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出典) Wallpaper Flare
- まとめ
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- クールビズは今年度最後、夏は暑くなる予報。
- 今年の夏は、感染症対策と同時に熱中症対策も取らねばならない。
- 様々なマスクや家電製品が開発されている。ニーズに合った対策を。
今年の夏の天気予報
5月、早くも各地で夏日が観測された。6~8月の気温について気象庁は、平年並(注1)か、平年より高くなるだろうと予想している(気象庁地球環境・海洋部「夏の天候の見通し 6~8月」)。エネフロでは毎年熱中症対策について記事を公開しているが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、猛暑対策も例年と同じというわけにはいかないようだ。
気象庁が発表している平均気温のメッシュ平年値(注2)を見てみよう。6月、7月、8月の列島は真っ赤、つまり例年より気温がかなり高くなる予報なのだ。
今年は「クールビズ」最後の年
「クールビズ」といえば、小池百合子東京都知事を思い出す。小池氏が環境相だった2005年度に「クールビズ」と命名、「過度な冷房に頼らず様々な工夫をして夏を快適に過ごすライフスタイル」を提唱した。2015年パリ協定採択後には、地球温暖化対策の新しい運動「COOL CHOICE」を開始し、「クールビズ」も組み込んだ。開始から実に15年。今年度も実施期間を5月1日から9月30日までと定め、取り組みを促す。
出典) 環境省「クールビズ」
しかし、期間を定めての「クールビズ」は今年度が最後となりそうだ。環境省が今年3月、「各種月間等のバージョンアップについて」で、「個別の期間設定を行わず、自律的な取り組みを促進」するとの方針を打ち出したからだ。
小泉進次郎環境相は記者会見で、「一人一人自分で考えることは、やはり大事」と述べ、一律に期間を定めるのではなく、個々の建物の空調効率や年ごとの気温の実態に合った取り組みを行う工夫が必要との考えを示した。確かに実施期間は1つの目安として考え、気温に応じて対応する方が理にかなっているし、既に社会に「クールビズ」が定着した、ということなのだろう。
熱中症の危険
ここで改めて熱中症について復習しよう。人間の身体は、発汗や皮膚温度の上昇によって自動的に体温調節を行う。しかし、その機能が気温の上昇に追いつかなくなると、熱中症を引き起こす可能性が高まる。
出典) 環境省「熱中症予防情報サイト」
気温上昇と体温調節のバランスが崩れる要因には、次のことが挙げられる。
・環境の要因: 気温が高い、湿度が高い、風が弱いなど
・身体の要因: 暑さに対応しにくい体質、体調など
・行動の要因: 激しい運動、長時間屋外にいる、水分補給の不足など
出典) 環境省「熱中症予防情報サイト」より加工して作成
今年は例年以上に、熱中症への注意が必要だ。なぜなら、新型コロナウイルス感染症対策の必要から、従来とは異なる生活様式を強いられているからだ。
新型コロナ対策と熱中症
何といっても心配なのは夏のマスク着用だ。医療や福祉の専門家が組織する「教えて!『かくれ脱水』委員会」は、この夏のリスクを指摘している。
まずマスクの着用で、体内に熱がこもりやすくなったり、のどの渇きに気づきにくくなったりする。これらが熱中症を引き起こす要因となることが懸念されている。また学校によっては、マスクに加え、教員、生徒共にフェイスシールドを着用するところもあるようだ。しかし、専門家からは熱中症の危険がさらに高まるとの声も上がっている。特にエアコンがない教室などでは、こまめな水分補給が不可欠で、具合が悪くなったらすぐにマスクやフェイスシールドを外し休憩室に移動する、などの対応が必要だろう。
それ以外にも、この春の外出自粛で多くの人が、運動や発汗を十分に経験していない。そのため、身体が暑さに慣れておらず、筋肉量も減っている傾向にある。筋肉は身体に水分を貯めて脱水を防ぐ重要な役割を担っているので、こうしたことも熱中症を引き起こす要因となる。
また、自粛で人との接触機会が減っているので、熱中症のリスクや症状の発見が難しくなるという問題もある。特に一人暮らしの高齢者など、自分で気づくことが難しい人にとっては、重大な問題だ。
熱中症対策とコロナ対策の関係
「教えて!『かくれ脱水』委員会」は、熱中症が新型コロナウイルス感染症拡大に与える影響について指摘している。
・脱水症により免疫機能が低下。ウイルス感染のリスクを高める
・熱中症の症状と新型コロナウイルス感染症の軽度の症状はよく似ている
・熱中症患者が多数搬送されれば、医療崩壊の危機がますます高まる
つまり、熱中症を防ぐことができれば、次のことが可能になるわけだ。
・ウイルス感染のリスクを減らすこと
・症状から新型コロナウイルス感染を早期に疑うこと
・熱中症の誤認による不要なPCR検査を防ぐこと
・救急医療体制への負担を最小限にとどめる
熱中症対策は、私たちのウイルス感染リスクを減らすだけでなく、医療現場への負担を最小限に抑えることにもつながるわけだ。
夏用マスク&家電
こうした中、熱中症対策関連製品が続々開発されている。
まずは、夏用マスク。キーワードは、「接触冷感」と「速乾」だ。「接触冷感」とは文字通り、肌に触れるとヒンヤリと感じることで、化学繊維ではレーヨンやキュプラが接触冷感に優れたている。
「株式会社SUGATA」は「抗菌・消臭、夏でもずっと快適に使える和紙3D立体ニットマスク」を発売。吸水性・速乾性・抗菌性・消臭性などに優れた和紙糸を使用している。
その他、手持ちのマスクに貼り付けて使える冷感シートや、冷感スプレーなどもある。
シール印刷事業を手がける「丸天産業株式会社」は手持ちのマスクに貼って使える冷感シート「マスク冷感うるおいシート」を5月末からオンライン上で販売している。マスクの鼻元に水で濡らしたシートを貼ると、シートに含んだ水が熱を吸収し、口元を涼しく保つことが出来る仕組みだ。
また、ハーブを使用した商品を販売するレソンシエル ジャポンはマスクスプレーを各種展開している。そのなかでも冷感効果が期待できそうなのが「クリアノーズ」で、ユーカリを中心に天然ハッカ、ティーツリー、ペパーミント、ユーカリ、ラベンダーを配合している。マスクの外側に2,3回スプレーするだけで、香りだけでなく植物本来の消臭・静菌効果が期待できるという。
スポーツメーカー「スクアドラ」は、新型コロナウイルスの影響で全国の学校で部活動などのスポーツ活動が制限されたため、売り上げが減少した。そこで、新たに開発したのが「SPORTY TUBE(スポーティチューブ)」だ。チューブ形状のマスクで、運動時にはネックウォーマーやヘアバンド、それ以外の時は口と鼻を覆うマスクとして利用できる。UPF50+の素材を利用しており、ストレッチ性、速乾性にも優れているという。
出典) Squadra
また、電動ファン付きマスクも登場した。株式会社「果動株式会社」はウェアラブル電動ファン付きマスクを販売している。4層のフィルターと共にマイクロモーターが内蔵されており、自動送風による高い防護性能と自然な呼吸を確保している。
出典) bellelife
首元を冷やすデバイスも改めて注目を集めている。サンコー株式会社が開発したモバイルバッテリーで動作するウェアラブル型のクーラーは、本体を首にセットし電源を入れるとプレート部が冷えて首を冷やす仕組みだ。
出典) サンコー
首掛け扇風機も選択肢に入るだろう。株式会社ドウシシャのハンズフリーファンはこれからの暑い季節の外出時に活躍しそうだ。
出典) ドウシシャ
熱中症対策は、自分の命を守るだけでなく、コロナ渦中の医療体制を支えることにもなる。様々な商品が発売されているので、ニーズに合わせ、感染症と熱中症の両方に備える工夫が求められる。
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