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テクノロジーが拓く未来の暮らし

Vol.17 ウィズ・コロナ:続々登場!暮らしを助けるロボットたち

トップ画像) デリバリーロボ「Kiwibot
出典) Kiwi Campus

まとめ
  • コロナウイルスの流行によりあらゆる分野にロボットが進出。
  • 配達や検温、消毒等、様々な業務でロボットが活躍。
  • 滅菌用紫外線ランプでは日本勢も健闘。今後に期待。

新型コロナウイルスが全世界で流行し、感染者数は約1020万人に達した。(参照:WHO)各国の都市部では一時厳しいロックダウン(都市封鎖)が行われた。国によって差はあるが徐々に経済が再開しつつあるとはいうものの、未だに人と人との接触を極力避ける生活が求められている。

そうした中、ロボットの活用に注目が集まっている。私たちの日常生活のどのような場面でロボットが活躍するのか、調べてみた。

デリバリー(配達)ロボット

アメリカの新興企業Kiwi Campus社の開発した、デリバリーロボ「Kiwibot」は、「お客様の安全と満足を最優先」に掲げ、料理、食材、消毒液、洗面用品等、あらゆる生活必需品を配達する。kiwibotは、四角い箱に4つの車輪がついたロボット。正面の画面には目のアニメーションが表示されており、フレンドリーな雰囲気を醸し出している。

画像) kiwibot
画像)木質バイオマスによる地域活性化

出典) Ganbaruby

日本でも最近では、宅配便やレストランからの商品を直接配達員から受け取るのを避けるために、ドアの脇に配達する、いわゆる「置き配」が普及し始めている。

人と人の接触を避けるという意味において新型コロナ感染症対策になるロボットによるデリバリーだが、商品を配達する側には省人化というメリットがある。現時点で、ロボットのリース代は1日約20ドルと割安だ。それ以外に、注文当たり1~2ドルの手数料を徴収する。同社では向こう10年間で80%のデリバリーはロボットによって行われるようになるだろうと予測する。

日本でも、高齢者の多い地方の都市などで近い将来、ロボットによるデリバリーが普及する時が来るかもしれない。

体温感知ロボット

いまや、飲食店やホテルなどで検温は普通になっている。しかし、不特定多数の人間が出入りする場所では、ハンディタイプの非接触型体温計で一人一人検温すると、密集が生じてしまうことから、より効率よく検温できるシステムの導入が急務だった。

神奈川県にある株式会社IHIの子会社、株式会社IHI検査計測(IIC)は、サーモグラフィーを用いて、歩行者を止めることなく発熱者を通知できる装置「FeverCheck™」を開発した。

写真) FeverCheck™
写真) FeverCheck™

出典) 株式会社IHI検査計測

同システムは、AIにより人の顔を正確に特定、カメラに映った複数人の体表面温度を非接触で測定できる。異常体表面温度者が通過すると音で通知する仕組みだ。移設も簡単なため、イベント会場など活用範囲が広がりそうだ。

これまでは空港などでしか見かけなかったサーモグラフィーだが、今後は病院、官公庁、企業のオフィスエントランス、商業施設のみならず、教育機関などでも設置が当たり前になるかもしれない。

一方、マスクを着けたまま顔認証と体表面温度の測定が出来るシステムも開発された。ダンボネット・システムズ株式会社は、マスクを着けたままでもウォークスルーで同時に最大12人の検温が可能な「AI顔認証サーモグラフィーカメラ」の販売を開始した。マスクを着けることが日常となった今、この分野の技術開発はますます加速するだろう。

写真) 「AI顔認証サーモグラフィーカメラ DC77」の画面
写真) 「AI顔認証サーモグラフィーカメラ DC77」の画面

出典) DC77

防犯ロボット

テレワークが普及し、日中でもオフィスに人がほとんどいない、などという企業も出始め、防犯上の懸念が問題となっている。また、オフィスの消毒の必要性も高まっている。

株式会社ZMPはこの二つのニーズを満たすロボットを開発した。無人警備・消毒ロボット「PATORO™(パトロ)」がそれだ。

写真) 無人警備・消毒ロボ「PATORO™(パトロ)」 電動散布器搭載
写真) 無人警備・消毒ロボ「PATORO™(パトロ)」 電動散布器搭載

出典) 株式会社ZMP

「PATORO™(パトロ)」は無人警備ロボットとして、自動運転で施設屋内外の巡回警備を行う。夜間は赤外線カメラによる熱検知で不審者を捕捉する。

図) 赤外線カメラによる計測イメージ
図)赤外線カメラによる計測イメージ

出典) 株式会社ZMP

消毒液の散布は、様々な場所でニーズが高い。スーパーなど食品を販売する業種なら、床やショーケースなど。オフィスやマンションならエレベーターの階数ボタン。病院や駅なら手すり、といった具合だ。事前にマッピングを行い、無人で適切な場所に消毒液散を行うことが可能だという。もちろんセンサーで障害物などを避けて散布する。

こちらのロボットもニーズは高いと思われるが、普及させるには、初期費用(マップ作成・ルート設定・現地チューニング・実証実験など)が200万円~、運用費用月10万円/台~、という導入・ランニングコストの高さがネックだ。一層のコストダウンが課題となろう。

一方、空中からの消毒液散布も始まっている。中国の農業用ドローンメーカーXAGは、1台のドローンで1日60万~70万平方メートル(東京ドーム13~15個分)の面積が消毒可能だとしている。人間の手で同じ面積を消毒しようと思ったら約100人の作業員が必要になるだけでなく、人が消毒液を吸い込むリスクを無くすためにもドローンは有効だと同社は説明している。また高度な噴霧制御により消毒液の使用量が大幅に削減できるという。

XAGの消毒液散布ドローン
写真)XAGの消毒液散布ドローン

出典) XAG

医療支援ロボット

新型コロナウイルス感染拡大で懸念された医療崩壊。院内感染のリスクと医療スタッフの負担軽減を目指し、イスラエル工科大学らは医療支援ロボット「CoRobot」を開発した。

カメラを搭載したこのロボットは、リモートコントロールで病室まで薬や食事を運ぶことができる。既に一部の病院で試験運用されている。

写真) Corobot
写真)Corobot

出典) イスラエル工科大学

今後ロボットは更に進化し、通信システムにより、患者の脈拍や血中酸素濃度などの情報をリアルタイムに医療スタッフに送信出来るようになる予定だという。

一方、デンマークのUVD ROBOTS社は、紫外線で殺菌する自律走行型ロボットを開発した。DNA構造を分解することで、感染症、ウイルス、細菌、その他有害な有機微生物の拡散を防止および軽減するという。

写真) 病室内を紫外線で消毒するロボット
写真)病室内を紫外線で消毒するロボット

出典) UVD ROBOTS

日本勢は人体に無害の紫外線ランプを開発

一方、日本勢も負けてはいない。紫外線がウイルスや細菌の不活化に効果があることは知られており(注1)、これまでは波長254nm((ナノメートル:10億分の1メートル)の紫外線が主に使われていた。しかし、波長254nmの紫外線は人に皮膚や目には有害だった。ウシオ電機株式会社は、人体に無害でありながらウイルス不活化能力の変わらない波長222nmの殺菌用光源「Care222™」を開発した。同社では2020年9月からの販売開始を予定している。有人環境でも、空気と環境表面を継続的に除菌する事が可能になり、空港やあらゆる公共機関への設置が期待される。こうした紫外線ランプを組み込んだ自律型ロボットの開発も進むだろう。

インフラ企業の代表格、電力事業者の発電所の中央制御室のような心臓部に、こうしたウイルス不活化紫外線ランプを設置すれば、持続可能性はかなり高まろう。

写真) UVC照射設備で滅菌している空港のイメージ
写真)UVC照射設備で滅菌している空港のイメージ

出典) コロンビア大学放射線研究所

このように、あらゆる分野でのロボット化はもはや必然となっている。

ロボットの普及と共に、様々な規制緩和や、事故が起きたときの責任の所在、それをカバーする保険の整備などが必要になってくるだろう。ウィズ・コロナ、アフター・コロナの時代に求められるテクノロジーの開発競争はますます過熱しそうだ。

  1. 紫外線の菌・ウイルス不活性化のメカニズム
    紫外線UVCは菌やウイルスなど細胞が持つDNAやRNAに吸収される性質を持ちます。紫外線を吸収した細胞のDNA組織のらせん構造は破壊され、二量体(シクロブタンピリミジン)を形成し、生殖能力を失います。そして死滅します。これが紫外線による殺菌、ウイルスの不活化のメカニズムです。
    出典)ウシオ電機

    出典) ウシオ電機

安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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IoT、AI・・・あらゆるものがインターネットにつながっている社会の到来。そして人工知能が新たな産業革命を引き起こす。そしてその波はエネルギーの世界にも。劇的に変わる私たちの暮らしを様々な角度から分析する。