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エネルギーと環境

Vol.12 「紙の向こうに森が見える」間伐を促進するエコな取り組み

間伐が行われた森林

写真) 間伐が行われた森林
提供) 上伊那森林組合

まとめ
  • 日本は国土面積の約7割を森林が占める世界有数の森林大国。
  • 中部「森の町内会」が企業や団体の環境貢献を引き出し、間伐促進。
  • 「間伐に寄与する紙」を通じて森を応援する仕組みを社会に定着させたい。

私達は森のことをどれだけ知っているだろうか?

日本は世界有数の森林大国。国土面積の実に約7割が森林で、2500万ヘクタールある。過去40年ほとんど増減はない。一方、森林の蓄積(木が生長した量を体積で表したもの)は人工林(人が山に木を植えるなどして育てた林)を中心に毎年およそ7000万㎥ずつ増えている。この人工林のうち、およそ4割が手入れが必要な状況にある。

図) 森林蓄積推移
図) 森林蓄積推移

出典) 林野庁

なぜ手入れが必要なのだろうか?森林には山くずれを防いだり、「緑のダム」として水をたくわえたりする働きがある。台風などで一度に大量の雨が急な斜面に降り続くと、土がえぐられ、雨水がいっせいに流れ出して土石流などが起きやすくなる。このため、森林の働きを十分に発揮させるために山の手入れが必要なのだ。そして人が出来る手入れの一つに「間伐(かんばつ)」がある。

間伐とは、成長過程で過密になった人工林を適当な密度にするために間引きする作業だ。森林に苗木を植えてから15~20年位経つと、成長に伴い木々同士の間隔が狭くなってしまう。それを放っておくと日光や栄養が十分に行き渡らなくなり、成長が阻害される。また、森林の中の下層植生がなくなり水土保全の役割を十分発揮できなくなってしまう。そこで、木々の一部を間引くことにより、枝葉を広げる空間を作り、健全に成長させることが必要になってくるのだ。

図) 間伐
図) 間伐

出典) 林野庁

しかし、私たちは普段の生活の中で森林の恩恵をどれだけ感じているだろうか。森林保全と企業の日常の業務を、持続可能な形で結びつける草の根的な活動を行っている団体がある。今回、そうした活動を行っている「環境NPOオフィス町内会」の丸山直美さんに話を聞いた。

中部「森の町内会」の仕組み

中部「森の町内会」は、企業や団体が環境貢献として「間伐に寄与する紙」を購入・使用し、間伐費用の不足分を補完するユニークな仕組みだ。2010年に環境NPOオフィス町内会と中部電力が共同で立ち上げた。

具体的に言うと、間伐をサポートする企業や団体が1㎏あたり15円の間伐促進費を付加した「間伐に寄与する紙」を購入し、印刷用紙に使うと、間伐促進費の全額が間伐と間伐材の有効利用に充てられる、というものだ。

図) 間伐サポーター企業・団体による支援
図) 間伐サポーター企業・団体による支援

© 環境NPO オフィス町内会

丸山さんに詳しく説明して頂こう。

丸山: これらが中部「森の町内会」の「間伐に寄与する紙」です。(下の写真)ご覧のようにロゴマークが入っています。普通、紙と言うのは㎏単位で販売されていますが、この紙は、㎏あたり15円の「間伐促進費」が上乗せされています。その15円がそっくりそのまま間伐に当てられるという仕組みになっているのです。

負担なく継続的にお使いいただける仕組みの方が良いと私たちは考えています。息の長い取り組みとして、定着してほしいですね。「間伐に寄与する紙」、森を応援する紙ですから、紙の向こうにある地域の森を思いながら大事に使っていただけたらと思っています。

写真) 中部地域の間伐サポーター企業・団体の印刷物
写真) 中部地域の間伐サポーター企業・団体の印刷物

© エネフロ編集部

写真) 森の町内会のロゴマーク
写真) 森の町内会のロゴマーク

© エネフロ編集部

中部「森の町内会」は、2010年の立ち上げから2019年の3月までに、93社・団体が参加し、これまで102ha(ヘクタール)、ナゴヤドーム約21個分の間伐を促進したという。

そして中部「森の町内会」が一緒にこの活動を行っているのが、「上伊那森林組合」だ。

丸山: 上伊那地域の82 %は森林に囲まれており、林業が主要な産業の1つです。若い林業家が大勢いる魅力的な森林組合と言うことで林業関係の方から、中部でパートナーということなら、ここがいい、というお話を頂きまして。 小さくても良い成功モデルを世に送り出して新しい森づくりの仕組みの1つになれれば、と言う気持ちで「上伊那森林組合」さんと一緒に活動することにしました。

写真) 丸山直美氏
写真)丸山直美氏

© エネフロ編集部

間伐に寄与する紙」が出来るまでを写真で見てみよう。間伐された木材はチップに加工され、製紙工場に運ばれて紙になり、その後印刷会社へ運ばれていく。

図) 中部「森の町内会」の間伐材が紙になるまで
図)中部「森の町内会」の間伐材が紙になるまで
図)中部「森の町内会」の間伐材が紙になるまで

© 環境NPO オフィス町内会

上伊那森林組合

上伊那森林組合の間伐の様子を写真で見てみよう。

まずは大型重機を使い、木を切り出す作業だ。間伐される前と後の写真を比べると、その間引き具合がよくお分かりいただけるだろう。

写真) 間伐作業
写真) 間伐作業

提供) 上伊那森林組合

写真) 間伐前の森林
写真) 間伐前の森林

提供) 上伊那森林組合

写真) 間伐後の森林
写真) 間伐後の森林

提供) 上伊那森林組合

普段私たちは紙を使う時、その原材料である木材や森林のことを意識することはない。その森林で木を伐っている林業の人がいることすら考えないだろう。紙を使っている人と林業で働く人、お互いの気持ちがつながればいいと、丸山さんは話す。

丸山: 「間伐に寄与する紙」を通して、多くの人たちに森林保全の大切さに関心を持ってもらいたいですし、林業を応援している人たちがいるんだよ、と言うことを現場で働く人たちに伝える存在でもありたいですね。地道な活動ですが、森を応援する仕組みとして社会に定着していくことが私たちの今の思いです。

安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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エネルギーと環境は切っても切れない関係。持続可能な環境を実現するために、私達は「どのようなエネルギー」を「どのように使っていくべき」なのか、多面的に考える。