写真) オンライン法要の様子
出典) 真言宗豊山派宝性寺
- まとめ
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- 新型コロナウイルスの影響で新しいオンラインサービスが続々登場。
- 法事やお墓参りなどの宗教儀礼、芸術や旅行もオンラインサービス始まる。
- 今後も様々な分野で創意工夫が求められることになりそうだ。
毎日うだるような暑さが続く中、お盆の時期を迎えた。例年なら帰省や旅行で各地の観光地は賑わいを見せるが、今年は家で過ごした人も多かったのではないだろうか。今回はウィズ・コロナの時代に現れた、様々なオンラインサービスについて紹介する。
法事
お盆は1年のうちで最も法事が行われる時期だが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から法事を控える動きが目立った
大正大学地域構想研究所・BSR 推進センターが5月に全国の寺院を対象に行ったアンケート調査によれば、9割近い寺院が「法事自体の中止や延期」(87.8%)、「参列者の人数が減った」(86.7%)と回答した。
法事を行う際には、換気や消毒の徹底、会食の中止、焼香と読経の時間を分ける、参列者は焼香のみ行う、等の感染予防策が取られているが、どこまで対策を取るべきか悩む寺院も多いという。また、離れた場所に住む親戚は依然として参加が難しいという問題もある。
新たな対応策として注目を集めているのが「オンライン法事」だ。寺院で行われている法事の様子をインターネットで中継し、親族は自宅のパソコン上で視聴しながら手を合わせる。
出典) 築地本願寺提供
緊急事態宣言中にいち早くオンラインの法事(築地本願寺では「オンライン法要(読経)」と呼んでいる)を始めた東京都中央区の築地本願寺では、お布施は銀行振込で、申し込み後、テレビ電話アプリのログインに必要な情報が送られてくる。当日は家族がPC画面の前に集まり、法話も含めて30分ほどオンラインで参拝する。
出典) 築地本願寺提供
また築地本願寺では、築地本願寺公式Youtubeチャンネルも開設しており、築地本願寺の朝夕のおつとめの生中継や、僧侶が仏教の教えを分かりやすく解説する『お坊さんのお話』などを配信している。
出典) 築地本願寺提供
先ほどのアンケートによれば、224件中112件の寺院が「オンライン対応を実施または検討中」であり、法事の動画配信やSNS上での法話の配信、テレビ電話アプリを利用した住職への相談会などが検討・実施されている。
また今年帰省が難しい人に役立ちそうなのが「オンライン墓参り」だ。広島県福山市の墓石店「有限会社かの石材」では15年ほど前からお墓の掃除代行サービスを提供しているが、新型コロナウイルスの影響で都市部を中心に帰省を控える動きが生まれたことで、6月からオンラインのお墓参り代行サービスを始めた。
墓地内の掃き掃除や墓石の水洗いを行った後、お花、線香などを備えて、親族がオンライン上で手を合わせる。後日送付される完了報告書でお墓の様子が確認できる。
出典) かの石材
また福岡県を中心にタクシー・ハイヤー事業を手がける「第一交通産業」は、高齢や病気のために一人でお墓参りが困難な人に向けた『お墓参り同行サービス』を行っているが、7月からはタクシー運転手が墓参りを代行するサービスも提供している。タクシー運転手が依頼者に代わってお墓の掃除、お花や線香のお供えを行い、後日写真付きの報告書が送付される。
「宗教」という伝統的な空間でのオンライン化はこれまで敬遠されることが多かったが、新型コロナウイルスの影響により短期間で急速にオンライン化が進んだ印象だ。
寺院に留まらず、キリスト教の教会でもオンライン礼拝、オンラインミサ、神社でもオンライン参拝や祈祷、御朱印、おみくじが導入されつつある。
宗教のオンライン化が進むことで、感染リスクが抑えられるのはもちろん、より手軽に宗教の教えに触れられるというメリットが期待できるとも言える。
しかし、その反面インターネット接続する機器の操作に不慣れな高齢者が切り捨てられてしまう側面も否めない。使用するアプリによっては使用中にアカウントがハッキングされ、不適切な動画が表示される、などの事案も発生している。
さらに宗教儀式が簡略化されたことを機に、新型コロナウイルス後も宗教儀式の簡略化が当たり前となり、文化の衰退や寺院の経営状況の悪化に繋がりかねないという懸念の声もあり、今後の推移が気になるところだ。
アート
お盆が過ぎれば季節は秋。いつもならば、美術館で展覧会が多く開かれる「芸術の秋」の季節を迎えるが、今年はオンラインで芸術に触れてみてはどうだろうか。
実は芸術をオンラインで楽しむ、というコンセプトの美術館は新型コロナウイルスと関係なく、去年既にサービスを開始していた。それが、「オンライン美術館 | HASARD(アザー)」だ。
出典) HASARD
2019年4月に開設したこのオンライン美術館は、「誰でも・アートを・無料で」 楽しむことを目指し、美術館から使用許諾を得た作品などを無料で公開している。常設展示に、なんとモネやクリムト、特別展示にルノワール・ゴッホなど世界的画家から若手のアーティストまで幅広い作品を高画質で楽しむことができる。2020年4月10日現在で月間利用ユーザー 10000~14000とユーザーは順調に伸びている。驚いたことに、個人とボランティアで運営しており、大規模な事業化は検討していなかったという。現在、協賛金(100円~10000円/月)の募集だけは開始している。
既存の公営美術館などもオンラインの潮流に乗り始めた。
国立西洋美術館や東京国立博物館はそれぞれYoutubeチャンネルで展示品のオンラインツアー動画を配信しており、学芸員の解説とともに展示品を鑑賞することができる。身近にこうした施設が無くても、様々な芸術や歴史的な遺産の画像をオンラインで見ることができるようになったことは喜ばしい。
エンタテインメント:ミュージカル
一方、新型コロナウイルスで最も打撃を受けたエンタテインメントの一つがミュージカルだが、ここでもオンラインによる新たな試みが日本発で誕生した。「WeSongCycle」と題したこのプロジェクト、日本・韓国・オーストラリア・アメリカ・カナダ・イギリスの6カ国から集結した音楽クリエーターが楽曲を制作し、”Heroism(ヒロイズム)”をテーマに1つのミュージカル作品に仕立て上げた。
「劇場が閉鎖されるなかでもクリエーターが作品を制作できる機会を設けたい」という思いから、演出家の渋谷真紀子氏とプロデューサーの堂本麻夏氏が中心となって立ち上げた。
制作活動は全てオンライン上で行われ、完成した作品”Piece of Bravery” と、制作の過程を記録したドキュメンタリーはWeSongCycle公式Youtubeチャンネルで公開されている。
出典) P.A. Tokyo株式会社
WeSongCycleクリエイティブディレクター・演出を務める渋谷真紀子氏は、「今だからこそ実現した、"国際的な共作"の多彩な楽曲と、"Heroism"のテーマに対する多様な切り口が好評を博した。今後、"国際的なミュージカル創り"は、オンライン発で劇場に繋げていくことができるのではないかと期待している」と述べた。
意欲的な試みだが、やはり制作・運営資金がネックだ。このプロジェクトは今後も継続的に作品制作を行うことを目指して、クラウドファンディングで資金を募集している。ウィズ・コロナの時代、ミュージカルや舞台芸術の制作形態も今後大きく変わっていく可能性が出てきた。
オンライン旅行
大手旅行代理店のJTBはVR(バーチャル・リアリティ:仮想現実)を活用した「バーチャル修学旅行360」を開発し、8月31日から全国の学校を対象に申込を受け付ける。
今回開発された「京都・奈良編」は(1)360度VR映像体験、(2)オンライン交流、(3)伝統文化体験、(4)お土産販売、(5)その他オプションという5つのプログラムから構成されている。
出典) JTB
VR映像で通常では立ち入ることが出来ない場所からの映像を楽しめるほか、舞妓や旅館の女将、タクシー運転手など本来の修学旅行で会うであろう人との交流の機会を設けている。
IT技術を活用することで、教室にいながら少しでも修学旅行気分を味わってもらうのが狙いだ。また、この体験をきっかけにその土地への関心を高め、新型コロナウイルス収束後の旅行需要拡大も目指している。
出典) 写真AC
そしてとうとう、海外旅行もVRで楽しもう!というサービスが始まった。日本にいながらファーストクラスの空の旅が楽しめるのがVR海外旅行だ。パリ便やニューヨーク便など全部で9便のフライトから体験したい地域を選択する。
出典) FIRST AIRLINE公式Twitter(first_airlines)
「FIRST AIRLINES」が提供するこのサービス、実際のファーストクラスで使用される座席シートが設置されており、およそ2時間のフライト中にVR体験、機内食、現地の国の人々との中継動画を楽しむことができるという徹底ぶりだ。
その土地をイメージした香りや映像、音の演出が施されており、五感で海外旅行気分を体験できる。なんだか楽しそうだ。
新型コロナウイルスの影響で外出の機会は制限されたが、オンラインサービスが充実したことで様々なことを手軽に体験できるようにもなった。今後もあらゆる分野で様々なサービスが生まれるだろう。ウィズ・コロナの時代とは、常識にとらわれない柔軟なアイデアがより一層求められる時代だと言えそうだ。
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