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エネルギーと環境

Vol.33 使い捨てプラ容器禁止の波、日本にも

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出典)© EKM-Mittelsachsen/Pixabay

まとめ
  • 海洋プラスチックごみの原因となる使い捨てプラ容器、世界で規制の動き。
  • EUは2030年までに使い捨てプラ容器ゼロを目指し、段階的な規制を進める。
  • 日本では新法案が今年成立、使い捨てプラ容器の規制が本格化する。

過去記事でも何回か取り上げたように、世界的に問題となっている深刻な「海洋プラスチックごみ問題」は、日本でも大きく取り上げられるようになってきた。(参考記事:エネルギーと環境 Vol.11 対策急げ!プラスチックごみ問題エネルギーと環境 Vol.14 バイオプラスチックは環境問題の救世主?

記憶に新しいのは昨年7月のレジ袋有料化である。総務省によれば、廃プラスチックに占めるレジ袋の割合は2%程度と高くないが、日常生活に深く浸透しており、私たちがプラスチックごみの削減について考えるきっかけにはなった。

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出典)© cocoparisienne / Pixabay

こうした中世界は、「使い捨てプラスチック容器(以下、使い捨てプラ容器)」の規制に動いている。すでに、EU(欧州連合)では使い捨てプラ容器が禁止され始めた。今回は、国内外で使い捨てプラ容器を巡ってどのような動きがあるかを紹介したい。

使い捨てプラ容器による汚染状況

プラスチックごみというと、ペットボトルのイメージが強いかもしれない。しかし、実際には使い捨てプラ容器など(下のグラフの「その他のプラスチック製容器包装」)が約7割を占める。

グラフ)プラスチックごみの内訳
>グラフ)プラスチックごみの内訳

出典)プラスチック循環利用協会

日本容器包装リサイクル協会年次レポート(2021)によれば、2018年度のペットボトルのリサイクル率は85.8%なのに対し、プラ容器は46.4%だ。リサイクルが十分進んでいないことが分かる。プラスチックごみの削減には使い捨てプラ容器へメスを入れることが不可欠なのだ。

EUの使い捨てプラ容器削減の動き

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出典)© sergeitokmakov / Pixabay

EUは、使い捨てプラの対応ではフロントランナーだ。

2018年に発表した欧州プラスチック戦略で、「2030年までに全てのプラ容器をリサイクル可能とし、使い捨てプラスチック製品を段階的にゼロにする」ことを掲げた。

使い捨てプラスチックへの対応として2019年7月に「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令」が発効し、2021年7月からすでに一部適用が開始されている。

禁止対象は海を汚す上位品目が選ばれた。具体的には、綿棒の軸や、カトラリー(ナイフ、フォーク、スプーン、箸)、皿、ストロー、マドラー、風船の柄、発砲スチロール製食品容器などだ。この規則が全面適用されれば、海洋ごみが7割減ると予測されている。

図)EUで2021年7月から規則の適用対象となった使い捨てプラスチック製品
図)EUで2021年7月から規則の適用対象となった使い捨てプラスチック製品

出典)経済産業省

他国のケース

欧州各国のみならず、世界各国で使い捨てプラスチック製品を減らそうとする動きが加速している。

カナダは2030年までにプラスチックごみをゼロにすることを目指すゼロ・プラスチック・ウェイスト(Zero Plastic Waste)を発表している。2021年末からストロー、ナイフやフォーク、リサイクルできないプラ容器など6種類の使い捨てプラスチック製品を禁止する。

プラスチックごみの排出量が世界最大の中国は、使い捨てプラスチック製品の生産・販売・利用を、2025年までに段階的に制限・禁止していく計画を2020年に発表した。

日本貿易振興機構(JETRO)によれば、2021年3月にオーストラリア政府が発表した「国家プラスチック計画(National Plastic Plan)」においても、取り組むべき5つの分野の1つとして「特に問題のある特定のプラスチック製品の段階的廃止」が挙げられている。

新興国でも同様な動きが活発化している。インドのモディ首相は、2019年10月、「クリーン・インディア」(衛生環境の改善を掲げるスローガン)の一環として、プラスチック製カップ、ストロー、皿、ビニール袋、小型ペットボトル、特定の個別包装などの6種類の使い捨てプラスチックの利用を2022年までに全国で禁止することを宣言した。2018年4月時点で、すでにインドの17州で同様の規則が出されている。

日本の現状と課題

さて我が国の対応はどうだろうか?

2019年のG20で共有された、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにすることを目指す「大阪ブルーオーシャンビジョン」やその実現のための「マリーン(MARINE)・イニシアティブ」、2020年の「第2次G20海洋プラスチックごみ対策報告書」のとりまとめの支援など、日本でも海洋プラスチックごみ削減に関わる動きが活発になってきた。

図)循環型社会を形成するための法体系
図)循環型社会を形成するための法体系

出典)経済産業省

国内では、冒頭で紹介したレジ袋の有料化に加え、2021年6月に「プラスチック資源循環法プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案)」が成立した。①設計・製造段階 ②販売・提供段階 ③排出・回収・サイクル段階 それぞれの段階での指針で構成されており、2022年4月からの施行を目指し、具体的な法整備が進められている。

図)プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案の概要
図)プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案の概要

出典)環境省

対象となるのは、スーパーやコンビニなどの小売業、持ち帰りや配達を含む飲食業、外食チェーン店、ホテルや旅館の宿泊業、クリーニング店など。対象となる業種に該当し、かつ年間5トン以上の使い捨てプラスチック製品を提供する事業者に対して、削減が義務化される。また対象となる特定プラスチック製品の12品目は以下のとおり。

対象者 対象商品(12品目)
スーパー・コンビニ・飲食店・百貨店など フォーク、ナイフ、スプーン、マドラー、ストロー
ホテル、旅館など 歯ブラシ、ヘアブラシ、クシ、カミソリ、シャワーキャップ
クリーニング店など ハンガー、衣類カバー

対象のプラスチック製品を現在無償で提供している企業は、早急な対応を迫られている。 国が推進する具体的な方法には、プラスチック製品の有料化、辞退者へのポイント付与、消費者の意思確認、プラ使用量が少ない製品の提供、木製やリサイクル素材などの代替製品への切り替えなどがあり、いずれかの対応が必要になるという。

これまで無償だったものが有料化されるため、損をしたくない気持ちが働いたり、環境配慮への意識が高まったりすることで、行動にも変化が生じるのではないだろうか。

レジ袋有料化でマイバックが急速に浸透したように、例えばコンビニやスーパーのお弁当を購入する際、マイスプーンやマイフォーク、マイ箸を持ち歩く人が増えることが予想される。

2018年に環境省が立ち上げた「プラスチック・スマート -for Sustainable Ocean-」キャンペーンは、企業から個人まで幅広い主体の使い捨てプラスチックの削減やリサイクルに関わる取り組み(略称プラスマアクション)を発信し、その動きを広げていこうという趣旨のものだ。2021年10月12日現在、2397件のプラスマアクションが登録されている。

例えば、無料給水場所が分かるアプリ「mymizu(マイミズ)」。どこで給水できるかがわかれば、マイボトルを持ち歩く人が増え、ペットボトルの削減につながるだろう。

写真)mymizuのアプリの利用イメージ
写真)mymizuのアプリの利用イメージ

出典)mymizu

また、株式会社パイロットコーポレーションの油性ボールペン『スーパーグリップG オーシャンプラスチック』は、ボディの一部に海洋プラスチックごみからリサイクルした再生樹脂を使用している。またその他の部分についても、リサイクル素材を使用したエコマーク認定商品及びグリーン購入法適合商品となっている。

画像)スーパーグリップG オーシャンプラスチック
画像)スーパーグリップG オーシャンプラスチック

出典)株式会社パイロットコーポレーション

今後、さまざまなアイデアで使い捨てプラ削減をビジネス化する動きが加速しそうだ。

2020年の日本の廃プラスチックの輸出量は約82万トンで、2014年の約167万トンと比べるとおよそ半分に減少した。しかし、依然として日本がアメリカやドイツと並ぶ廃プラスチックの輸出大国であることには変わりない。今後、輸出はますますしにくくなると考えられるため、廃プラスチックの削減が急務であろう。

世界各国で急速に進むプラスチック削減の動き。今後、日本でも使い捨てプラ容器にEUのような厳しい規制が始まる可能性がある。スマプラキャンペーンなどのように、1人1人がプラスチック削減に対して関心を持ち、小さな取り組みをしていくことが重要なのではないだろうか。

安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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エネルギーと環境は切っても切れない関係。持続可能な環境を実現するために、私達は「どのようなエネルギー」を「どのように使っていくべき」なのか、多面的に考える。