写真) 秋刀魚 イメージ
出典) jetalone
- まとめ
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- 秋の味覚、サンマの漁獲量が激減、温暖化の影響も。
- 今年の長雨、低気温の影響で旬の果物の価格も高騰。
- 気候変動の影響はあらゆる食物に及んでいる。
9月も終盤に差し掛かり、いよいよ秋の気配が強まって来た。気候変動の影響と思われる豪雨被害や新型コロナ感染症拡大と、2020年の社会は様々な変化に見舞われている。
そうした中、スーパーに並ぶ秋の味覚にもちょっとした変化が現れている。
秋刀魚(サンマ)の大不漁
秋の味覚の代表である秋刀魚(以下、サンマ)。日本が漁獲するサンマは、黒潮周辺の海で生まれ、親潮水域にあるエサを求めて北上する。産卵や南海回遊のために栄養をつけた後に、やがて親潮の流れと共に南西へと移動する。この時期が8月半ばから11月頃、いわゆるサンマの季節である。(全国サンマ棒受網漁業協同組合より)
出典) 全国サンマ棒受網漁業協同組合
しかし、昨年(2019年)の水揚げ量をみると、過去にみない不漁だった。全国サンマ棒受網漁業協同組合(東京)によると、昨年の水揚げ量は、前年同期に比べて約7割減の3万7715トンと過去40年近くで最低を記録している。1960~70年代には年間水揚げ量が40~60万tに達していたこともあるというが、過去20年では2008年の約35万tをピークに毎年減少し続け、遂にはその約10分の1になってしまったのだから衝撃だ。
出典) 全国サンマ棒受網漁業協同組合
上の回遊ルートの図からも分かるように、日本のサンマ漁は、北太平洋の温帯・亜寒帯域から日本近海に南下してくるのを待って漁獲している。水揚げの激減の原因は、回遊するサンマが日本の漁場にたどり着く前に中国や台湾が漁獲するためとの見方もあるが、温暖化による海水温上昇の影響を指摘する説もある。
水産庁は今年8月から12月までの漁獲量が昨年をさらに下回ると予測している。こうした中、北太平洋漁業委員会(The North Pacific Fisheries Commission :NPFC)は、昨年の年次会合で、サンマの漁獲数量規制に関し、2020年漁期におけるNPFC条約水域(公海)への漁獲割当量を33万トンとする事で合意した。
また、各国の公海での漁獲量が2018年の漁獲実績を超えないよう管理することや、今年の年次会合で漁獲割当量の国別配分が検討されることが決まったが、新型コロナ感染症拡大の影響で、今年の会合は来年に延期されている。
いずれにしても、サンマの漁獲量が減っていることは確かであり、マグロ同様、サンマも国際的に管理していかねばならなくなっているようだ。
松茸が豊作?
出典) No.108,109
さて、秋の味覚のもう一つの代表格が「松茸」(以下、マツタケ)だ。今年は長雨の影響で野菜の価格は全般的に高値で推移しているが、夏に出回る「土用(どよう)マツタケ」は逆に豊作だ。毎年7月から8月の土用の時期に採れるのでこの名がついた。土用マツタケは水分が多く気温が低いという条件下で生育するため、今年は7月上旬には市場に出回り始めた。長野県JA上伊那管内では、昨年の7月、8月の出荷量に比べ、7月単月ですでに昨年の7,8月2ヶ月分の出荷量の30倍になったという。秋の収穫にも期待がかかる。気候の影響はかくも大きいと言わざるを得ない。
果物への影響
一方、旬の果物は軒並み高値となっている。こちらは、新型コロナウイルス感染症拡大による「巣ごもり」需要に加え、7月の長梅雨と8月の猛暑の影響で生育が進まなかったためだ。
9月上旬の果物の価格を見てみると、対前年同旬比で大幅に値上がりしているのがわかる。
りんご | 116.8% |
---|---|
なし | 151.3% |
ぶどう | 110.0% |
甘かき | 160.2% |
(農水省青果物卸売市場調査 主要卸売市場計 令和2年9月上旬)
りんごの中でも青森産の「ふじ」は、229.6%と倍以上になっている。
出典) Scott Bauer, USDA ARS
出典) Pixabay
実際、果物は気候変動の影響を受けやすい。
令和元年産の日本なしの収穫量及び出荷量は、その前年産と比較し10%、ぶどうは1%減少した。(農林水産省より)
出典) 農林水産省
そもそも永年性作物である果樹は、気候変動による適応能力がとても低い。また、一度植栽すると30~40年栽培することになるため、気温の低かった1980年代から同じ樹で栽培されている品種が多い。また、栽培法も変わっていない。その為、1990年代以降、気候変動の影響でじわじわ上がっている気温に適応できていないのだ。(神奈川県気候変動センターより)
高温や日射時間が増えると、ぶどうは萌芽が遅れたり、日焼けによる果皮の変色、また着色不良などが発生したりする。ウンシュウミカンでは、果皮と果肉が分離する、いわゆる浮皮(うきかわ)と呼ばれる現象等もみられる。(農林水産省「気候変動の影響」より)
出典) 農研機構
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門 園地環境ユニット長の杉浦俊彦氏によると、散水や遮光ネットなどの対策はあるが、人手不足や高いコスト等の問題が立ちはだかり、なかなか導入が進まないという。
今後考えうる対策としては、「コストを抑えた技術や方法の開発」と共に、「高温でも育てやすい品種の導入や、亜熱帯果樹の研究・導入など、温暖化の問題を長期的な視点でとらえ準備を進めることも重要」だと主張している。(農林水産省「気候変動の影響」より)今後は生産地を気温の低い北の地域に移さなくてはならなくなるかもしれない。
実は、気候変動の影響で、欧州各国でよいワインが作れなくなっているという話がある。これまでの産地であるフランス、スペイン、イタリアなどの主要産地の平均気温が年々上昇しているのだ。
そこでフランスの老舗ワイナリーが目を付けたのが北海道。仏、ドメーヌ・ド・モンティーユ社は、函館市に現地法人「ド・モンティーユ&北海道」を立ち上げ、2019年7月に苗木を植樹、収穫は2023年頃になるという。
出典) 北海道農政事務所
私たちが普段口にする様々な食べ物が気候変動の影響を受けている。市場の価格の変動から、作物の収穫にどのような影響が出ているのか、食卓での団らんで話題にしてみたらいかがだろうか?
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