株式会社は、日本の人口の約3分の2が使っているとされるLINEのさまざまな機能(既読機能、位置情報共有機能、オープンチャットなど)が災害時に役立つとしている。内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の下で、LINE株式会社は、国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、株式会社ウェザーニューズ(WNI)などと連携して、「防災チャットボット SOCDA」を開発し、神戸市や下田市などで実証実験をおこなった。

2019年6月に設立された「AI防災協議会」は、2020年2月18日、「SOCDA」を全国共通の基盤とするべく、LINE公式アカウント「AI防災支援システム」の開設および全国レベルでの社会実装を目指すことを公表した。

「SOCDA」で導入された「情報投稿機能」に加え、「避難支援機能」が追加され、災害対策本部のみならず被災者にとってより役立つツールとなった。「情報投稿機能」とは、住民からテキスト・位置情報・写真などで送られてきた被害状況をAIがマッピングする機能だ。これにより災害対策本部が迅速で的確な対応を取ることが可能になる。一方、「避難支援機能」は、1人1人にカスタマイズされた避難支援をおこなうことで、避難ガイドラインの情報の膨大さや地域間のガイドラインの情報量の不均一さなどを解消する。

写真) 「防災チャットボット『SOCDA(ソクダ)』」情報投稿機能
写真)「防災チャットボット『SOCDA(ソクダ)』」情報投稿機能

出典) AI防災議会

写真) 「防災チャットボット『SOCDA(ソクダ)』」情報投稿機能
写真)「防災チャットボット『SOCDA(ソクダ)』」情報投稿機能

出典) AI防災議会

③ 災害ロボット

次はロボットだ。阪神淡路大震災以来、災害ロボットの開発が進められてきたが、特に注目を浴びたのが、東日本大震災におけるQuince(クインス)という災害ロボットだ。

人間が入りにくい場所をロボットが調査できることがある程度実証されたものの、課題も明らかとなった。Quince(クインス)の開発者の東北大学大学院情報科学研究科の田所諭教授は、「ロボットはタフさが足りない」と指摘する。災害時の悪環境では、ロボットがうまく動かないことがあったからだ。
田所教授は2014~2018年度に内閣府のImPACT革新的研究開発推進プログラム「タフ・ロボティクス・チャレンジ」のプログラム・マネージャーを務め、「飛行ロボ(ドローン)」、「建設ロボ」、「サイバー救助犬」、「索状型ロボ」、「脚ロボ」など現場で役に立つロボットの開発に携わった。

特に、広域範囲を空から確認できるドローンは初動の被害状況把握に役立つ。また、これらのロボットの多くにはAIが活用されており、今後5Gの活用によってますます「タフでへこたれない」ものになっていくと思われる。

図) ロボットを活用した災害救助・復興援助のイメージ図
図)ロボットを活用した災害救助・復興援助のイメージ図

出典) 革新的研究開発推進プログラム「ImPACT」、タフ・ロボティクス・チャレンジ

④ クラウド型災害支援管理システム

災害ロボットが注目されているとはいえ、災害時の人手確保は依然欠かせない。災害ボランティアの重要性はますます増している。しかし、ボランティアがせっかく被災地に来ても、受け入れ体制が不十分で、成果が発揮できないことがあった。

このような課題を解決すべく、株式会社TECH Designが開発したのが「スマレプ」である。スマレプは、ボランティアの管理をクラウド上でおこない、スマホで募集から受付そして事務連絡をおこなうことができる。

2019年には千葉県館山市の災害ボランティア現場で実証実験されており、利便性は確認済みだ。今後は、ボランティアのスキルと被災者のニーズをマッチングするプラットフォームを目指す。政府が災害対策の一つとして推進している「共助」に通じる。今後ますます需要が高まっていくだろう。

写真) 「スマレプ」のボランティア受付画面
写真)「スマレプ」のボランティア受付画面

出典) スマレプ | ボランティア管理プラットフォーム (sumarep.com)

今回は、政府と民間企業などが推進する防災テクノロジーについていくつか紹介した。これらは、実際私達が利用して初めて意味がある。身近にどんな防災テクノロジーがあり、どう使えば良いのか。普段から興味を持って、自らアクションを起こすことが重要だ。

参照:
LINE Corporation | 防災・減災
LINEのチャットボットと、災害時の情報収集・共有のためのシステムを活用した防災訓練を実施しました | LINE Corporation | CSR活動レポート
AI防災協議会 2021-02-18press.pdf (caidr.jp)
無限大sponsored by IBM from https://www.mugendai-web.jp/archives/10924
災害時の活躍に期待!「ドローン × 防災」の未来 | 株式会社旭テクノロジー(ATCL) ドローン事業 (atcl-dsj.com)
災害支援管理システム「スマレプ | SAIBO TECH 【ボウサイ×テクノロジー】
安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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