写真)ユーグレナ、和名ミドリムシ
提供)株式会社ユーグレナ
- まとめ
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- 航空業界の輸送量が年々増加し、業界全体でCO2削減が急務。
- 油系ジェット燃料に替わり植物由来のバイオジェット燃料に期待集まる。
- 株式会社ユーグレナのバイオ燃料製造実証プラントが年内に竣工。
微細藻類ユーグレナ(和名ではミドリムシ)という生物について、一度は学校の授業で耳にしたことがあるのではないか。約5億4200万年前に大量の酸素を作り出し、生物を急速に進化させた立役者がミドリムシなどの藻類だと考えられている。体長わずか約0.05ミリの小さなミドリムシが、エネルギーに変わる日がもうすぐそこまで来ている。今回は、そんな“テクノロジーが拓く未来の暮らし”を紹介しよう。
近年、航空機の利用者は世界中で急速に増えており、航空会社は路線を増やし、さらに格安航空会社の参入も増えた。結果、世界の航空旅客数は年々約5%ずつ増加している。
出典)国土交通省
2033年までの世界の航空旅客需要予測を見ると、アジア太平洋地域の伸びが顕著で、年平均+6.5%と急伸している。
出典)国土交通省
そのため、航空分野によるCO2排出量も輸送量とともに右肩上がりで増加、航空業界全体でCO2削減が急務となっているのだ。もちろん業界では、飛行機体の軽量化や燃費の改良、運航方法の改善によって省エネ化しCO2の削減の努力をしている。
その他の削減方法として、日本ではまだ耳慣れないが、すでに世界各国の航空会社では、従来の石油系ジェット燃料に替わる植物由来などのバイオジェット燃料による有償飛行が実施されてる。バイオ燃料を使うことで、石油由来の燃料よりCO2排出の大幅削減が期待できる。
出典)IATA(国際航空運送協会)の資料より株式会社ユーグレナ作成
そして日本では、成功すれば日本で初めての微細藻類のミドリムシなどを原料にしたバイオジェット・ディーゼル燃料の実用化を目指している会社がある。それが株式会社ユーグレナだ。
株式会社ユーグレナは2015年に「国産バイオ燃料計画」をスタートさせた。目標は東京オリンピック・パラリンピックの年の「2020年までに国産のバイオ燃料でお客様を乗せて飛行機を飛ばす」ことだ。国土交通省、経済産業省 定期航空協会、石油連盟などが参加する「2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けたバイオジェット燃料の導入までの道筋検討委員会」にて、官民協働で取組を進めている。
バイオ燃料製造実証プラントの建設のために、米国のChevron Lummus Global社とバイオ燃料アイソコンバージョンプロセス技術に関するライセンス契約を締結し、この技術を使用してバイオ燃料製造を目指すのだ。
出典)株式会社ユーグレナ
取材班は、株式会社ユーグレナ実証製造部長(実証プラント工場長)森山宏一郎氏に話を聞いた。
「この技術はライセンサーである、米国のChevron社とARA社が持っている二つのプロセスを合算させたものです。技術については、水の臨界点以上、超臨界条件で水と油を反応させることで動かすプロセスで、石油精製の中ではないプロセスになります。抽出した油の成分を改質して、できるだけ石油由来の燃料に非常に近い水準にするのです。それをバイオ燃料製造実証プラントで実証していきます。」
出典)株式会社ユーグレナ作成
©エネフロ編集部
今年10月末にはそのバイオ燃料製造実証プラントが竣工するとのことで、一足先に建設中の製造実証設備を取材した。ノウハウが詰まっている工場なので、撮影は禁止だったが、完成イメージ図にかなり近づいていた。工場自体の敷地面積は7,787㎡と意外とコンパクトだ。製造能力は日産5バレルで製造量は年産125klを想定している。建設工事に使われる発電機の燃料は、2012年に研究目的で製造したミドリムシを一部原料に使用したバイオジェット燃料という徹底ぶりだ。
提供)株式会社ユーグレナ
2019年前半のバイオジェット・ディーゼル燃料の生産は現実味を帯びてきた。原料となる燃料用のミドリムシや微細藻類の一部は、石垣島で生産される予定だ。また、三重県多気町の中部電力のグループ会社が運営するバイオマス発電所に隣接した場所に培養プールを設け、排水や二酸化炭素の供給を受け培養されている。三重の培養プールはあぜ型で、コンクリート建設された培養プールと比較して建設コストが約10分の1、建設工期は約4分の1だという。
環境には優しいバイオ燃料だが、一方でサトウキビ・トウモロコシ・パームから生成されるバイオ燃料は食料と競合するため食料価格の高騰を招くという課題もある。それに対し、ミドリムシのような藻類は、食料と競合することはない。それだけではなく、地上のCO2を吸収して成長するため、トータルとしてCO2の排出量が削減されたり、条件が揃えば一年中収穫できる、比較的軽質な油が取れるのでジェット燃料に精製しやすいなどのメリットがあるのだ。
提供)株式会社ユーグレナ
森山宏一郎工場長にさらに話を聞いた。
安倍バイオ燃料の一番大きなメリットはなんでしょうか?
森山一番のメリットは「人と地球を健康にできる」ことです。今後の航空機の需要のさらなる増加を考えれば、C02の削減にはバイオ燃料は必須です。国際的なニーズであり、日本の責任に寄与することだと思っています。
©エネフロ編集部
安倍「国産バイオ燃料計画」の進捗はどうですか?
森山予定通り進行しています。小さい実証プラントですが、工場一つ運営するには、基礎基準を作ったり当然プラントの運転マニュアルも作り込まなくてはいけないので、現在はそうしたソフト面に取り組んでいます。2020年代の半ばには商業化に移行したい計画です。
安倍商業化するには工場を作るスペースが必要ですよね?より多くの原材料の確保も。建設のサイトは海外もありうるのですか?
森山詳細は未定ですが、国内外でよりよい条件であれば、検討します。ちなみにですが、実証プラントの原材料は国産予定です。単純にミドリムシだけではなく廃食油や高等植物なども原材料です。商業化となると経済性も重視されるので、実証プラントでは廃食油や微細藻類などの比率を変えて、実証していきます。高等植物も原材料ですが、収量の経済性を考えないといけません。また、広大な土地も必要です。廃食油も集めやすいですが、みんなが買うと単価もあがります。いろんなものを選定しそれに合わせたプロセスを選定していきます。
安倍商業化に向けた今後の課題は?
森山水熱処理プロセスは、高温高圧の運転条件であるので、できるだけマイルドな条件で生産可能となれば、商業プラントの設計条件へ反映し、建設コストを抑えることも期待できます。製造面での技術の成熟度を高め、それにより事業全体にかかるコストを抑えていきます。そのプロセスが重要になっていきます。
©エネフロ編集部
「サスティナブルな循環型社会」を目指す企業こそ、今後生き残っていくのではないか。「人と地球を健康にする」ユーグレナの事業に期待が集まる。体長わずか0.05ミリの小さな個体。しかしその可能性は無限大だと感じた。
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