写真) 無人宅配ロボ「DeliRo」
出典) 株式会社ZMP
- まとめ
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- 2度目の緊急事態宣言下、コロナ社会に対応した最先端技術を支援する動きが加速。
- 三密回避のための様々なテクノロジーがオフィスや消費の現場で採用され始めた。
- アイデアと最新技術により、ニューノーマルな日常を充実させることが重要。
2度目の緊急事態宣言が出されて1カ月、収束の兆しが見えない新型コロナウイルスの感染拡大。医療崩壊も現実のものとなる厳しい状況となり、ますます私たち1人1人の意識と行動変容が強く求められるようになっている。
そうした中、内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策推進室とIT総合戦略室、内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)らが連携し、各府省庁を通じて新型コロナウイルスへの予防等に活用可能な新技術や、これらを用いた実証事業に関する情報を収集し、その効果的な導入・普及を推進していく取り組みが始まっている。
今回は、新型コロナウイルス感染症の拡大を止めると共に、ニューノーマルな日常を支える最新テクノロジーを紹介する。
非接触
新型コロナ感染症が拡大し始めてから、1年が経つ。様々な場所にアルコール消毒液や、サーモグラフィーが置かれているのが当たり前の風景になった。一方、未だに手を触れないといけない場所があるのも事実だ。
エレベーターの呼び出しボタンやクレジットカードの読み取り機、銀行のATMなどが典型的なものだろう。エレベーター開発製造大手のフジテック株式会社はエレベーターの非接触ボタン「エアータップ」を実用化した。
出典) フジテック株式会社
また、株式会社アスカネットが開発した「ASKA3Dプレート」は、物体から発せられる光を空間に集め、空中に映像を表示させる。この空中結像技術を使えば、実際のボタンに触れることなく、宙に浮かんだ映像をタッチして操作ができる。銀行ATMだけでなく、外食産業を始め、あらゆる業種のタッチパネルに応用できる。
出典) 株式会社広島銀行
日常の買い物で現金の受け渡しや、カード決済端末のボタンに触れることに抵抗感を持つ人は多いだろう。QRコード決済は、店舗側がリーダーで読み取ることで完結するので非接触といえるが、クレジットカード決済では店舗側の人間がカードを受け取って端末に差し込み、買い物客が暗証番号を入力する形式の端末がまだ多い。最近、かざすだけで決済ができる「非接触(タッチ)決済」型クレジットカードが増えてきたが、対応する端末が不足しており、普及にはまだ時間がかかるようだ。
三密回避
エレベーターの床に、人が立つ場所を指定するシールが貼られているのはよく見かけるようになった。狭いエレベーターに複数の人が乗っている場合、次のエレベーターを待つ人も増え、人々の三密回避行動の浸透を実感する。
一方、朝の通勤列車などでは三密回避は不可能に近い。日本では車内でほとんどの人がマスクをし、なるべく会話をしないようにするなど、マナーは守られているとはいうものの、体と体が触れるラッシュは心地よいものではないし、感染予防の観点からも好ましくはないだろう。
こうした中、東京都では出勤者数7割削減を目指し、「時差Biz」というキャンペーンをおこなっている。これに応えて一部鉄道各社は、時差通勤のポイント還元等を実施しているが、あまり効果は出ていないようだ。多くの企業でまだテレワークが十分に浸透していないことが一因だと思われる。
こうした中、パナソニック株式会社ライフソリューションズ社は、オフィスなどでの人の密集を避けることができる「密回避ソリューション」を提供している。
新型コロナウイルスは接触、飛沫、マイクロ飛沫などにより感染することがわかっているが、従来のオフィスでこれらを完全に防ぐことは困難だ。ビルの中には、ロビーの待合スペース、トイレ、喫煙室、更衣室、休憩所、カフェテリアなど、密になる場所はいくらでもある。
パナソニック株式会社ライフソリューション社が提案しているのは「屋内位置ソリューション」だ。GPSではビル内の人の位置は特定できないが、同社は天井に設置したスキャナが対象者の持つタグなどをBluetoothで検知するシステムを開発。建物内のどこに誰がいるか把握できれば、特定の場所が密になる前にスマホアプリなどで従業員にアラートを発することが可能だ。
監視カメラシステムや入退出管理システムと連携させれば、感染者が発生した場合、濃厚接触の可能性がある人にタイムリーに連絡することもできる。
また、エレベーターホールなどで列ができる場合、人と人との間隔を確実に2メートル確保するために、プロジェクターから床に映像を投影して注意喚起するシステムや、自律型ロボットが清掃したり除菌したり、人と人との接触を防止したりすることも提案している。
すでにこうしたテクノロジーを実装しているスマートビルがある。東急不動産が開発した「東京ポートシティ竹芝」(東京都港区)のオフィスタワーは、顔認証入館ゲートで非接触化を図っている。また、ビル内に設置された無数のセンサーにより混雑状況を把握、トイレやエレベーターや、館内飲食店の混雑状況の提供をビル内に勤務している人や入館者に対しておこなっている。
感染リスクを大幅に低減するこうしたテクノロジーは今後ますます拡大していくだろう。
© エネフロ編集部
リモート試着
さて身近な感染リスク低減のためのテクノロジーも続々開発されている。
おうち時間が長引き、気軽にショッピングに出かけられない日常を嘆く向きもあろう。家にいながらオンラインショッピングはできるが、試着ができないことから服の購入を諦める人も多いのではないだろうか。
そんな声に応えるべく、仮想カメラ技術を活用し、自宅にいながら服が試着できるサービスが誕生した。
例えば、ウェディングドレスの試着。これまでは店舗に行き複数のドレスを試着するのが当たり前だったが、今はそうはいかない。
そこで、株式会社ネクストシステムが開発したのが「リモート試着サービス」。「Kinesys」という最新テクノロジーが活用されている。
「Kinesys」は、Webカメラに映った人の動きをAIで検知するデジタルサイネージ(デジタル看板)だ。事前に利用者の全身が写った写真や動画を送信、店側が仮想カメラ(OBS Virtual Camera)に取り込む。その写真に衣装を合わせながらビデオ通話で店員に相談し、バーチャル試着をおこなうしくみだ。
外出がしにくい今、ウィズ・アフターコロナ社会でも活躍するサービスとしてアパレル業界は期待を寄せる。
■ 無人自動運転ロボット
最後に紹介するのは、人手不足が問題となっている配達業における最新テクノロジーだ。
中でも注目を集めているのが無人の自動運転配達である。アメリカではベンチャー企業Nuroの展開する自動運転配達がコロナ禍で活躍し、ビジネスが短期間で300%も拡大したという。Nuroは配達するものに合わせてカーゴスペースの温度調節も可能で、コロナ禍では処方された薬を配達するサービスも開始した。
出典) Nuro
日本では、日本郵便が株式会社ZMPと共に自動運転無人宅配ロボ「DeliRo」を開発、すでに公道走行実証実験もおこなった。
「DeliRo」には
その他にも、
出典) 株式会社ZMP
感染収束の兆しが見えない中、ストレスや閉塞感を感じている人も多いと思う。しかし、長い闘いが予想されるコロナ禍だからこそ、アイデアと新しい技術を活用して、ニューノーマルな日常を実現させていくことが大事なのではないか。それが、私たちの健康を守り、快適な生活を実現し、さらに業務を効率化させて、新たなビジネスを生むことにつながるだろう。
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