写真) VWの充電ロボット
出典) VW
- まとめ
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- 充電技術はEV(Electric Vehicle:電気自動車)普及の鍵を握る。
- 充電ロボットやワイヤレス充電などの開発競争激化。
- 日本もEVのインホイールモーターに直接充電するシステムを開発。
EV普及の鍵を握っていると言われているのが、充電技術。その進歩にはめざましいものがある。
各社は充電速度の向上と充電インフラの拡充に取り組んでいるほか、充電プロセスの自動化に注目しつつある。充電が自動化されれば商用EVを持つ企業は業務を削減でき、個人のEV所有者は利便性が増すうえに、いずれは自動運転車が勝手に充電できるようになるだろう。そんな近未来の社会にズームインする。
自動EV充電
EVといえば、充電スポットに行き、充電器の充電コネクタをEVの充電ポートに接続して充電しなければならないのが面倒くさいと思う人は多いだろう。
また、街中で充電スポットが増えたとは言え、ひとたび遠出して郊外にでも出たらPA(パーキングエリア)などで充電せざるを得ず、下手をしたら先客がいて充電の順番待ちを強いられるかもしれない。
こうした不便さを解消するため、世界では数多くのテック企業が、充電技術開発競争を繰り広げている。
充電ロボット
充電システムの課題の一つは車を充電スポットまで移動させなければならないことだ。
その解として、だったら充電する側が車に近寄って充電してしまえば良いじゃないか、との答えが導き出された。
そのために、ロボットアームや自律移動ロボットを使ったシステムの試作に数々の企業が取り組んでいる。これらのシステムはCCDカメラからの画像を分析することでさまざまな情報を得る(コンピュータービジョン)技術や自己位置推定(ローカライゼーション)技術を活用している。
充電ロボットアーム
真っ先にこうした技術に取り組んだのは、EV専業メーカーである米テスラ(Tesla)だ。
EVを自動で判別し、充電コネクタをEVの充電ポートに挿入するロボットアームの開発になんと、2015年頃から取り組んでいる。2015年にYouTubeの自社チャンネルに公開した、充電ロボットアーム「ロボティック・スネーク(仮称)」の試作品は当時メディアで大きく報じられた。
出典) Tesla
それから6年、世界のEVシフトは大きく進み、それに伴い、充電テクノロジーも進化している。
オランダの充電スタートアップ、ロクシス(Rocsys)はオランダのEVバスメーカーエブスコ(Ebusco)と提携し、EVバスに自動で充電できるシステムを開発し、既に実証実験がおこなわれている。
出典) Ebusco
エブスコは、ロボット自動充電のメリットとして、
・充電ポートに充電コネクタを接続することを忘れたり、正しく接続しなかったために充電されなかったりするリスクが減る。
・パンタグラフ式にくらべ、インフラ費用が安くつく。
をあげている。今後は、自動運転EVバス導入を視野に入れ、更にシステムを開発していくとしている。
自律移動充電ロボット
さらに一歩進んで、充電ロボットが自律的にEVに近づき充電するシステムもすでに、EV大国中国のEVメーカー愛馳汽車(AIWAYS)や、独フォルクスワーゲン(VW)らによって開発されている。EVがいちいち充電スポットに行かなくても済むので、充電の自由度は飛躍的に高まる。
独フォルクスワーゲン(VW)のシステムはバッテリーをロボットがEVまで運び、充電までセッティングしたら一旦離れる仕組みだ。充電が終わったらバッテリーを回収しにまた戻る。ロボットはバッテリーの運搬に特化しているので、駐車場に停っている複数のEVに順次、充電用バッテリーを届けることができるのだ。
ワイヤレス充電
こうしたロボットによる充電は十分にハイテクではあるのだが、それでも何らかの形でバッテリーとEVを接続しなくてはならない。物理的にロボットがロボットそのものを充電する設備とスペースが必要だ。それならワイヤレスで充電すれば良い、と考える人がいてもおかしくない。
エネフロでは過去記事(2019.3.19「社会が一変 「無線電力伝送」の実力」)で未来のモビリティの姿としてワイヤレス充電について触れているが、荒唐無稽な技術ではない。
EVをワイヤレス充電パッドの上に車を停止させて充電するシステムはすでに実用化されている。しかし、この技術も車を充電パッドまで移動させなければならない。先の充電ロボットと同じで、充電スペースを用意する必要があるという点で、コスト面で難がある。
そこで考えられたのが、走行中にEVのバッテリーに充電できたら一番効率が良いのではないか、というアイデアだ。道路に充電設備を埋め込み、EVが走行中に自動的に充電できれば、電欠(電池切れ)を心配することもなくなる。実はこの分野で日本は最先端を走っている。
東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻の藤本博志准教授は、道路からEVの「インホイールモーター(ホイール内に設置したモーター)」に直接充電するシステムを開発し、世界で初めて実車での走行に成功した。
実は現行EVはモーターを1つないしは2つしか搭載していない。駆動装置を介して各タイヤに駆動力を伝えるため、機械的ロスが大きいという問題がある。各ホイールにモーターがあれば、駆動力の伝達ロスを極限まで減らすことができる。駆動装置の重量も軽くなるし、バッテリーそのものも軽量化できるのだ。インホイールモーターに充電するメリットは大きい。
例えば高速道路で長距離EVトラックやEVバスに充電したり、街中では、信号手前で一時停車のEVに充電したりすることで、各EVの搭載バッテリーを小型化できる。
EVの車両価格の約20%はバッテリー関連部品が占めるといわれている。ワイヤレス充電により車載バッテリーが小さくなれば、車両本体の軽量化が図れるし、なにより価格が下がる。この技術が実用化されれば、EV市場に革命が起きる。大いに期待したい。
東京大学大学院新領域創成科学研究科 藤本研究室EVを巡り世界の自動車産業は産業革命以来の大変革を求められている。これから自動車メーカー以外の新規参入も増える中、EV周辺では新たなテクノロジーが次々と生まれていくだろう。日本の自動車産業もその流れに乗り遅れないようにしないと、国際競争力を失いかねない。
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