- まとめ
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- エネルギーとは「仕事をする力」、代表選手は「電気」
- 世界も日本も「化石燃料」が多く消費されている
- 震災後、電気料金は25%アップ、再エネも家庭負担に
「エネルギー」とは?
「エネルギー」とはなんですか?と聞かれて即答できる人はどの位いるでしょうか?「エネルギ―=『電気』では?」と考える人は案外多いかもしれませんね。実は、エネルギーとは、「仕事をする力」(モノを動かす能力)のことをいいます。そのエネルギーには「熱を出す」、「光らせる」、「動かす」、「音を出す」の4つの働きがあります。
そして、エネルギーには、光エネルギーをはじめ、電気エネルギーや位置エネルギー、運動エネルギー、熱エネルギーなど、さまざまな種類があるのです。これらのエネルギーはお互いに姿を変えて「変換」することが知られています。その中で電気エネルギーは「変換」上手。熱になったり、光になったり、動力になったり、音や映像になるなど、変幻自在なので、エネルギ―といえば「電気」と思ってしまうのも無理はありません。電気のどの働きも、私たちの生活になくてはならないものなのです。
ではエネルギーを生み出す「元」、すなわち「資源」にはどんなものがあるでしょうか?「石炭」、「石油」、「天然ガス」といった「化石燃料」がまず頭に浮かびます。それらに加え、「水力」、「太陽」、「波・潮」、「風」、「地熱」、「木材」、「原子力」などもあります。人はあらゆる資源からエネルギーを得て、経済を発展させてきたんですね。
私たちは「エネルギー」のことを知らなさ過ぎました。でも、「エネルギー」は私たちの暮らしから、切っても切り離せない存在です。家計にとっても、日本経済にとっても、「エネルギー」にかかるコストはとても大切です。私たちの暮らしに欠かせない「エネルギー」のことをもっともっと知ってもらいたい。そんな気持ちから“Energy Frontline”(エネルギー・フロントライン:略してエネフロ)は誕生しました。日本語の意味は「エネルギー最前線」。「エネルギー」にまつわる最新情報を皆さんにお届けし、これから一緒に「エネルギー」について考えていきたいと思います。コンセプトは、「読んで、観て、ためになる」。ここにくればワンストップで「エネルギー」について理解を深めることが出来る。そんな全く新しいメディアを目指します。
意外と多い「石炭」 世界のエネルギー需給
「エネルギー」の元=資源は今どのような割合で使われているのでしょうか?ここで下のグラフを見て下さい。「世界のエネルギーの消費量の推移」を表しています。ご覧のように「化石燃料」が8割を占めています。一番多いのが「石油」で、その次が昔から使われている「石炭」なんです。そして「天然ガス」と続きます。その他は、「水力」、「原子力」、「再生可能エネルギー」などとなっています。「化石燃料」がいかに人類にとって重要なものかよくわかります。
- ※ toeはtonne of oil equivalentの略であり原油換算トンを示す。
- (出所)IEA, Energy Balance 2012をもとに作成
- 出典:経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー需給の概要」より
次に、国別の「主要国一次エネルギー消費構成と自給率(2013年)」を見てみましょう。新興国は経済成長を重視し、燃料は比較的安くて手に入れやすい(自国で産出される)ものを使う傾向にあります。ですから中国やインドは「石炭」の比率が大きいのです。
一方アメリカは、中国、インドに比べて「天然ガス」の比率が高いのが図からわかります。これは近年技術革新が進み、地中3000メートルの大深度から採掘が可能になった「シェールガス」という天然ガスの一種が増えてきているからです。
- 出典:OECD/IEA
- 引用:一般社団法人海外電力調査会「主要国の一次エネルギー消費構成と自給率(2013年)」より
このように、世界ではまだまだ「化石燃料」の比率が高いですが、新興国、とりわけ中国とインドでは、旺盛な電力需要に応えるため、「原子力」の比率を高めようとしています。以下は両国が建設中の原子力発電所の数と、建設予定の数です。実際はもっと多いとも言われていますが、中国、ロシア、インドで多いことが分かります。
Nuclear Energy Institute(NEI:米・原子力エネルギー協会)
“Annual Update on Nuclear Energy in America”より編集部作成)
「化石燃料」は燃やす時、CO2(二酸化炭素)が発生します。「石油」や「天然ガス」に比べ、「石炭」が一番CO2排出量が多いのです。そうした中で、旺盛な電力需要に応えるため、さらには、環境面からCO2が出ない「原子力」に新興国がシフトするのはある意味当然のことだと言えます。
日本も実は「化石燃料」中心
3.11以降ほとんどすべての原発が停止している日本。現在、頼みの綱は火力発電です。火力発電の燃料は、「石炭」、「石油」、「天然ガス」です。以下の図を見てみましょう。時系列的に電源構成の推移が分かります。電源構成というのは「電気が作られる方法の割合」のことをいいます。
出典:経済産業省資源エネルギー庁「日本の電源構成の推移」より
この図を見ると、日本の「化石燃料」の比率は、2014年度で、87%近くに達しています。2010年度は訳61%だったのに比べ大幅に増えています。なぜそんなに「化石燃料」の比率が高くなったのかといえば、2011年3月の東日本大震災後、日本はほぼすべての「原子力」発電所を停止しているからです。震災前54基あった原発は、今九州電力の川内(せんだい)原発で2基(1・2号機)四国電力伊方原発1基(3号機)の3基が稼働しています。(2017年3月時点)
政府は、2030年までに「再生可能エネルギー(再エネ)」、つまり「太陽光」や「風力」などの自然エネルギーの比率を高めていく、としていますが、当面は「化石燃料」に頼らざるを得ないのです。
さて、その「化石燃料」頼みの日本に重くのしかかるのは、「燃料費」です。資源のない日本は、「化石燃料」はほぼ100パーセント輸入に頼らざるを得ません。燃料輸入に日本がいくら払っているかというと、実に27.7兆円・年(2014年度)にも上ります。時系列的に見たのが下の図です。震災後右肩上がりで増えているのが分かります。
出典:経産省「通商白書2015年」第1章 我が国の対外収支動向より
この燃料費は当然、私たちが払う電気料金に反映されます。震災後の4年間で、家庭向けの電気料金の平均単価は約25%、工場やオフィス等産業向けは40%近く上がっています。これは家庭や産業にとって大きな負担となります。
【出典】電力需要実績確報(電気事業連合会)、各電力会社決算資料等を基に経済産業省エネルギー資源庁作成平成27年11月18日作成資料より
また、政府は「再エネ」の比率を増やすために、「再生可能エネルギー固定価格買取制度」を創設しました。簡単にいうと、「再エネ」の比率を高めるために、一定期間一定価格で「再エネ」発電の買い取りを保証する仕組みを導入したということです。長期間の利益を最初から国が保証するわけですから新規参入が増えるのは自明の理、いわば「再エネ」比率を高めるための政策誘導なのです。
その買取りのための原資はだれが負担しているかというと、私たち国民なんですね。皆さんのところに毎月「電気ご使用量のお知らせ」という通知が届くでしょう?おそらくほとんどの人が「請求予定金額」のところしか見ないと思いますが、よく見ると「再エネ発電賦課金等」などという項目があります。正式に言うと「再生可能エネルギー発電促進賦課金」です。おおよそ電気料金の一割程度が上乗せになっていることが分かります。是非一度よく見てみてください。
この「賦課金」は今後「再エネ」発電を増やしていくと、それに連動して高くなります。再エネ先進国で知られるドイツの再エネ賦課金は、毎月平均的な家庭(月300kwh)で2500円くらい、年間で30,000円(独 NETZTRANSPARENZ.DE:送電系統運用者による公表用サイト調べ)に上るなど、かなりの負担となっています。日本も今後どうしていくのか、議論が必要でしょう。
“エネフロ”のこれから
どうでしょうか?意外と身近だと思っていた「エネルギー」について知らないこともあったのではないでしょうか?“エネフロ”は、こうした「エネルギー」を取り巻く素朴な疑問に答えると同時に、刻一刻と変わっていく世界のエネルギー最新情報を皆さんにわかりやすく、かつタイムリーに届けるために生まれました。
私たちは、みんなが自分で考え、自分で判断できるための情報を提供するメディアを目指します。皆さんから「こんなことをもっと知りたい!」といったリクエストにもどんどんお答えしていきます。“エネフロ”のこれからにどうかご期待ください。
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