苫小牧CCS実証試験センター鳥瞰図
出典)日本CCS調査株式会社
- まとめ
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- 火力発電所などが出すCO2を回収し、地中に貯留する技術がCCS。
- 日本の年間CO2排出量の約100年分が貯留できる試算も。
- 貯留に必要なエネルギーをどう減らすか、環境への影響が課題。
二酸化炭素(CO2)などいわゆる温室効果ガスが地球温暖化を引き起こすことは既にお話ししましたね?(Vol.01「地球温暖化ってどういうこと?」)そのCO2を集めて地中深くに閉じ込めてしまう技術があるのです。それが、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:CO2の回収、貯留)と呼ばれるものです。地球温暖化防止の切り札として期待されています。
CCSは、工場や火力発電所などから発生するCO2が大気に拡散する前に高純度CO2として回収し、地下1000メートル以上の深いところにある「帯水層」と呼ばれる「貯留層(砂岩や火山岩など)」(図1)にCO2を閉じ込める技術です。当然漏れてきては困りますから、貯留層の上は泥岩などで出来ている「遮蔽層(泥岩など)」(図2)で覆われていなければいけません。
- 特徴
- 粒の粗い砂などが固まった砂岩や火山岩など
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- CO2を貯留するのに十分なすき間がある
- 浸透性が高い
- 特徴
- 細かい粒の粘土などが固まった泥岩など
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- 水が浸透しにくい性質
- 十分な遮へい能力
- 広く厚く貯留層を覆う
そのプロセスですが、まずCO2を分離・回収し、次にそれを地中に埋める圧入施設に輸送します。そしてCO2を地下深くの「貯留層」に向けて注入するのです。(図3)長期間閉じ込められたCO2は貯留層の塩水に溶解したり、岩石のすき間で凝固し鉱物になったりすると考えられています。
今までの調査では、日本におけるCO2貯留可能量は約1,400億トンで、これは日本の年間CO2排出量の約100年分に相当すると言います。なんとも壮大な技術ですね。
出典)苫小牧市企業立地ガイド(元データは日本CCS調査会社HPより)
日本も含め、海外では、CCSの実用化プロジェクトが数多くあります。(図4)米国では、30年以上も前から、老朽化した油田にCO2を注入し、内部の圧力を上げたり、石油の流動性を変えたりして、生産を増やす技術、いわゆるEOR(Enhanced Oil Recovery=石油増進回収法)という技術も事業化されています。既存油田の回収率を高めるということは新たな資源を生み出すことと同じであり、今後も更なる技術開発が進むことでしょう。
こうしたCCS、日本では、2003年から新潟県長岡市岩野原でCO2帯水層貯留の実証試験がRITE(Research Institute of Innovative Technology for the Earth=公益財団法人地球環境産業技術研究機構)によって行われました。(参考:岩野原実証試験・モニタリング)現在は4プロジェクトが進行中で、北海道苫小牧市の臨海工業地帯で大規模貯留実証プラントが2016年4月に運転を開始しました。またCO2回収プラントが広島県と福岡県の石炭火力発電所で進行中です。このように国内でも着々と研究開発実験が行われています。
では、CCSには課題はないのでしょうか?一つにはコストがかかるという問題があります。CO2を地下貯蔵する為には、分離したCO2を加圧して、地下まで送る必要があります。それには莫大なエネルギーが必要になるという問題があり、どこまでそのエネルギーを減らすことができるのかが課題です。また、CO2が万が一漏れ出した場合、また、CO2を海洋隔離した場合の生態系への影響なども未解明です。
いずれにしても政府は2050年までにCO2排出量を80%削減(2010年比)する長期目標を掲げています。ほとんどの原子力発電所が停止している今、我が国は大量のCO2を排出する石炭火力発電所に大きく依存しており、今後も稼働し続ける見込みです。CCS技術の開発を、実証段階から実用レベルにまで早く引き上げることが求められています。
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