写真) オリンピック2006
出典) White House
- まとめ
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- 東京2020オリンピック・パラリンピックはSDGsに取り組んでいる。
- 東京都と組織委員会、カーボンオフセットのクレジットと市民によるCO2削減・吸収活動募集中。
- 気候変動対策は一人一人の行動から。
最近よく聞くSDGs(エスディージーズ)。「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称だ。2015年の国連サミットで採択され、全ての国連加盟国が2016年から2030年の15年間で達成することを目標にしている。17の目標をカラフルに描いた下の図をご覧になったことがある方も多いのではないだろうか。
出典) 国連広報センター
前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)では、先進国は途上国の開発を援助するという位置づけだったのとは対照的に、SDGsでは先進国も含めたすべての国が主体的に取り組むことが求められている。SDGs達成のためには、全世界で、政府、市民社会、民間セクターを含む様々なアクター(主体)が連携して、経済・社会・環境の全ての課題に対して統合的に対応する必要があるのだ。
日本のSDGs
これまで日本では、民間や自治体レベルでの取組みを促進するために、優れた取組みを行う企業・団体等を表彰する「ジャパンSDGsアワード」や、SDGs達成に向けた取組みを先導的に進めていく自治体「SDGs未来都市」の選定などが行われてきた。当編集部も以前、環境モデル都市に認定されている愛知県豊田市を取材に行った。( 記事参照:エネルギーと環境 Vol.09 “つながる つくる 暮らし楽しむまち・とよた” の実現 豊田市「SDGs未来都市」計画 )
各自治体がSDGsの視点を取り入れ、新たな産業の創出と持続可能な社会づくりの貢献に取り組んでいる。 しかし、日本のSDGs進捗度は必ずしも高くない。2017年に国連のシンクタンクである持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が発表した世界各国のSDGsへの取組み進捗度を評価したランキングでは、日本は11位にランクインしたものの、5.ジェンダー平等、12.持続可能な生産と消費、13.気候変動への取組みなど5つの項目で低評価にとどまった。
そうした中、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)開催に向けて、SDGs達成のための様々な取組みが行われている。東京2020大会はSDGsに向けて国連と五輪大会組織委員会が提携する初めての大会で、大会の持続可能性コンセプトは「Be better, together / より良い未来へ、ともに進もう。」。主要テーマは5つだ。
今回はその中で、エネルギーや環境に直接関わる「資源管理」と「気候変動」について見ていく。
© Tokyo 2020
資源管理
「資源管理」では、資源を一切ムダなく活用し、資源採取による森林破壊・土地の荒廃や廃棄による環境負荷をゼロにすることを目指している。「日本の木材活用リレー~みんなで作る選手村ビレッジプラザ~」では、再生可能な資源の利用を促進している。
この中で、「全国の木材で一つの建物を作ることで、オールジャパンの大会参画を実現し、各地の木材を建物の様々な箇所に使うことで多様性と調和を表現。 また、国産木材の使用は林業の再生など、持続可能な森林の保全に寄与するとともに、各地域において大会参画の証が残されるようにレガシーとして活用することで環境負荷を低減し、持続可能性の実現を目指す。」としている。
気候変動
主要なテーマである「気候変動」で取り組む脱炭素社会の実現は、再エネ電力による大会運営、競技会場の省エネルギー化等で、持続可能な開発目標の以下3点に貢献する。
- 7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 13.気候変動に具体的な対策を
- 17.パートナーシップで目標を達成しよう
また公共交通機関や燃料電池自動車の活用により、環境負荷の少ない輸送も推進されている。
出典) 東京都
東京2020組織委員会によれば、東京2020大会の準備・開催で排出されるCO2の量は、対策なしの場合、301万トンに上る。しかし、脱炭素化のため、大会開催に伴うCO2排出量を実質ゼロにすることが目指されている。すでに、会場の新規建設を約4割に抑えたことで8万トンが削減されている。
今後は、新たに建設する会場で高い省エネルギー水準を確保したり、競技会場や選手村等の関連施設では再生可能エネルギー電力を全面的に使用したりすることで、さらなる削減を目指す。どうしても削減できなかった分については、カーボンオフセットの実施が期待されている。
カーボンオフセットとは、日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、できるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせる考え方のことだ。
東京2020大会においては、東京都と埼玉県がすでに民間からクレジット(注1)を募集しており、東京2020年大会までの期間、いずれも1トンから受け付けている。
出典) 農林水産省HP
募集を受け付けている東京都は「ホストシティとして、大会開催に伴う排出量を限りなくゼロにする取組みへの協力を、今後の大会のスタンダードとすべく、パリ市等にも呼び掛けていきます。」と意気込む。
省エネ活動の全国展開
東京2020組織委員会は、大会をきっかけとして、省エネ活動の全国への広がりを目指しており、「東京2020大会における市民によるCO2削減・吸収活動」も募集している。
参加を希望する組織・団体は、「東京2020参画プログラム」を通じて申請する。申請時にどのような取組みを行うのかを申告し、活動終了後にもう一度結果を報告する流れで、2020年9月30日までの活動期間が対象となる。
これまでに申請されている活動の一例を紹介しよう。
「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」
使用済みのスマ―トフォンや携帯電話、PCなどの小型家電を回収し、オリンピック・パラリンピックで選手に授与するメダルを作成するプログラム。金・銀・銅合わせて約5000個のメダルが製作される予定だ。小型家電の回収を国民から募り、都市鉱山に眠る金属でメダル製作を行うプロジェクトはオリンピック史上初の試みだという。
© Tokyo 2020
Zero Carbon Yokohama(ゼロ・カーボン・ヨコハマ)
横浜市は、再エネ資源を豊富に有する12市町村と、再エネに関する連携協定を締結した。2050 年を見据えて「今世紀後半のできるだけ早い時期における温室効果ガス実質排出ゼロ(脱炭素化)の実現」を目指すとしている。
出典) 横浜市
くまもとのBDF
熊本県が県民から家庭廃食油(使用済み天ぷら油)を回収し、地域のエネルギー(BDF:バイオディーゼル燃料)として活用することで、CO2排出を削減する取組みを推進している。これは、「東京2020応援プログラム(持続可能性)」の認証を受けている。
出典) 熊本県
新宿「みどりのカーテン」
新宿区が地球温暖化やヒートアイランド対策の一環として区民や区有施設に対し、ゴーヤやアサガオを使ったみどりのカーテンの育成を呼びかけてCO2削減・吸収活動を行う活動などがある。
出典) エコギャラリー新宿
東京オリンピックの復興支援
また、脱炭素化といえば、当編集部でこれまでも取り上げてきた、水素エネルギーの実用化構想に触れないわけにはいかない。
日本が世界に先駆けて水素社会を実現すべく決定した「水素基本戦略」に則って、福島県浪江町では現在、再生可能エネルギーを使って水素を製造する世界最大級の設備、「福島水素エネルギー研究フィールド(Fukushima Hydrogen Energy Research Field(FH2R)」が建設中だ。
出典) NEDO
FH2Rは今年10月までに本システムの建設を完了させ、試運転を開始し、2020年7月頃に技術課題の確認・検証を行う実証運用と水素の輸送が始まるという。生産された水素は東京2020大会開催中には東京でも活用される予定次第だという。
福島で作られた水素エネルギーをオリンピック・パラリンピック大会で使うことは、エネルギーの未来を改めて考えるきっかけを国内外に示すことになる。五輪後のFH2Rの運用・水素を含めたエネルギーシステムの構築まで、編集部は引き続き見ていきたい。
奇しくも、パリ協定がスタートする2020年。五輪大会開催に向けた私たち一人一人の意識や行動が、世界最大級のスポーツイベントを、それ以上の意味を持った大会にするだろう。東京2020大会が掲げるビジョンは「スポーツには世界と未来を変える力がある」。日本がどのような変化の可能性を示せるのか、私たちにかかっている。
- クレジットの定義:削減対策の実施等によって得られたCO₂の削減量であって、認定等を経ることによって 第三者との取引を可能としたもの(東京都環境局)
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