
写真)Aptera Solar EV
出典)aptera motors
- まとめ
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- EVの世界的普及が進行中、なかでも中国EVメーカーが台頭してきている。
- 日本のEV市場は成長途上。超小型EVの販売好調。
- 米で太陽光だけで一定距離走るモデルが開発された。今後はバッテリー技術が勝敗のカギを握る。
日本にいるとなかなか実感できないが、EVは世界で着実に普及している。特に2020年以降の伸びが顕著だ。IEA(世界エネルギー機関)によると、EV販売は2024年に約1,700万台に達し、世界で販売される自動車の5台に1台以上がEVだという。
2023年のEV販売台数の大部分は、中国(60%)、欧州(25%)、米国(10%)が占めている。現在の世界各国の脱炭素政策が続く限り、2030年の小型EV販売台数は3倍の4,300万台超に達し、小型車の総販売台数の40%を占めると予測している。
さらに、2035 年には、販売台数は6,000万台に達し、シェアはほぼ55%に達すると予測されている。また、小型EVの保有台数は、2030年には約2億4,500万台に達し、道路を走る小型車のほぼ6台に1台がEVとなり、2035年には小型EVの保有台数は5億500万台に増加、道路を走る小型車のおよそ3台に1台がEVになるという。
信じがたい予測だが、中国のEVメーカーBYDなどの好調さを見ると、実現不可能な数字でもない。

出典)IEA
一方、日本のEV市場を見てみると、2022年の日産の軽EV、SAKURAの発売で一時拡大傾向となったが、その後新型車種の投入もなく、停滞気味となっている。2024年のEV販売台数は102,868台にとどまり、2021年から3年間続いていた増加傾向から一転、大幅減少となった。前年の140,678台から26.9%の減少だ。

出典)EV Smart
そうした日本のEV市場では、超小型EVが注目を集めている。(参考:「EVは超小型の時代へ!?新規参入メーカー続々」2024.08.06)このmibotというモデルは、予約開始からわずか3日間で300台、約1カ月間で1,000台という予約台数を達成するほどの人気ぶりだ。
日本には、EVの小型~中型モデルの車種が少ないこともあり、普段使いの足として超小型EVが受け入れられたようだ。

出典)KGモーターズ
EVの弱点ー充電
mibotの航続距離はフル充電で約100km。日常使いなら十分だ。しかし、EVには充電の問題が絶えずつきまとう。まず、自宅に充電用コンセントを設置しなくてはならないため、初期投資がかかる。
また、外の急速充電器を使っても15分〜30分は必要だ。満タンにするのに数分で済むガソリン車とは違う。さらに充電スポットが少ない、という問題もある。遠出をするとなると、どこに充電スポットがあるかを事前に調べておかねばならず、面倒だ。
そうしたなか、充電問題から解放されるEVが誕生した。
それがAptera Solar EV だ。アメリカのスタートアップ企業 Aptera Motors が開発したEVで、太陽光発電だけで街中の走行が可能な3輪EVだ。
Aptera Solar EVの仕様
Aptera Solar EVが太陽光発電だけで街中を走ることができるのは、車両重量を大幅に軽量化したからだ。
それを可能にしたのがボディの材料。カーボン樹脂や、ガラス繊維強化ポリエステルを成型した、たった6つの部品で構成されている。F1カーや宇宙航空工学に見られる高度な製造技術や素材を採用した。これらの素材がボディの軽量化だけでなく、強度も高めた。従来の小型EVと比べ、重量は約65%軽く、空気抵抗は約50%しかない。

上から見るとわかるように、ボンネットからダッシュボード、ルーフ、そしてリアハッチまで太陽光パネルで覆われている。700Wの太陽電池の発電だけで1日最大約64km走ることができるという。もちろん、家庭用充電器や急速充電にも対応している。搭載している44kWhのバッテリーをフル充電すると走行距離は約643kmにまで伸びる。

乗車定員は2名だが、後部には約920リットルもの巨大な荷物スペースがある。サーフボードなどの長尺物や、バイクなどもすっぽり入る大きさで、通常のSUVよりもはるかに大容量だ。市内における日常の足ばかりでなく、レジャー用としても重宝しそうだ。
価格は標準モデルで約600万円(1ドル=150円換算)と少々高め。しかしながら、同社によるとすでに48,000台超を受注しているという。本格的な生産は今年後半になる見込みだ。
海外に輸出するかどうかは未定だが、米国以外でも一定の需要はありそうだ。


Aptera Solar EVは、「シティコミューター」という、今後のEVの一つの形だろう。今後もさまざまなEVのモデルが開発されるに違いない。
一方で、EV普及のカギはやはりバッテリーのコストだ。車両価格の約3分の1を占めるとされるバッテリーの大幅なコストダウンが図られない限り、EVの爆発的普及は見込めない。
日本の自動車メーカーも、全固体電池など次世代バッテリーの開発に力を入れているが、ライバルの中国EVメーカーや米テスラに先んじることができるかどうか、予断を許さない状況だ。EVの技術開発競争はますます激しさを増すだろう。
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