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「安全」を考える

Vol.09 災害対応ドローン・ロボット、福島から発進!

写真) 福島ロボットテストフィールド
© エネフロ編集部

まとめ
  • 福島の復興を最先端技術や研究で後押しする「福島ロボットテストフィールド」
  • 大規模災害等に活用が期待される無人航空機やロボットを対象にした一大研究開発拠点。
  • 既に一部は企業の研究開発に利用されており、全面開所は2020年春予定。

福島の復興を最先端の技術や研究で後押しするプロジェクトのひとつ、「福島ロボットテストフィールド」。福島県の施設であり、物流、インフラ点検、大規模災害などに活用が期待される無人航空機や様々なロボットを対象にした、世界に類を見ない一大研究開発拠点だ。全面開所を2020年春に控えるこの巨大施設を取材した。

東北新幹線福島駅を降り、東に70キロメートルほど車を走らせると南相馬市に入る。付近は一面、田んぼやメガソーラ一が広がる。その中で一際目立つ、6階建ての構造物が目に入ってきた。「福島ロボットテストフィールド」は南相馬市の復興工業団地内に位置する。

まずはその全貌をご紹介しよう。敷地は1,000メートルx500メートルの50ヘクタール(500,000平方メートル)。といってもピンとこないかもしれないが、敷地の中央にある本館(研究棟)の屋上部分(3階相当)から見渡しても到底全部を見渡すことが出来ない広さだ。総工費約150億円の巨大プロジェクトである。

実はこの施設、海岸線からは1キロほどしか離れていない。土地は南相馬市のものだが、福島県が借り上げている形になっている。東日本大震災の時、辺り一帯は津波に襲われた。農家もあったという。

図) 開発基盤エリア(研究棟)
図) 開発基盤エリア(研究棟)

出典) 福島ロボットテストフィールド

写真) 現在の研究棟
写真) 現在の研究棟

© エネフロ編集部

本館(研究棟)では、さまざまな試験の準備、加工・計測に加えて、ロボットの性能評価のための風、雨、防水、防塵、霧、水圧、温湿度、振動、電波など、あらゆる試験に対応している。

写真) 振動試験設備
写真) 振動試験設備

© エネフロ編集部

また本館は、研究者が短期~長期の活動に入る拠点として利用が出来る。既に9団体の入居が決まっている。ロボットに関する技術相談は「福島ロボットテストフィールド」を運営する「公益財団法人福島イノベーション・コースト機構」が行う。棟内に併設されているのが「福島県ハイテクプラザ南相馬技術支援センター」だ。

もともとハイテクプラザは、降雪の試験研究機関で、郡山市に本部を置いて県内の製造業の技術的支援を行っている。震災からの復興を掲げて、5番目のセンターとして新しく設置された。1階にずらっと並んでいる加工機などの設備を利用して、この地域のメーカーに対し、いろんなアドバイスや試験を行う窓口となっている。まさに至れり尽くせりだ。

スタッフの構成を福島ロボットテストフィールドの細田慶信副所長に聞いた。

「今はロボットテストフィールドの職員が約20人。ハイテクプラザさんが約10人。合わせて30人でやっています。職員は、福島県からの人だけでなくいろいろです。例えば私は富士重工からの出向ですが、無人航空機をずっとやっていたのでその関係で来ています。」

写真) 細田慶信副所長
写真) 細田慶信副所長

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研究室や施設は企業に貸し出す。人気は上々だ。

「ここの2階北側には企業に貸し出す研究室が13室用意されています。6室ほどこの6月に公募したところ、17団体の応募がありました。選考の結果、9団体が決定し、残りは8月に公募する予定です。入居する団体は、会津大学、東北大学と7企業です。企業には、デンソーをはじめ、EV(電気自動車)や無人航空機(ドローン)開発のスタートアップ企業などが名を連ねています。入居は今年秋からで、その後、施設が稼働します。」(細田副所長)

主な施設を紹介しよう。

インフラ点検・災害対応エリア

敷地内で一番高い6階建て、高さ30メートルの建物が、「試験用プラント」だ。

写真) 試験用プラント
写真) 試験用プラント

© エネフロ編集部

このユニークな建造物は、各階に様々な化学プラント設備のモックアップ(施設)が設置されている。1階は「配管」や「ポンプ」、「ボイラー」など。複雑な配管が3次元に走っている。実はこの場所、今後国際的なロボット競技会の会場になることが決まっている。(注1

写真) 試験用プラント1階部分
写真) 試験用プラント1階部分

© エネフロ編集部

写真) 試験用プラント公開実証試験(会津大学)
写真) 試験用プラント公開実証試験(会津大学)

出典) 福島ロボットテストフィールド

3階4階に「タンク」を模した設備が配置、そして5階6階には、「煙突」のモックアップ。どちらも設備の内部における点検用無人飛行機の動向などをテストする。煙や気体の充満、熱源や瓦礫の配置などにより、実際の災害時に起こりうる異常な環境を忠実に再現することができる優れものだ。

写真) 煙突のモックアップ
写真) 煙突のモックアップ

© エネフロ編集部

その他、ひび割れやボルトのゆるみ、亀裂がある鋼製の橋梁(長さ35メートル)とコンクリート製の橋梁(15メートル)、ひび割れがあるトンネル(50メートル)を再現する。老朽化の確認や点検などに関する試験や訓練などに対応する。実際に巨大建造物を作ってしまうところがすごい。

図) 試験用橋梁
図) 試験用橋梁

出典) 福島ロボットテストフィールド

図) 試験用トンネル
図) 試験用トンネル

出典) 福島ロボットテストフィールド

それだけではない。住宅やビル、信号、標識なども再現する。「市街地フィールド」がそれで、障害物除去や人員捜索、点検に関する訓練を行う予定だ。実際、都市部で大地震が発生した場合、道路の亀裂だけでなく、電柱や信号、陸橋などが倒壊して道路を塞ぐ可能性が指摘されている。こうしたフィールドでの訓練は極めて実戦的で重要だろう。

図) 市街地フィールド
図) 市街地フィールド

出典) 福島ロボットテストフィールド

災害時の土砂崩壊現場を再現するのが、「瓦礫・土砂崩壊フィールド」。特に瓦礫・土砂・倒木などで足場の悪い場所、傾斜の急な場所、泥濘地などでの復旧・捜索・救助作業などはロボットに頼らざるを得ない。そうした想定の下、同フィールドは設計されている。

図) 瓦礫・土砂フィールド
図) 瓦礫・土砂フィールド

出典) 福島ロボットテストフィールド

無人航空機エリア

無人航空機向けとしては国内最大規模の飛行空域、滑走路、緩衝ネット付飛行場を誇る。飛行はもとより衝突回避、不時着、落下、長距離飛行など多様な試験ができ、無人航空機の実用化を推進するとしている。

「無人航空機用滑走路」は全長500メートルもあり、飛行試験や操縦訓練に使用する。約13キロ離れた浪江町にある滑走路まで長距離飛行試験を行うことができる。その他、緩衝ネット付き飛行場(150メートル×80メートル)やヘリポート(20メートル×25メートル)も整備される。

写真) 無人飛行機の滑走路
写真) 無人飛行機の滑走路

© エネフロ編集部

無人航空機は様々な分野での利活用が検討されている。例えば電力中央研究所は、送電線周囲の樹木管理のために無人航空機を利用する研究を進めている。

福島ロボットテストフィールドに作られた緩衝ネット付飛行場では、航空法などの規制を気にすることなく、自由な環境で無人航空機の試験が出来る。こうした環境は他にないことから、今後様々な企業や研究機関から利用申請が殺到しそうだ。

図) 緩衝ネット付き飛行場
図) 緩衝ネット付き飛行場

出典) 福島ロボットテストフィールド

図) ロボットフィールドから浪江町までの無人飛行機の広域飛行区域
図) ロボットフィールドから浪江町までの無人飛行機の広域飛行区域

出典) 福島ロボットテストフィールド

水中・水上ロボットエリア

津波も含め、豪雨、台風など、日本列島は水害から無縁ではいられない。
ロボットによる水中のインフラ点検と災害対応の実証試験は不可欠だ。そのための国内唯一の試験場がこちら。ダム、河川、水没市街地、港湾等の水中で発生する状況を再現する。今回訪問したときは住宅がまだ工事中だった。完成時は、水害で家屋の1階の部分冠水や全部冠水した状態を再現し、水上・水中ロボットや無人航空機による情報収集、捜索・救助訓練ができるようになる。点検対象や障害物を沈めた試験、有人ヘリやボートによる救助訓練も可能だ。

図) 水没市街地フィールド
図) 水没市街地フィールド

出典) 福島ロボットテストフィールド

これらの施設はまだ全部完成していないが、既に一部は利用されている。

「2017年9月からいろんな方々が使っています。ドローンを飛ばすために必要な運行管理システムを開発するために関連36社が協力して試験をしています。また宇宙エレベーターを研究している協会が、100mものケーブルを登るクライマーロボットの研究をしています。また、陸上自衛隊が災害用ドローンの訓練として使ったこともあります。ここで訓練された方々が北海道の胆振(いぶり)東部地震の時に活躍したと聞いています。普段から備えることがいかに大事か痛感しています。全て完成した時には大々的にオープニングをやろうと思っています。」(細田慶信副所長)

東日本大震災で大きな被害に遭ったこの地で、災害を未然に防ぐための大規模な研究や試験が行われているのは皮肉なことだが、必然でもあろう。
災害が多いこの国に住む私たちは過去に学び、そしてこれからに備えなければならない。その思いをかみしめて帰路についた。

  1. World Robot Summit 2020
    主催:経済産業省、NEDO

    2020年8月20日(木)~22日(土)の3日間、インフラ・災害対応カテゴリー競技を福島ロボットテストフィールドで開催。
参考)
福島イノベーション・コースト構想 公式ホームページ
https://www.fipo.or.jp/
福島ロボットテストフィールド 公式HP
https://www.fipo.or.jp/robot/
経済産業省 福島イノベーション・コースト構想とは
https://www.meti.go.jp/earthquake/smb/innovation.html
ふくしま復興ステーション
https://www.pref.fukushima.lg.jp/img/portal/template02/in-top1050.png
安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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