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エネルギーと環境

Vol.11 対策急げ!プラスチックごみ問題

写真) 長崎県対馬市 海岸に漂着したゴミを回収する人々
出典) 長崎県

まとめ
  • プラスチックごみによる海洋汚染が地球規模で深刻化している。
  • 世界各国におけるプラスチックの生産、使用規制が加速している。
  • 国際社会から見た日本の取り組み、対策が問われている。

今、廃棄物の増加による環境汚染が地球規模で大きな問題になっているのをご存知だろうか。とりわけ、私たちの暮らしにはなくてはならないプラスチック製品のごみによる海洋汚染が深刻化している。環境省によると、2050年には、海洋中のプラスチック量が魚の量以上に増加すると言われている。

プラスチックは人工物のため、自然界で分解されることはない。廃棄後も海を漂い、それを誤って口にした海洋生態系のみならず、私たち人体への影響までも懸念される事態になっている。今回はプラスチックごみ問題の現状と各国の取り組み、国内における今後の課題について考えたい。

プラスチックごみ問題の現状

環境省によると、1950年以降、世界で生産されたプラスチックは83億トンを超え、そのうち63億トンがごみとして廃棄されている。回収されたプラスチックごみの79%が埋立、または海洋等へ投棄されており、リサイクルされたプラスチックはたった9%のみである。

プラスチックごみは年々増加傾向にあり、国連環境計画(UNEP)の報告書によると、年間3億トンも発生している。世界的に見ると、使い捨てプラスチック製品廃棄の最大の発生源は中国だ。人口1人当たりの廃棄量に注目すると、一番多い米国の次は日本である。この状況に危機感を覚えずにはいられない。

図) 各国の包装材料廃棄物の量 (茶色:総量 赤色:一人あたりのプラスチック廃棄物量)
図) 各国の包装材料廃棄物の量 (茶色:総量 赤色:一人あたりのプラスチック廃棄物量)

出典) UNEP(国際連合環境計画)

現状のペースでいくと、2050年までに世界で120億トン以上のプラスチックが埋立・自然投棄されることが予測されている。悲惨な海洋汚染の現状を象徴する、痛々しいニュースもよく目にするようになった。2018年11月、インドネシアで見つかった死んだクジラの胃の中からは、ポリ袋やカップなど1000点以上が出てきた。また、ウミガメの鼻に刺さったストローを抜くYoutube動画は、世界に衝撃を与えたのではないだろうか。

動画) Sea Turtle with Straw up its Nostril - "NO" TO PLASTIC STRAWS

出典) Sea Turtle Biologist

WWFジャパンによると、海洋ごみの影響により、魚類、ウミドリ、アザラシなどの海洋哺乳動物、ウミガメを含む少なくとも約700種もの生物が傷つけられ死に至っている。海洋生態系に対する影響は深刻だ。

人体への影響

また、最近は人体に影響を及ぼすとして、「マイクロプラスチック」の存在がクローズアップされてきた。「マイクロプラスチック」とは5mm以下のプラスチック材料の微小片や微粒子だ。プラスチック廃棄物が川から海洋へと流れて拡散し、その過程で細かく粉砕されて微小化する。

「マイクロプラスチック」は、毒性のある化学物質などを表面に吸着する傾向があり、海洋生物が誤飲すると、そうした化学物質が食物連鎖で濃縮され、それを食べる人間にも当然リスクが及ぶ。

写真) マイクロプラスチック
写真) マイクロプラスチック

出典) UNEP(国際連合環境計画)

「マイクロプラスチック」が海洋に出てしまってからでは回収は難しい。陸で食い止める対策として、「マイクロプラスチック」製品の使用を減らすことが重要だ。しかし、化粧品などに混合されているマイクロビーズが規制されているくらいで、対象製品が膨大の為、対策はまだ不十分だ。

世界の取り組み

このような環境汚染の現実を受け、世界ではプラスチックの生産・使用自体を削減する動きが加速しつつある。各国におけるプラスチック規制の動きを見てみよう。使い捨てプラスチックに対して法規制をした国は2015年辺りから増加傾向にあり、2017年には17ヶ国が新規に法規制をしている。

図) 使い捨てプラスチックの規制をした国の数
図) 使い捨てプラスチックの規制をした国の数

出典) UNEP(国際連合環境計画)

フランス政府は世界初、使い捨てのプラスチックを原則使用禁止する法律を制定した。2020年1月1日から施行される予定だ。欧州委員会は2018年1月 に、プラスチックごみによる海洋汚染を食い止めるための「プラスチック戦略」を発表。プラスチック分野での循環型経済への移行を推進する。「2030年までにEU市場におけるすべてのプラスチック容器包装をリサイクル可能なものとし、使い捨てプラスチック製品を段階的にゼロにすることを目指す」としている。各国でレジ袋の使用規制も進んでいる。下図によると、多くの国が国単位で有料化、課税、禁止令といった規制を進めている。

図) 各国におけるレジ袋規制
図) 各国におけるレジ袋規制

出典) 環境省 プラスチックを取り巻く国内外の状況

日本の現状

国内に目を向けてみよう。日本のプラスチックの生産・消費量は年約1000万トンにも及ぶ。今まで、日本を含む世界各国は、廃プラスチックの多くを“資源”として中国に輸出してきた。しかし、環境汚染の深刻化を受け、2017年7月、中国政府は「固体廃棄物輸入管理制度改革実施案」を公表。廃プラスチックを輸入してきた中国が、受け入れをストップした。これがいわゆる“中国ショック”だ。

写真) プラスチックごみ
写真) プラスチックごみ

出典) pxhere

下図によると、2017年9月以降、日本から中国への輸出量は大幅に減少。これまで輸出していた分が国内に留まり、国内で処理しなければならない量は増大する一方だ。日本は早急にプラスチックごみの国内循環体制を構築する必要がある。

図) 我が国のプラスチックくずの輸出量
図) 我が国のプラスチックくずの輸出量

出典) 環境省 プラスチックを取り巻く国内外の状況

環境省の取り組み

環境省ではプラスチック資源循環戦略小委員会による「プラスチック資源循環戦略」の検討を進めている。この中で、「2030年までに容器包装等の使い捨てプラスチックの排出量を累積25%抑制する」「2030年までにプラスチック製容器包装の6割をリユース又はリサイクルの実現目指す」など、レジ袋の有料化を義務付けることも盛り込んだ目標が示されている。

中央環境審議会によると、取り組みの基本原則 は「3R+ Renewable (持続可能な資源)」だ。3Rとは、発生抑(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle)のことで、循環型社会の形成を推進する。

国内の改革は進んでいるように見えるが世界的に比較するとどうだろうか。2018年6月、主要国首脳会議(G7)がカナダ・シャルルボアで開かれた。海洋汚染をどのように食い止めるか、具体策を各国に促す「海洋プラスチック憲章」がG7で議論になった。しかし、仏英独伊、カナダ、EUが署名した中、日本と米国は見送った。

署名しなかった理由について中川雅治環境大臣は「同憲章が目指す方向性を共有しつつも、生活用品を含め、あらゆるプラスチックを対象とした使用削減の実現にあたっては、市民生活や産業への影響を慎重に調査・検討する必要があることから、今回の参加を見送ることとした」と説明した。国境を越えて対策していかなければならない今、日本は世界に追いつく必要があるのではないか。

G7の後、国内では2018年6月に第4次循環型社会形成推進基本計画が閣議決定、プラスチック資源循環戦略が策定された。具体的な内容としては、使い捨て容器包装や環境負荷の低減に資するプラスチック使用の削減、プラスチック資源全般の徹底的かつ効果的・効率的な回収・再生利用(リサイクル)などだ。環境省は今後の方向性として、G20までに海洋プラスチック憲章の内容をカバーしつつ、第4次循環型社会形成推進基本計画に基づくプラスチック資源循環戦略を策定し、国際・国内双方の取り組みを加速していくとしている。

今年6月に大阪で開催されるG20で海洋プラスチックごみ問題が重要議題として取り上げられる。しかし、我が国のプラスチックごみを減らす取り組みはまだ道半ばだ。スーパーやコンビニでレジ袋は普通に使われているし、紙ストローなどの普及はまだ始まったばかりだ。議長国日本はG20でその覚悟を問われることになるだろう。

参考)
経済産業省 欧州プラスチック戦略について 2018年3⽉
環境省 プラスチックを取り巻く国内外の状況
環境省 プラスチック資源循環戦略の在り方について~プラスチック資源循環戦略(案)~(答申)
一般社団法人 プラスチック循環利用協会 プラスチック製品の 生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況
安倍宏行 Hiroyuki Abe
安倍 宏行  /  Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
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