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ためになるカモ!?

Vol.31 新型コロナウイルスで変わる社会

イメージ) home office
出典) Pexels

まとめ
  • 緊急事態宣言の発令が「巣ごもり消費」の拡大に拍車をかけている。
  • 食事や趣味など幅広い分野で新たな消費行動がみられる。
  • 家庭にいる時間が長くなることで「家族のあり方」にも変化が。

新型コロナウイルス感染症の拡大はとどまるところを知らず、4月7日、政府はついに緊急事態宣言を発令した。東京・大阪など7都府県が対象。5月6日までの1カ月間、外出自粛などへの協力が国民に呼び掛けられた。

4月13日12時現在、国内の感染者は7,255例に上っている(厚生労働省)。東京では3月25日、小池都知事が週末の不要不急の外出自粛を要請。近県もそれに続いた。商業施設の臨時休業や、休校期間の延長が、各地で相次いだ。私たちの生活は、変化を余儀なくされている。

グラフ) 新型コロナウイルス感染者数の推移(日ごと)
グラフ)新型コロナウイルス感染者数の推移(日ごと)

出典) 世界保健機関(WHO)

私たちの暮らしはどう変わるのだろうか?

「巣ごもり消費」の活性化

緊急事態宣言が出る前から多くの国民が外出を控え、人と濃厚接触する場を避ける行動をとっている。実感している皆さんも多い事と思うが、当然のことながら家にいる時間が長くなり、買い物回数の減少、ネット購買、外食から出前などへの移行が加速し、いわゆる「巣ごもり消費」の拡大が顕著となっている。

人と接触する外食を避け、家で食事をする、いわゆる「中食」、「内食」が増えている。「中食」の定義は、「家庭以外で調理された食品を持ち帰り、家で食べる」ということ。デパ地下やスーパー・コンビニのお総菜以外に、ピザの宅配、冷凍食品などもこれにあたる。

グラフ) 「スーパーマーケット販売統計(パネル270) 既存店前年同月比推移 2012年1月~」
グラフ)「スーパーマーケット販売統計(パネル270) 既存店前年同月比推移 2012年1月~」
表) 「商品分類」より抜粋
表)「商品分類」より抜粋

出典) 日本スーパーマーケット協会「スーパーマーケット販売統計調査資料」(3月23日公表)

これらお総菜の市場規模は年々増え、2018年には約10兆円を超しているが、今回の緊急事態宣言発令をきっかけに、さらに需要が高まっていくと考えられる。災害時と違い、ウイルスという目に見えない敵を相手にした消費の変化は長期化を強いられる。外出、外食自粛の中で、如何に中食、内食を楽しむのかが課題となってくる。その為、外でお金を使えないから、家では「(外食するわけじゃないんだから)普段よりちょっと贅沢してもいいよね」という心理が働く。

したがって企業側も「どのように食卓を彩るか」が今後のマーケティング戦略の重要な軸となってくるだろう。保存が効き、手軽に食べることができるレトルトや缶詰、冷凍食品などでも、プレミアム感がある商品の開発が必至だ。

飲み物系では自宅で少し贅沢したいという層に、コーヒーメーカー(ネスレ)やビールサーバー(キリン)などが好評だ。これにサブスク(サブスクリプション=会員制定額)サービスを組み合わせた新サービスも登場している。「Home Tap」と呼ばれるこのサービスは、月に2回、工場直送の生ビールが詰められたカートリッジが配送されてくる。自宅で生ビールが手軽に飲めるのが受けて、申し込んでもサーバーが到着するまで大分待つほどだ。

画像) 会員制生ビールサービス「KIRIN Home Tap」のビールサーバー
画像)会員制生ビールサービス「KIRIN Home Tap」のビールサーバー

出典) キリンビール

リモートワークで何が変わる?

さて、今まで遅々として進まなかった日本の「働き方改革」だが、今回初めてSkypeやzoomなどでオンライン会議を体験した人も多いだろう。実際やってみたら存外簡単だった、という声も聞く。そもそも「働き方改革」というと日本ではすぐ「時短」と結びつけることが多かったが、本来は労働時間を短縮しつつ、生産性を上げることが目的だ。

緊急事態宣言が出る前も自治体の首長から自粛要請は出ていたが、普通に従業員を出勤させている企業は結構多かったように思う。しかし、緊急事態宣言が出るにおよんで、さすがにリモートワークに切り替えたところが多いようだ。

いずれにしても、リモートワークを一過性のものにしないために、ICT環境を整えると同時に、従来の仕事の仕方をどう効率化するか考える契機としたい。

一方、自宅で過ごす時間をどう充実させるかにも、関心が高まっているようだ。Googleが蓄積している検索データをもとにした特定のキーワードの検索回数の推移を見える化した、Google Trendsで調べたところ、主に「健康」や「教育」に対する意識に変化が見られた。

例えば、YouTubeで「運動 不足 解消」が検索された数は、3月に入ってから大幅に上昇している。外出やフィットネス施設の利用を差し控えることで、運動不足を感じる人が増加したためだろう。Twitterでは、フィットネス用品を購入したとの投稿が多く見られ、中にはトレーニングベンチを買った人もいた。

写真) イメージ
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出典) Pxfuel

教育に関しては、「自宅学習」「オンライン学習」のウェブ検索数が特に3月1~7日の期間で上昇した。学校が休業し、代替的な学習の機会が求められるようになったためと考えられる。在宅時間の長いこの時期に新しい習い事を、と一念発起する人もいるようだ。

子供と触れ合う時間が増えた親も多いだろう。家族で学ぶオンライン学習講座もたくさんある。

写真) イメージ
写真)イメージ

出典) Microsoft

最近では、「バイリンガル(2言語操ること)では不十分、これからはトリリンガル(3言語操ること)の時代だ!」との掛け声が聞こえる。これからの時代、バイリンガル(英語プラス第2外国語)にもう一言語加えるなら、「プログラミング言語」だろう。そう、これを機会に子供たちがICT時代に生き抜く力を伸ばすことも可能だ。一緒に勉強すれば家族の一体感が高まること請け合い。「働き方改革」が「家族の在り方改革」に繋がったら、こんな素晴らしいことはないのでは。

安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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